神様のお仕事 2 (講談社ラノベ文庫)

【神様のお仕事 2】 幹/蜜桃まむ 講談社ラノベ文庫

Amazon

突然神になった真人は巫女の千鳥の力を借り、厄神だったウツロを福の神に変え、桜丘市は平穏な日々を送っていた。ある日、稲森天満の神である朱理が黒須神社に乗り込んできた。「どちらがこの街のマスコットキャラに相応しいか、勝負しろ!」と。単なるキャラ位置争奪戦を挑みに来たのかと思いきや、“ウツロに食べ物を与えると幸せになる”という噂への忠告が目的でもあった。新たな福の神は幸運と同時に、新たな禍も呼び寄せていたのだ。桜丘市の神たちが集まり、この難を回避しようとするが!?禍の影響を受け危険な状態に陥るウツロだが、それは彼女に術をかけた真人たちと街の危機でもあった!第2回講談社ラノベ文庫新人賞“大賞”受賞作第2弾。
それがどんなに良いことでも、理不尽を打破する誰にとっても痛快事であったとしても、それまであったシステムをねじ曲げて無理筋を通したということは、何処かに過負荷がかかり不具合、或いは反作用となって表に出てきてしまうのは、一つの必然である。厄神として滅ぼされるはずだったウツロを、真人は助け彼女を福神として生まれ変わらせた行為は、現人神という自由さ故に世の理に従わざるを得なかった神々には成し遂げられなかった快事ではあったんだけれど、それでも無茶を通した事は変わりないわけです。
真人はここで、自らが行った行為に対して責任を負う事になります。
彼が偉いのは、良い事をしたんだからそこから波及してくる問題になんで自分が責任を取らなきゃいけないんだ、なんていう無責任な態度を取らず、自分がウツロを助けた行為は間違いじゃなかったと胸を張りながら、しかしそのせいで起こってしまう災厄については、ちゃんと自分が責任をもって対処しますよ、という態度に終始していた事でしょう。責任の所在について、彼は最初から最後まで自分にあるのだと明確にし続けました。この辺り、何かにつけて責任の所在を曖昧にしがちな日本人としては埒外の堂々とした態度で、いやカッコ良かったですよ。
同時に、彼はきっちりと選択というか線引もしているんですよね。誰を助け、誰を助けないか。誰も彼も見境なく助けるのではなく、自分にとって助けるべき相手は誰なのか、何なのかをキチンと見定める。
彼は最終的にある相手を突き放すのですけれど、なぜウツロは助け、それは助けないのかを語るその論旨が非常に明快で、読んでいたこっちもそれまでは真人はどう決断するんだろう、決断するとしてその線引をどうやって引くのだろう、と不安めいた気持ちで見守っていたのですが、彼の説明はそのもやもやを一息で晴らしてくれました。
真人ってあっけらかんとした性格だけれど、決して物事に対して何から何までハッキリした性格、というわけじゃないんですよね。どちらかというと大らかで、細かいことは気にせずニコニコ笑って見守っているような印象があります。性格ブラックな千鳥に対しても、困ったやつだなあと思いながらもよっぽどヤバげな事をしなければあんまり干渉しませんし。
ただ、肝心なとき、或いは根本的な所でこの現人神さまは常に筋が明快なんですよね。そこは全くブレないし、譲らない。それは頑固さとも受け取れるんですけれど、明快であるがゆえに理解もしやすく、共感も得られやすいんでしょう。神様の在り方に伴うシステムそのものに対して喧嘩を売ることになった真人に対して、当の神様たちが対立したにも関わらず非常に好意的だったのもその為と思われます。
であるがゆえに、無理を押し通した為に発生した不具合、災厄についても決して真人を責め立てる事もなく、多くの神様が率先して真人に手を差し伸べてくれたわけです。
見ていて気持ちのよい主人公だったなあ。
翻って、彼を含めたこの作品に登場する神様たちって、本当にこう……思わず崇めたくなるような神様たちなんですよね。「人間」という存在に対する神様たちの「慈愛」の沁みること沁みること。それを特に実感したのが、稲荷天満の朱理さまで。普段のこの神様は見た目通り幼くてキャッキャと騒ぐ落ち着きのない子供らしい神様なんですが、ふとした時に真人に見せた神様としての彼女の姿は、人間という存在を温かく慈愛に満ちた目で親身になって見守っている大いなる存在、という雰囲気を醸し出していて、思わず吐息をついてしまったものでした。その神様的なあり様は決して彼女に限ったわけではなく、ウツロにも鋼牙にも他の神様たちにも随所に垣間見えるもので、この神様たちに見守られているこの作品の人間たちは幸せなんだろうなあ、とひしひしと思うのでした。真人が神様になったことで朱理の寄り子から離れてしまうことを寂しく思い、しかし巣立っていっても自分の寄り子だったお前のことはいつでも見守ってるし、助けるからね、という朱理がかけてくれた言葉にその寂しさが癒されるシーンは、こっちまで心温まりました。
そんな良い人、良い神様たちが揃っている中で、ひたすらブラックを貫く千鳥さんw
なんでこの巫女さん、ここまでアグレッシブにブラックなんだw 真人への恋心を信仰と履き違えていい具合に狂信的になっているのは、まあ仕方ないのですけれど。それでも、一巻と比べると真人の指導が行き届いたのか随分と落ち着いてきてはいるのでしょう。真人という歯止めがなかった頃のこの巫女さんときたら、相当に相当だったみたいですし。それに、真人の従属神という形になった福神ウツロに対する千鳥の態度を見ていると、真人だけが唯一絶対の神! みたいな所のあった頃と比べて心の余裕が出てきたように思います。単に、情が厚いだけなのかもしれないなあ、この娘は。一巻では真人のことしか考えてなかったこの娘が、ウツロに対して色々と親身になって接し、またウツロの事で本気でぶちきれた姿には何か色々と安心させられました。いやあ、単にブラックな性格じゃなくてよかったw
次巻でもう完結というのが勿体無いくらい、柔らかくもよく締まった良作です。大賞作は伊達じゃなかったなあ。

1巻感想