僕の学園生活はまだ始まったばかりだ! (ファミ通文庫)

【僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!】 岡本タクヤ/のん ファミ通文庫

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高橋、部活はじめるってよ

無駄に溢れる才能を持つ(勉強を除く)高橋。
彼は孤高を気取り、王道学園生活から目を逸らしてきた結果、ぼっちのまま二年生となってしまった。
そんな彼の下へ千載一遇のチャンスが訪れる。完璧な(性格を除く)美少女・佐藤が現れ、
自らを生徒会長にすべく、才能を活かして暗躍するよう高橋に要請したのだ。
そのために偽りの部活"高橋部"を得た彼は彼女をサポートしつつ、真の学園生活を取り戻す決心をする。
恋もない友情もないロストピース学園コメディ!
天才・高橋が征く!! 
いや待て、どの才能も決して無駄な代物じゃないぞ。野球サッカーなどのスポーツから、文化芸術、学術研究などあらゆる分野において天才性をきらめかせたその才能を無駄にしてしまったのは、明らかに高橋の壊滅的なコミュ障が原因じゃないか。才能に謝れw
ここまで万能にして無能な天才も珍しい。数々の失敗のせいか、偉そうにしている割には自分に自信が無く内心卑屈で卑小で根性なしだし。ヒロインの佐藤が超腹黒、というのも本来なら本作の特徴だったんだろうけれど、天才高橋のキャラクターが強烈すぎて、佐藤の腹黒さをもってしてもあんまり目立ってない、というか存在感が薄っすらしてしまってる。これは、佐藤が悪いんじゃなくて高橋がもうワンマンショーを繰り広げすぎなのが悪いんですけどね。
というわけで、佐藤さんが持ち込んでくる学園内のゴタゴタを、高橋がその天才的な才能をそれはなんか違うだろう、という活用をしながら、高橋本人も全然コントロール出来ないまま、こんなん出ましたけどー? みたいな形で解決していく物語である。……あれ? 何かしら解決したことあったっけ? 柔道部の一件はわりとスマートに解決したほうだと思うけれど、それ以外はだいたいグダグダに終わっている気もするぞ。当事者たちはまあみんな満足しているようなんでいいんだけれど。
残念性で言うならこの天才高橋があらゆる意味でぶっちぎりなのだけれど、キャラの濃さというか変人の巣窟という意味ではこの学園自体が全体的に色々とおかしい。おかしい!
普通の人が居ないよ!?
マンモス学園もの特有のドタバタとしたカオスでテーマパークみたいな賑やかな雰囲気が味わえるという意味では、非常によく出来ていると思う。これはキャラクターの描き方云々より、文章の語り口そのものが軽快で淀みなく、その上で素っ頓狂に跳ねまわってるんですよね。とにかく、読んでて楽しいんだよなあ。これは作者の筆の巧さでしょう。この人、新人賞の受賞作品以降ずっとノベライズばっかりやってたんだけれど、こうして見ると勿体無いなあと思わざるをえない。これはオリジナルで書かせてこその才能じゃないんですかね? あのデビュー作も目立ってなかったですけれど、あれで非常によく出来ていましたし。

しかし、この御花畑生徒会長は、ホントに酷いな。その名前が全てを現しているかのような、超絶的な善人にして無能の極み。ある意味高橋くんの真逆とも言える何も出来ない人なんだけれど、何も出来ないくせにその人の良さ故に何でも引き受けてしまう人なんですね。無能の働き者ほどたちが悪いものはない、とイイますけれど、その無能な働き者がトップであり、さらに変にカリスマ性があって人気者だった場合に発生する惨劇が、この学園の生徒自治の破綻寸前の現状であったわけですな。
御花畑会長も、自分がこの破滅の原因であることは重々承知していながら、現状を打破する能力も思案もなくオロオロと狼狽えるばかりで、結局そのお人好しさも抑えることが叶わず、相変わらず雪だるま式に負債を貯めこむ一方。本人に悪意がないというのが、またたちが悪いんですよね。さらには、高橋部に救いを求めたのも、ある意味生徒会役員では問題を解決しきれなくなったために、さらに頼る手を広げただけ、とも言えるわけで。
沈没しかかっている船を救うのは、浸水してきた水を掻き出す人員をかき集め、また優れた排水方法のも大事ですけれど、そもそも浸水箇所を塞がないことにはどうやったって船が沈むのを止められないのです。御花畑会長には、その発想が無能故になかった、と。その御花畑政権の表向きは高支持率の裏で破滅しつつ在る実情を前に立ち上がったのが、腹黒で悪人な佐藤さん。彼女が手段を選ばず実権を御花畑から奪うために手にとった反則武器こそ、天才高橋、という構図だったんですね。
まあかく言う佐藤さんも、結局相当アレな人だったので、後半あんな事件が起こってしまうのですが。って、高橋も佐藤さんのクズなところが好き、って性格が鬱屈しすぎて趣味まで歪んでしまったのか、こいつw
主人公・ヒロインともにかなりのろくでなしにも関わらず、お話自体はドタバタ楽しく読後が爽やかだったりするのは、なんだか詐欺にあった気分だなあ。でも、面白かったです。このまま続きも所望したい。

岡本タクヤ作品感想