断罪のレガリア ―ソロモンの継承者― (電撃文庫)

【断罪のレガリア ソロモンの継承者】 多宇部貞人/すーぱーぞんび 電撃文庫

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十年前に大災害を引き起こした儀式魔法『大召喚』によって悪魔が介入し、密かに異郷化が進む現代。そんな世界の人知及ばぬ怪異あるところに彼は現れる。大賢者の遺産である玉璽「ソロモンの指輪」を継承し、神刀・草薙を振るい、魔をもって魔を滅するソロモン72柱の魔技「外典七十二式」の使い手・シオン。この世の裏側に蔓延る悪魔たちと戦う特務機関「黒装退魔師団」に所属する彼は、邪眼公の力を持つ少女・古都城八慧と共にある怪異の調査に乗り出すことに。だが、それは異郷の権力者たる魔王たちとの戦いの始まりに過ぎなかった…。これは、魔の力で悪魔と戦う宿命を継いだ少年と黒き退魔師たちの物語である。
イラスト担当の人の名前がちょっとイカしすぎてないか?(笑 でも、私はこういうハッキリした絵柄は大好きです。キャラクターが多いだけに、それぞれ印象あるデザインだと感情も移入しやすいですしね。
という訳で、【シロクロネクロ】で電撃大賞を受賞した作者の、新シリーズ。大賞らしい卒の無さがそのまま面白味の薄さに繋がってしまっていた前作からこっち、一味濃さを求めたような設定群は正直好みの範疇です。というか、こういうのはいっそやりすぎてしまうくらいがちょうどいいんですよね。そこでやたらと気恥ずかしさを感じてしまうか、ちょっと格好良いじゃん、と思ってしまう境界線というのは出来上がってみないとわからない微妙なライン上にあるんだけれど、私は好きですよこれ、うん。「黒装退魔師団」という組織の構成からエージェントたちの活動など、いい具合に整っている。さすがに技名をいちいち叫ぶのはちと恥ずかしいが、魔神名にルビ降ってあるのはアリです。
堅苦しさというかぎこちなさというか畏まりがあった前作から比べると、文章も柔らかく自然になった気がしますしね。少なくとも作中に没頭できるという意味では前よりだいぶ読みやすくなったなあ。というのも、キャラクターの内面描写へのアプローチがちょっと変わってきた感があるんですよね。このあたりのバランス感覚は深くねっとりやるか、ピンポイントで穿つか、さらりと掬うようにやるかなど、作品の雰囲気やテンポとの兼ね合いもあるんだけれど、概ねテンポよくしかし軽過ぎない溜めがある、という感じでこれも整ってきてた。
まあ、このスルスルと淀みない感じは登場人物の大半が同じ場所で足踏みしない既に決断を完了した面々がメインに揃っているからなのだろう。と、同時に鬱積を引きずらず他者に当て擦らず、気持ちのよい性格なのもそうなんでしょう。例えば、復讐鬼として組織によらず個人で動いている敵にも味方にもなり得る、という立ち位置の架ヶ世くんなんか性格はほの暗い過去もあって陰気な方なんだけれど、義理堅く気遣いにも長けた冷静な性格で、共闘する展開になった時もそっけなくも親身な対応でこの立ち位置のキャラクターとしては非常に気持ちの良いキャラなんですよね。そして、ヒロインの八慧も天真爛漫で快闊な少女でやや感情過多なんだけれど、その感情豊かさが好ましく思えるタイプ。意外と主人公が素直クールなもんだから、八慧もへそを曲げずにまっすぐに喜怒哀楽を発してくれるのです。
個人的に、主人公とヒロインがお互いを一番大切な宝物として守りあっている関係、それも宝箱に仕舞いこんでしまおうとするのじゃなく、お互いの輝きを尊重して支えあおう、磨き合おうとする関係はすごく好みなので、このシオンと八慧の真っ直ぐぶつかり合う関係は大変美味しゅうございました。
いや、いいんじゃないの、これは。

多宇部貞人作品感想