落第騎士の英雄譚(キャバルリィ) (GA文庫)

【落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)】  海空りく/をん GA文庫

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魂を魔剣に変えて戦う現代の魔法使い《魔導騎士》。その学園に通う黒鉄一輝は魔法の才能がなく落ちこぼれた《落第騎士(ワーストワン)》だ。
だがある日、異国の皇女にして《A級騎士(ナンバーワン)》のステラから『敗者は一生服従』という決闘を一方的に挑まれ――勝ってしまう!
一輝は魔法の代わりに剣技を極めた異端の実力者だったのだ!
「なんでもいうことをきかせればいいじゃない! えっち! 」
悔しがりながらも一輝に惹かれ始めるステラ。そして騎士の頂点を争う戦いの中、かつての《落第騎士》は
《無冠の剣王(アナザーワン)》としてすべての騎士からも注目され始める!

最底辺から並み居る強敵をなぎ倒して駆け上がる学園ソードアクション開幕!!
開始早々、ヒロインの下僕やら使い魔やらにさせられてしまう主人公は多いけれど、逆に開始早々メインヒロインを、それもお姫様系の自尊心高そうな娘を下僕にしてしまう主人公は珍しい。いっそ、この黒鉄一輝が作者の最初のシリーズである【断罪のイクシード】の主人公みたいな「チンピラ」だったら尚の事面白かったんだろうけれど、さすがにそこまでアグレッシブな肉食主人公ではありませんでした、残念w
とは言え、【断罪のイクシード】で猛威を振るいながらも何故か前作のラブコメ【彼女の恋が放してくれない!】では消え失せていた「切れ味たっぷりのボケツッコミ」がこの新シリーズでは見事に復活していて、存分に笑わせていただきましたよ。そうそう、海空りくと言えば一周回ってかっこ良く思える中二病全開と、ちょっと面白すぎるだろう、というボケツッコミこそが売りだったわけで、それらが復活してくれたのは嬉しい限り。ほんと言うと、この人のボケツッコミはラブコメでこそ余計に映えるんだろうなあ、と思ってたんですが、前作では完全に不発だったからなあ、なんでだろう。でも、【断罪のイクシード】に比べてもだいぶラブコメ要素が増えてきそうなんで、正直楽しみです。というか、速攻でステラさん一択ですか、もしかして!?
いや、いやいやこの即戦っぷりには驚きましたけれど、昨今のいつまでもなあなあで引っ張る展開ばかりの中でこの二人のもったいぶらない自分の気持に対する率直さは、こうなってみるとアトどうするのかわからないだけに逆に面白いかも。料理次第だとは思うんだけれど、テンプレに頼らないという意味での貪欲さはちょっと期待しちゃうよ?
ちょっと病み気味の妹ちゃんも、彼女の考えとアニキを好きになったプロセスを聞いている分には、どうも本格的な恋愛じゃなくて、シスコンをかなり抉らせてしまった部類に見えるので、小姑としてはうるさいかもしれませんけれど、案外本格的に対抗ヒロインにはならないんじゃないかな、これ。
さて、主人公の一輝ですけれど、不遇ながらも実力は最強、というパターンなんですが、今回の敵の小物さは兎も角として、これまで周りの理不尽な抑圧に耐え続けてきた精神の強さを見せる一方で、当たり前なんだけれど酷い扱いを受け続けていたら心は傷いていて然るべきなんだ、というのを見せてくれたのは良かったですね。
誰も届かない高みに立っているのではなく、ふとした瞬間に弱さを露呈してしまう脆さを持った当たり前の傷つきやすい若者としての顔を見せてくれた事で、ステラにとっても離れた場所にいる人、というのではない、時としてどれだけ強くても自分が守ってあげられる人、という想いを手にできたんではないかと。声が届く、というのは大きいですよ。実感としても。そして、誰よりも孤独で在り続けた一輝にとっても、自分がすがり続けた生き方を全肯定して、理解してくれるステラの存在というのは思いの外大きかったはず。ラストの告白は、そんな二人の気持ちの合致を考えるなら、とても自然なことだと思えましたね。
……むう、なんか節度とか顧みない凄まじいイチャイチャカップルが誕生したのか、もしかして。二巻以降、場合によってはエライことになるやもw

あと、西京先生がちょっとこれ、キャラ良すぎでしょう。生徒会執行部の実にもったいぶったカッコつけた登場の仕方も見栄きりがイカしてて好きですけれど。お前ら、それは完全に噛ませとデレフラグだから。
【断罪のイクシード】を読む限り、この作者は脇サイドのキャラたちの扱い方がかなり好み、というかみんなそれぞれに映えさせるタイプなので、こうやってヒロインだけじゃなくキャラ増えるのは楽しみなことです。
結構、売れ行きも順調みたいなので、今度はガンガン行ってほしいなあ。

海空りく作品感想