ストライク・ザ・ブラッド (8) 愚者と暴君 (電撃文庫)

【ストライク・ザ・ブラッド 8.愚者と暴君】 三雲岳斗/マニャ子 電撃文庫

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中学生の暁古城が、入院中の妹を見舞うために訪れた病院で出会ったのは、アヴローラと呼ばれる吸血鬼の少女だった。彼女こそが衰弱する凪沙の命を救う鍵だと知らされて、囚われていたアヴローラの逃亡に手を貸す古城。そんな古城の前に現れた兵器商人ザハリアスは、完全な第四真祖を復活させるために、アヴローラを引き渡すように要求する。ザハリアスが仕掛けた“宴”によって絃神島が危機に陥る中、ついに覚醒する第四真祖。その思いがけない正体とは?古城は真祖の復活を阻止して、絃神島壊滅の危機を救えるのか―?世界最強の吸血鬼が、常夏の人工島で繰り広げる学園アクションファンタジー、待望の第八弾!
んあー、これは。あとがきによるとこの過去編、エピソードてんこ盛りで実質四巻分あったらしいのですが、確かにかなりざっくり削ってあるなあ。じっくり書くと番外編として別シリーズ出来たんじゃないか、と思うくらい重要かつボリュームのあるエピソードだったように思うのですが、かなりダイジェスト風味に。と言っても、読み終わってみるとそうだったな、と思うくらいでクライマックスまではそこまで削られた、という印象がなかったのはさすがベテラン作家、と言ったところでしょうか。
ああでも、過去編最後の敵とのラストバトルの展開を見ると、もっとアヴローラだけじゃなく9番目を含めた他の第四真祖たちのエピソードも積み重ねていた方がより効果的にあの怒涛の展開はインパクトあったはずなんですよね。あれ、結構大どんでん返しであると同時にグッとくる展開でしたし。
それに凪沙と彼女を慕ったあの子たちとの関係や、元伯爵令嬢がなぜああも転落していったか、浅葱が古城と一緒に過去の記憶を取り戻す措置を受けながら、何気に肝心の過去編で殆ど関わりなく終わってしまったり、とまあ結構これは削られたんだろうなあ、というエピソードは終わってみると色々と気づいてしまいました。特にヴェルさんについては、結構唐突感あったからなあ。この生活、わりと慣れ親しんでいたきらいがあったので元の領地の問題があったとはいえ、あそこまで急に切羽詰まるのはいきなりな感じでしたし。

それにしても、アブローラの可愛さは尋常ではなかった。この娘の喋り方って、いわゆる中二病風に単語が変換されたり過装飾されたりものなんだけれど、言葉選びのチョイスが上手いというか面白いんですよね。それを、古城もよく解読できるな、とも思うんだけれど即座に翻訳してくれるので、何言ってるかわからない、とはならないですし、尊大な喋り方なくせに当人オドオドと態度の方はプルプル震える小動物みたいなのでそのギャップがまた萌えるw
実は、こんな手のかかるけれど愛でたくなるようなタイプのヒロインって、このシリーズだと居なかったからなあ。正妻な雪菜を始めとして、浅葱にしてもみんな古城を尻に敷いたり手玉に取ったりするタイプだったからなあ。異様にチョロい人なんかもしましたけれど、あれはあれで態度自体は攻撃的ですし。こういう健気で可愛げのあるちっさなタイプの子はいなかったんですよね。古城、ロリコンなのにw
その意味でも、古城の中ではアヴローラは特別なままなんだろうなあ。

しかし、この過去編、これまで予想されていた第四真祖にまつわる情報をかなり大きくひっくり返す真相が待ち受けてましたね。前回までの流れから想像していた第四真祖の正体からするとかなり驚き。いや、凪沙の中に眠っていたものの動きを考えると、なるほどなあ、ということにもなるんですけれど。それから、なんで古城が第四真祖となりながらも、その眷属を上手く扱えなかったかも、これを読むとなるほどなあ、となる。いやこれ、場合によっては眷属の見方も大きく変わりますよ? 凪沙に宿った「妖姫の蒼氷(アルレシャ・グラキエス)」は元よりとして、今古城が使えてる眷属の並びを見ると、なんだかニヨニヨしてしまいますがなw
逆に言うと、これ以降の眷属はなかなか厄介、ということにもなるんですよね。これまでの眷属のように古城に対して好意的ではないだろうし。
ともあれ、だいぶアブローラと第四真祖にまつわる謎も明らかになって、スッキリしましたよ。根本的なところ、つまり第四真祖がなぜ必要とされたのか、という物語の根幹にまつわる部分はまだですけれど、いよいよここからが本番ってところか。

三雲岳斗作品感想