聖断罪ドロシー03  きみへとつづく長い道 (角川スニーカー文庫)

【聖断罪ドロシー 03.きみへとつづく長い道】 十文字青/すぶり 角川スニーカー文庫

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女魔法使いのエルチネに魔法の半永久触媒である篭手を奪われたカルアは、昔馴染みを頼り、鉄の心臓協会の助力を得る。大陸全土で商取引を行う情報力を生かしてエルチネに迫るが、実力の半分も出せないカルアは苦戦をしいられるのだった。さらには帝国軍の追っ手も現れ、状況は悪化していくばかり。そんな中、またしても魔王の血を暴走させてしまったドロシーは、そのショックからカルアとの別れを決断し―二人の旅はどうなる!?
超バッドエンドじゃないかぁーっ!!!
あとがきの感じからして、また最後の一文からして、多分これで終わりですよね。くはは、これはまた喰らったなあ。十文字さんのダークサイドエンドというと【いつも心に剣を】で行き着く所まで行き着いたと思ってたんですが、あれはある意味果ての果てに行き着くまで、たとえ絶望まみれだったとしても生き切った果ての結末だった。儘ならない最悪の現実をどれほど間違い溺れ這いずりながらも、行けるところまで行き着いた、その意味ではやりきった感のあるエンディングだったのだと今なら思える。だとすると、こちらは悲惨と言えばより悲惨であり、無惨といえばより無惨だ。何しろ、彼らは思い描いていた理想を何一つ叶えられなかった。理想を高く持ち、現実を甘く見て、終端に迫りつつある現在に対処しそこねた挙句に、もろかった足場を僅かな意志と覚悟のよろめきによって全壊させてしまった。そう、欠片も残さず踏み抜いてしまったのだ。
そこからはもう、目も覆わんばかりの転落の一途である。そして、カルアとドロシーに最初から救われる道などなかったのだという事実を、目を逸らしてきた事実を突きつけられ、とっくの昔に自分たちは絶望の淵に溺れていたのだと理解する。理解した時には、もう何一つ取り返しの付かないところまで落ちきっていて、カルアは自分に課していた箍という箍を片っ端から引剥がし、倫理も正気も臆病さも徹底的に踏みにじり、人の道を外れていく。
それを留めるべきドロシーは、周りの人たちに守られて、カルアに甘えきっていた綿飴のような夢から覚めて、そこにいるのは何の力もない、理想を叶える意志もない、強さもない、何も出来ない無惨な残骸。そんな骸にカルアを救うべくもなく、結局最後までドロシーは守られるがまま、何もカルアに返すことが出来ないままこぼれ落ちていってしまった。二人はついに、本心を交わすことも出来ないまま、自分の本当の気持ちに気づくことすら出来ないまま、ズタズタに切り裂かれていく。お互いを求める気持ちだけをヨスガにして、それ以外のすべてを取り落とし、そうしてお互いすらも喪っていく。見るも哀れな無惨な悲劇。
何も成し遂げられないまま、何処にもたどり着けないまま、大切なモノを喪って、魂すらもすり潰し、取り戻すためにあてどもなく彷徨い続ける連綿たる地獄の始まり。まあこれほどえげつないバッドエンドもなかろうて。ある意味、バッサリ全部断ち切ってしまった方が後腐れがない、と思うくらいの苦界悪堕ちエンド。二巻まではシビアながらも、心通じ合う人たちとの交流が続き、追っ手の子たちとも一定の理解が通じたわりと緩めの展開だっただけに、この転落の物語はなかなかに想像を絶するものだった。何気に、ここまで築き上げた物語を叩き潰せるのはすごいよなあ、と思うほかない。
完全に悪堕ちしてしまったカルアのお話も、怖いもの見たさで見たい気もするけれど、これで終わりなんだろうなあ。ずさずさ。

1巻 2巻感想