棺姫のチャイカVII (富士見ファンタジア文庫)

【棺姫のチャイカ 7】 榊一郎/なまにくATK 富士見ファンタジア文庫

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…チャイカとは、何か―?
航天要塞と運命を共にした蒼のチャイカは、自ら“も”また『本物』だと、驚くべき真実を白きチャイカに告げた…。何故、記憶が欠落しているのか?首筋の傷跡は何なのか?無数の謎を抱えたまま、トールたちは皇帝の遺体が眠る海を目指すことに。そこで、紅のチャイカと思わぬ再会をした彼らは、突如として正体不明の亜人兵と大海魔の強襲を受ける!!激闘の果て、流れ着いた先は絶海の孤島。一行は島内の牢獄で、金銀妖眼の少女と出会う。彼女はラーケ語で、こう言った。「待っていた―チャイカ…」
なんとーーっ!? 冒頭からのヴィヴィの変化には相当に驚かされた。チャイカという存在はもっと単純に人工的に作られた生命、くらいに思っていただけに。遠く離れた場所でそれぞれ勝手に活動していたのも、安置されていた場所も起動した時間も別々だったからと考えていたから違和感は特になかったんですよね。
いや、まさかこんな風に「発生」していたとは。
しかしこれ、発動条件は何なんだ? 同じ決められた日時に発現した訳ではないというのは、今回のヴィヴィの一件で明らかなんだが、親しい人が死んだ、みたいな精神的ショックが引き金だとすると、戦乱が終わって一応平和になったこの時代においては特に大きな精神的ショックを受けないまま平穏に過ごしているケースも決して珍しくないだろうから、そうなるとチャイカが発現する条件としては少々厳しいんですよね。それとも、チャイカは常に一定数稼働するようになっていて、誰か一人のチャイカが死亡すると別のチャイカが発生する、みたいな感じにでもなってるんだろうか。孤児に因子を植えつけた、みたいな話はしていたけれど、果たしてどれだけの人数にチャイカ因子が植え付けられているのか。謎が明らかになったことで新たに謎が増える。チャイカ個体に関するだけでもこれなのに、どうもガス皇帝が何を目論んでいたのか、についても随分と大仰な話になってきた感がある。7種存在する棄獣についても関連するようで、こりゃどうもヘタするとスクラップド・プリンセス並のワールドワイドな話になってくる可能性もありそうだなあ。
しかし、チャイカという存在がそうだったとするならば、我らがチャイカ・トラバントも本来の姿があったという事なんですよね。それも、ヴィヴィみたいな中途半端な覚醒ではない、と言うことはその時周りに居た親しい人たちを皆殺しにしているわけで、それを知ったらこの娘の性格からして相当にダメージも大きそうだけれど。
ともあれ、今回はチャイカの謎に迫ると同時にチャイカ強化の回でもあったわけで……あんまり気にしてなかったけれど、巨大なマテリアルライフル状の魔法杖を取り回すのって大変な上に近接戦ではどうしても普通にイメージする魔法使いなんかよりも動きが鈍くなることから、確かにまああんまり大きな活躍はなかったんですよねえ、チャイカって。まあ、ここぞというときの大技とか外さないし、魔法の使い方は的確で後方支援役としても優秀だったので、これまであまり気にならなかったんだけれど。
しかし、強化アイテムが、しかも人化能力付きのインテリジェンスオプションアイテムがこれ、というのは面白いなあ。普通はもっとわかりやすい剣とか盾とかなのに。そりゃ、チャイカの獲物が火器である以上、この強化アイテムは実に適当なんだけれど。チャイカ、アニメ化するわけだけれど、魔法機杖含めてこれらの演出はちょっと楽しみだ。まあ、話し的にはここまで全然いかないだろうけれど。
トールにある意味ベッタリだったチャイカに、さらにベッタリな娘が加わるというのは人間関係的にもなかなかおもしろいことになりそうだ。フレデリカが思ってた以上にデレてきたのも大きいし。この竜、明らかに自分で言ってるような感情のトレースの範疇を超えつつあるようだし。
今回は赤チャイカと共闘ということでもっと近い距離でのやり取りが増えるのかと思ったけれど、状況が過密かつ危機的だったせいか、あんまり一緒に行動して親交を深める、とまでは行かなかったのはちと残念。ただ、この調子だと次に遭遇しても即座に敵対、ということにはならなさそう。その分、向こうの死亡フラグが立ちまくってるわけですが。

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