神さまのいない日曜日VIII (富士見ファンタジア文庫)

【神さまのいない日曜日 8】 入江君人/茨乃 富士見ファンタジア文庫

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黒面の向こう側に現れた新世界。世界は救われ、封印都市は新たな街に生まれ変わろうとしていた。そしてアイも、新たな自分を見つけ始める。「アイ・アスティンは、始まりを見守るものでありたい…それがきっと『私』なんです」夢が果ててもなお、たくましく変わりゆくアイ。そんなアイを目の当たりにしたアリスは―。そんなとき、黒面からもう一人の少女が降り立つ。「私は世界を救うのよ」夢に生きる少年と少女の物語は、再び交わるのか―?
ちょうどアニメも始まったことで、振り返りという意味も込めて1,2巻あたりの感想を読み返してみると、そこで自分はアイのことを理想主義者ではなく徹底した超現実主義者だと唱えている。今更ながら、これは結構当たっていたと思うんですよね。彼女は現実主義者だったからこそ、自分の抱いていた夢が単なる目標であり、夢破れ、また自分の夢を裏切ったという挫折をあるがままに受け入れることが出来たのでしょう。今、アイは自分で不思議に思うほどに、夢を喪った今を平穏に健やかに過ごしている。
一方で、アリスはその点、理想主義者ではないけれど全くもって現実主義者でもない。彼の夢は、夢と言うよりももう存在理由そのものになっていたのです。それはもう、自動的に邁進するだけの存在とすら言えるほどに。ただ、そのままだとアリスは自分が破滅する他ないことを自覚するに至っていたし、自分と同類だと思っていたアイが思いの外健やかに夢を捨てられた事に希望を抱くに至っていたわけです。
ところが、そんな折に現れたのが、「万能の力」を有する魔女の娘。世界救う、というかつてアイが夢見た目標を、アリスと同じように存在理由として持つ少女ナイン。そう、彼女こそはアイが成し得なかったのと同じ夢を、叶えるためだけに生み出された存在であり、神に等しい力を持つ彼女は何の力も持たなかったアイと違って、世界のすべての理をも、神様が捨てて変わり果ててしまった死者が死なず生者が生まれない、という狂った理すらも覆す力を持って現れたわけです。
ところが、この魔女の娘は、世界を救うという存在理由に強迫的に背を押され走り回りながら、その実世界を救う方法を何一つ知りませんでした。そう、アイが世界を旅することで一つ一つ現実として知っていった世界を救う難しさを、世界を救うとはどういうことなのかを、世界を救うの「救う」とはどういう事なのか、何を意味するのか。救うべき「世界」とはそもそも何なのか。世界を救おうとしてここにアイがたどり着くまでに知ったものを、夢を捨てるに至るまでに得たものを、ナインは何も知らなかったのです。彼女にあるのは力だけでした。
だからこそ、ナインの進むべき道にあるのは破綻だけであり、しかし彼女には止まるわけには行かない理由となんでも出来る力があったのです。
結果として訪れたのが、救うはずの世界の破綻であり、それを止めるために止まらなくなったアリスでした。

まー、もうナンと言っていいのやら。ナインの存在はあまりにも今更であり、あまりにも早すぎたとも言えて、もはや神に近しい力を持っていても世界は救われないほどに、物事は単純じゃなくなってしまったんだなあ、という感慨が。まあ、最初からうまくいくはずがない、というのはわかりきっていて、だからもうナインが現れた時点でアリスやディーは動き出していたわけですけれど、ナインの駆け抜けっぷりは早かったなあ。なまじ力があったからこそ、アイが夢敗れるまでに至った過程を一瞬で駆け抜けたような気がします。ところが、アイがそこで立ち止まり、諦めたのと違って、ナインはそれでも止まれなかった。そうなると、世界を救うという夢を叶えるためにどうなってしまうのか。アイが辿れなかった、辿らずに済んだ道をナインは突き進んでしまいます。有り得ない未来として、これはアイとアリスが迎える結末だったのかもしれません。
とはいえ、ここに対峙したのはアイとアリスではなく、ナインとアリスであり、その両者の前に割って入るところに世界の行く末を見守ろうと決めたアイが居たわけです。
……あれ? アイ、世界救ったんじゃね?
いや、だからこそ、当初の予定としての世界を救う、という形とは大いに違っていたとはいえ、ある意味世界が救われたからこそ、ナインもアリスも止まれたんだろうけれど。
いやしかしこれ、せめて死者の方は置いておくとしても、子供が生まれなくなってしまった理の方は、元に戻してもらえばよかったのに。それさえ元に戻れば、、この世界少なくとも死者の世界になってしまう事は免れたはずなんだが……ナインも順番考えようぜw

そして、一手にラブコメパートを引き受けるスカーとユリーの新婚夫婦。今回はついに結婚式まであげてしまい、まーおめでとうおめでとう。……ラブラブでござるなあ。いったい、一巻二巻の頃から二人がこうなると誰が想像したものか。辿る軌跡の不思議なことです。
……って、ラストが衝撃的すぎて、あっけだよ、あぜんだよ。マジですか!? どうなるんだ、これ!?

シリーズ感想