ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った? (電撃文庫)

【ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?】 聴猫芝居/Hisasi 電撃文庫

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残念! ホントに残念な美少女でした!
……俺のリアルなライフが危ない!?

 ネトゲの女キャラに告白!→残念! ネカマでした☆ そんな黒歴史を秘めた少年・英騎が、今度はネトゲ内で女キャラに告白された。まさか黒歴史の再来!? と思いきや、相手であるアコ=玉置亜子は本物の美少女で、しかも、リアルとネトゲの区別が付いてない……だと……!? 
 英騎は彼女を「更正」させるため、ギルドの仲間たちと動き出すが――残念で楽しい日常≒ネトゲライフが始まる!
これねえ、基軸となる物語の設定がショボイというか安っぽいというか、出されたお題をそのまま消化しました、みたいな安易さが感じられて正直どうかと思う枠組みなんだけれど、これがまたなかなかに面白くなってしまっているあたり、この作者やっぱり上手いよなあ、と唸らされてしまった。このキャラ設定と環境設定だとそりゃもう薄っぺらい話になりそうだもんなあ。実際ね、そんなにキャラクターに魅力があるというわけでもないんですよ。メインのアコは見るも無惨なほど痛々しい地雷女ですし、隠れオタの茜と生徒会長の杏もそこまで尖ったキャラではありません。主人公の英騎もわりと自由自在で闊達なので無個性とは言わないけれど、そこまで特徴や自己主張の強い主人公ではありませんしね。
話のほうも、現実とゲームの区別がついていない、というよりも分別ができていないアコを何とか更生させようと英騎たちがドタバタ明るく頑張ります、みたいな内容で特にハッチャケているわけでもないですし。
ところが、読んでいるとなんだかスルスルと読めてしまいますし、これが妙に楽しいんですよ。部室でグダグダと益体もなくネットゲーをしている四人の様子を眺めているだけで、フワフワと愉快な気分になってくる。
これはもう、語り口のリズムが良いとしか言いようが無いんですよね。振り返ってみても、此処がいいんだよ、と強く押せる部分が殆ど見当たらないのになんとなく面白い、という作品はまあ珍しいです。徒手空拳の武器無しで自力勝負してる、ということなのかしらん。
まあでも、気になるところはやっぱりあって、特に英騎のゲームと現実の割り切り方の頑なさですね。オフ会以降、現実に同じ部活に入り、一緒にリアルで遊んでいるにも関わらず、アコとの関係をゲームの中でのみ成立している関係と規定したまま現実におけるアコと自分との関係を一切認めない、というのはあまりにも現実のほうを無視してしまっていて、いやどちらがゲームと現実の区別がついていないんだ、と思わず突っ込んでしまいましたがな。
ある意味このカップル、足して二で割れば調度良いくらいになるのかもしれないけれど。
ゲーム内での人間関係と現実世界での人間関係の対比、というテーマで推し進めるにはギルドのメンツが全員同じ学校の生徒でした、という点に加え、オフ会以降殆ど四人ともリアルサイドで顔付きあわして、ゲームするにも同じ部屋でワイワイ騒ぎながら遊んでいるものだから、明らかにリアルサイドに偏り過ぎてて、対比という意味では殆ど成り立ってないんですよね。その意味でも、英騎の頑なさは浮いてしまっていて、ちと残念でした。テーマとして掘り下げたら面白そうな題材ではあったんですが。
ともあれ、ほんとに何も考えずに読んでたらやたらと楽しかったんですよね。その意味では気楽に和めるよい作品なのかもしれません。個人的には、デビュー作の都市伝鬼の方を続けてくれたほうが嬉しくはあるのですけれど。

聴猫芝居作品感想