盟約のリヴァイアサンIII (MF文庫J)

【盟約のリヴァイアサン 3】 丈月城/仁村有志 MF文庫J

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激闘の末、ようやくパヴェル・ガラドをくだしたハル一行。平穏な学園生活をおくる彼らの前に、環太平洋エリアの特級魔女、ルナ・フランソワが現れる。“優雅で腹黒"というアーシャとはまるで正反対な彼女に、驚くハルだったが……突如、東京新都に雪風の姫が襲来する! 全ては《弓》の継承者であるハルの器をはかるために――「晴臣よ。ここを切り抜ける器量、おまえにあるかを試してやる! 」竜王と僭主、決して相容れない二つの宿星がぶつかり合う! 至高のドラゴン・エンタテイメント第3弾!
雪風ってもっと【カンピオーネ!】のアテナみたいなイメージで居たのだけれど、同じ女性型のドラゴンであり雪風のライバルであった迦具土が老練なせいか、雪風は血気に逸った小娘、って感じだったんですよね。勿論、竜王のふさわしい威風の持ち主でありその尊大さ、居丈高な態度に損なわれるものは何もないのですけれど、それでも女王や女神ではなく若々しいお転婆姫、なんですよね、雪風って。雪風さまをお転婆姫などと言ってしまうと噛み殺されそうですけれど、迦具土や主人公のハルが食わせ者、強かで狡猾、という直球勝負ではなく搦め手や切り札を切らない事で切り札となす、というタイプなだけに余計に雪風の直情さが目に付く、と同時に遥かに格上の相手にも関わらず可愛げを感じさせるんですよね。
まだ今のところ、一戦しただけで完全に獲物認定はされておらず、まだまだ雪風の姫がハルという人間を一人の男として認識し、食欲を感じるまでには至っていないので、ヒロインとしてはまだ舞台に立っていないのだけれど、ここからどう転ぶかは興味深いところ。当面の自分の遊び相手としては認識したようですし。
それよりも、むしろ気になるのは迦具土の方がハルの懐にようやく入ってきたことでしょうか。これまでは、敵対とは言わずともかなりハルも迦具土も相手に対してよそよそしい態度だったのだけれど、お互い歩み寄ることでアーシャとは違う意味での、密接な相棒としての関係を築きはじめたんですよね、この二人。むしろ、織姫の対抗枠は迦具土の方なのかもしれない。
かく言う織姫さんはというと、自分とハルとの距離感について悩んでいるようだけれど……この人、ほんと自分で思っているのと違って全然隙がないんですよね。M先輩に、普通にしていたらそれだけで圧勝、と評されるのも無理ないくらい女性としても性格的にも完璧だし、何よりこの娘、ハルの好みばっちりなんじゃないだろうか。
ここに来て、羽純が積極的にハルに関わってきていることを不安に思っているようだけれど、正直今の段階ではどうやったって織姫の優位は動かないですよ。でも、そんな自分の魅力がどれほど強いか、自分がハルにどんな風に見られているか気づかず、一方でもうハルの事が気になって仕方がない、というアンバランスな所が織姫という完璧少女の愛嬌にもなっていて、うん、この娘っていい意味でズブいのが魅力なんだよなあ。
で、逆にM先輩に問題外と切って捨てられてしまったアーシャさんw 一人、肩で風を切るようにして残念ロードをひた走る。もはや自爆じゃないのか、と思った色仕掛けが案外効果的だったのは笑ってしまったが。ある意味、勢いでそこまでやってしまえるというのはそれだけ追い詰められているのか、むしろ女子としての感覚がいささかズレているのか。そのどちらでもあるんだろうけれど、ハルって澄ましているようでわりと欲望に忠実な所があるので、結構色仕掛けのたぐいは有効なのかもしれない。
蛇使いとしても、プロの傭兵としても非常に優秀なのにねえ。女子力、という概念を何処に置き忘れてきたのか。

さて、肝心の《弓》の継承者となってしまったハルが置かれた状況だけれど、僭主同士の争いどころか、ついに雪姫という竜王にまで目をつけられ、もはやなあなあで逃げまわるには壁際まで追い詰められてしまったわけだけれど、ここでぐだぐだと悩まずサクッと肝を据えてしまうのがこの主人公の凄まじいところなんだよなあ。徹底した現実主義者(リアリスト)である彼は紳士足ろうとはしているものの、必要とあれば利己主義者足る事を厭わない。罪悪感を別の棚にしまえる人間なんですよね。勿論、リスクに見合うギブアンドテイクは基本として守る誠実さはあるけれど、なんというか彼にはヒーロー的な、ヒロインは守るもの、という意識が殆どない珍しいタイプの主人公なんだな、というのが今回の彼の言動からよくわかったんじゃないだろうか。ある意味、フェミニストでもあるんだよね、こういう態度って。これは、自立した女性にとってはむしろ対等の立場を取り、意志を尊重してくれるという意味でも好印象っぽい。そして、この作品に登場するヒロインは、一番大人しい羽純ですら、誰かに守ってもらうことを望むタイプの女の子じゃなく、積極的に自分の力で状況を打開する事を旨とするヒロインばっかりなので、その意味でもハルは異性としても友人としても、仕事のパートナーとしても彼女らの好みに見事に合致するんだろうなあ。
今のところ、アーシャのライバルであるルナ・フランソワは、登場した途端から大車輪の活躍だったにも関わらず、ヒロインとしてまだハルに殆ど関わっていないのだけれど、こういう出来る女からしてもハルは絶対好みだろうから、その手練手管に長けた妖怪みたいな狡猾さは、天然物の織姫の対抗馬になる器が十分にありそう。今のところ、デレてない社交辞令的な御愛想を向けているだけの【カンピオーネ!】のエリカ、みたいな感じなんだけれど、この手の女が恋愛方面に手段を選ばず本気になった場合のたちの悪さは、【カンピオーネ!】で十分味わっているので、今は動向がないにしても油断していいはずがありませんw これは、恐ろしい女だぞ。

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