ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり 外伝〈2〉黒神の大祭典編

【ゲート−自衛隊彼の地にて、斯く戦えり 外伝2 黒神の大祭典編】 柳内たくみ アルファポリス

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『門』封鎖から10カ月。特地アルヌスでは、富田二曹と元帝国騎士ボーゼスとの赤ん坊の誕生を祝うため、伝統祭事が行われることになった。ところが、亜神四柱の出席が決まると特地じゅうが大騒ぎ。式典は異例の大祭典へと発展していく。一方、これを好機と見た一人の新米亜神が、とある古の因縁に決着を付けるべく、アルヌスを目指していた―かつてないスケールの超エンタメファンタジー!異世界大祭典で、黒ゴス神官ロゥリィ大暴れ!
亜神ロゥリィ、愛の軌跡。死神と呼ばれる血まみれの戦神が、決して一時の感情からトチ狂って愛を司る神さまになる! と思い立ったわけではなく、ちゃんと彼女にはその亜神となった当初から愛という感情を探訪するきっかけがあり、愛という不可思議にして尊い想いを司る神になりたい、と思い至る軌跡があったのだ、というロゥリィの過去と現在を織り交ぜて綴られるゲート外伝第二弾。
てっきり、「黒神の大祭典」なんてサブタイトルがついているから、暗黒神の邪悪な祭典が行われて、ロゥリィと伊丹たちがそれをどうにか阻止するお話かと思ったら、むしろ逆で彼らが主体となってお祭りしようぜ、と各地を巻き込んで大騒ぎするドタバタ活劇でした。
門が閉ざされて現代日本から孤立したアルヌス駐留部隊。十ヶ月も経つとそれなりに慣れてくると不便さも相まって同時に里心もついてくる頃合いでしたが、補給もない中で随分工夫を重ねて頑張ってるんだなあ。でも、情報も途絶してしまった状況では、精神的にめげてくる事は否めず、このタイミングでボーゼスと富田の結婚式をやって盛り上げちゃおう、さらに基地祭みたいにして楽しもう、という試みはある意味必要不可欠だったんじゃないかなあ、と。実のところ、伊丹があんまり積極的ではなく、受け身に終始していたのを特に違和感も感じていなかったんだけれど、海自の江田島さんが上手いこと分析した上で尻を蹴っ飛ばしてくれたのはちと痛快でした。この男、何だかんだと自分本位であって公共の奉仕活動、にはとんと興味も関心もないんですよね。ただ、身内には甘いというか、懐に入られるとちゃんとしてあげないと気が休まらない小心者、という風情なんでしょうか。ぽっと出の江田島がそのあたりキチンを把握した上で、上手いこと伊丹みたいなのを操縦してみせたのはなかなか大した逸材だと感心せざるを得ない。伊丹の操縦法については、周りの女性陣も四苦八苦しているだけに、侮れない人物である。
さて、今回は殆どロゥリィが主人公、という形で話が進んでいきます。なにせ、途中ロゥリィが亜神になった当初の頃、まだ神官見習いとして同期の娘たちとワイワイやってた頃のお話ですからねえ。ロゥリィも初々しいというか、昔は見た目道理にロリっ子な雰囲気だったんだなあ、と。親友同士の中でもちょっと抜けたところのある天然のちびっ子、という扱いみたいでしたし。そう考えると、きちんと色気づいてるんだなあ、ロゥリィも。
ただ、起源とも言うべき時期にこんなふうに友達と命がけで友情を確かめ合った経験があった、というのはロゥリィの亜神としての歩みにおいても重要なものがあったんだろう。自分でも語ってますけれど、亜神という身の上にも関わらず伊丹の周りでテュカやレレイたちと仲良くやってけてるのは、小娘としての経験や思い出を大事にしているからなんだろうなあ。この娘、年齢の割にほんとピチピチしているもの、精神が。ただ、先日伊丹といい雰囲気になってしまったピニャ皇女への、伊丹に近づけさせまいとするディフェンスまで小娘めいた初々しさがあるのはご愛嬌ですけれど。さりげにディフェンス、かなり固いですがw
ボーゼスと富田、紆余曲折あって結ばれることになった二人ですけれど、元々戦争やらかした敵国同士であり、異世界人であり、さらには大貴族の娘と下士官という身分の違いもあり、という壁やら障害やらが盛り沢山、という困難の中で、こうしてまがりなりにも皆に認められる形で結婚が叶ったのは素直に良かったなあ、と。有耶無耶のまま、駆け落ち同然で夫婦になってしまうのもアリでしたけれど、こうやってちゃんと両親にも認められ、国にも重要な位置づけとされ、ちゃんと祝福されて、という形で収まるに越したことはないですから。正直、ロゥリィたちの手管があったとはいえ、力任せなところがありましたから、貴族の反発や父親の反対などもやもやが残ってしまうのは仕方がないかなあ、と思っていたのですが、最後のしっちゃかめっちゃかなイベントは空気抜きとしては最高で、ああもスッキリした形で収集がつくとは思いませんでしたが、物事が上手いこと転がったもんです。勿論、色んな人の尽力や心遣いがあった結果であり、色々と腹黒い人たちの計算もあったわけですけれど、結果良ければ全て良し、と。
あとは、ロゥリィの気持ちに伊丹も何らかの形で答えてほしいところですね。
さて、ラストで思わぬところから、心の傷を克服したテュカに再び衝撃の事実が見舞ったわけですけれど……これは素直に望外の事実と捉えることもできるけれど、謀略の匂いもしないでもない。なかなか、厄介なことになってきたぞ?

シリーズ感想