ガリレオの魔法陣 (集英社スーパーダッシュ文庫)

【ガリレオの魔法陣】 青木潤太朗/tetsu スーパーダッシュ文庫

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科学(ホログラム)が魔法(サークル)を技術(プログラム)にした
Circle Hologram(サークル・ホログラム)--それは多層レイヤー構造で描かれたDTP魔法陣と立体映像技術の進歩により生まれた最先端のテクノロジー。
光の模様によって空間エネルギーを絡めとり、あらゆる現象を引き起こす、この科学の魔法陣は、世界に未知の可能性と新たな火種を生んだ。
遺産魔法陣(エンシェント・サークル)--遺跡や文献から発見される太古の魔法陣。いまだ現代魔法陣の百年先を行くといわれる、それらの争奪戦が始まったのだ。

過去と魔法が、未来と科学と、歪(いびつ)に連なった世界で、ペンタブで魔法陣を描く“ホログラマー”レイル)・レッド・ヘミングウェイが、彼の魔法陣を身にまとい戦う“サーキュリスト”の映像人間シャオの冒険が始まる!
こういう魔法を科学する設定は古くからあるのだけれど、これはまた懐かしい感じに駆られる作品である。十年十五年と遡ると、こんな突端を走ったような世界観がチラホラとあったんだわ。とはいえ、本作はその焼き直しというわけじゃなく、決して古臭くはない新鮮さがあって個人的にはすごく好みな雰囲気であり感触なのである。
また敢えて学園モノにせず、世界を股に掛けて飛び回るエージェントとしてレイルとシャオを描いたことで、グッと世界観が広がっている。紛争地帯や異国情緒あふれる欧州の小国、なんてところを舞台にすることで、逆に現代において世界では魔法が科学として根付いている、という「現実」が実感できるんですよね。そんな世界を、相棒と二人、寄る辺を持たず自分たちの腕前一つを頼りにして、仕事で任務で飛び回る。学園という小さな世界の中で繰り広げられる物語もいいんですけれど、やっぱりこういう主人公たちの役回りは読んでいてもワクワクしてしまいます。
しかし、科学の発達によって廃れつつあった魔法が最新の技術として蘇った、という流れは珍しいものではないのだけれど、大概こう一般人には遠く理解の及ばない科学理論の形勢によって魔法に到達した、みたいな形が多い中で、本作はわりと平易な理屈によって魔法が現代に蘇っているので、ストンと魔法が現実世界に馴染んでるんですよね。さすがに遺産魔法陣などに関わる特殊な魔法は一部の専門家が独占しているとはいえ、多くの魔法が一般化、というよりも一般的な産業化している、といったほうがいいか、現代文明に馴染んだ形での技術として広まっているのである。つまるところ魔法として蘇ったというよりも、新たな科学として蘇った、と言ったほうが正確なのか。このあたりは、魔法文明への回帰ではなく徹底して現代科学文明の延長として描かれているあたりが興味深い。
ただ、それは古来から伝わる遺産魔法陣を文明の遺産、民族の財産として捉える人々にとっては文化の搾取であり冒涜なんですね。そうして、魔法陣を新しい力として運用できる国力を持った先進国と、それが出来ずにいる後進国との対立につながり、新たな紛争が各地で勃発しつつ在る。一つの低烈度紛争の引き金であり原因となりつつある技術であるわけだ。これが発掘などによって得られるとなると、エネルギー資源問題とも言えるわけで、そこには国家や企業が根深く関わることになる。
主人公たちは、まあこういうややこしい社会問題、国際問題にも携わるエージェント、というわけだ。まあ当人たちは現場に派遣されて、ゴリゴリと力押しする担当で、政治に関わっているわけじゃあないんですけどね。
とは言え、話の根っことなる基盤の部分には、こうした下地がしっかりと描かれているので、踊る当人たちにその意識がなくても、読んでいるこっちからすると舞台はきちんと整えられているように見えるのですな。

わりと文章としては酷いです(苦笑
言いたいこと書きたいことをきちんと纏めきれずに伝わりにくい形でしか表現できていない、という点ではネイティブから程遠い外国人の片言の喋り、みたいな感じの新人特有、というべきか、最近は流暢で新人離れした文章を書く人が多い中で初々しいくらいにガッコンガッコンとイビツな文章なのですが、それ以上に作品そのものが魅力的でした。
あの敵のサイコな部分も特殊な趣味で、ドン引きながら目が離せないイイ悪役っぷりでしたなあ。いやこう、生々しい痛さが伝わってくるというか。ただ体を損壊させるんじゃなくて、お腹をグリグリするのって地味ながら如実に痛々しさが伝わってくるというか、エグいw
そして、魔法が科学技術となった世界の中で、一人魔法文明の残光として生きているシャオ姉。彼女の存在が、また魔法をただの技術に堕さしめないで、古の偉大にして残酷な人知の及ばぬ領域を感じさせて、また作品の雰囲気をグッと引き締めてるんですね。ただ、彼女のキャラってヒロインというよりはほぼ親役であって、メインヒロインはエルヴァなんだよなあ。シャオ姉的には、どうやら本命は主人公の爺さんだった感じだし。
せこせこと、孫とエルヴァを縁結びさせようと世話を焼くシャオ姉は、完全に母親かおばあちゃんでんがなw
レイルは見た感じ凡庸とした有り様でエルヴァは最初全然その気なかったのに、何だかんだとノセられて、挙句にほんまのヒロインみたいに颯爽と助けられてしまい、ガタガタガタっと陥落していくさまはなかなか愉快でしたよっと。まああそこまでお膳立てされて、逆に梨のつぶて扱いされてうぎゃ〜〜ーとなってるあたりは実に可愛かったですけれど。そこは反骨して欲しいものですw