夜姫と亡国の六姫士I (ファミ通文庫)

【夜姫と亡国の六姫士 1】 舞阪洸/こ~ちゃ ファミ通文庫

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目指すは王国復興。戦いと裏切りのハイ・ファンタジー、堂々開幕。

エルゲン王国の第二王女にて美しく勇猛果敢な戦女神、バイオレッタ。
彼女の傍にはいつも、一騎当千の兵である六姫士が控えていた。
彼女たちの大願、それは――奪われた祖国の領地を取り戻し、王家を復興させること。
強力な後ろ盾もない中、バイオレッタの類まれな指導能力によって奮戦を続けるエルゲン王国復興軍。
しかし敵国の第二公女、リーザが大軍を率いて進発したその時、主力同士が激突する一大決戦はじまった――!
修羅の道を突き進む者の、愛と戦いと信頼と裏切りと。
その先に待つのは、豊かな沃野か茫漠たる荒野か……。
舞阪洸が描くハイ・ファンタジー、満を持して登場!
……ぬええ!? いやあ、これは正直驚いた。本気で吃驚した。さすがに、この展開はなかなかないんじゃないかしら。

以下、ネタバレありなので収納。










主人公の退場自体は稀にあるかもしれないけれど、さすがに第一巻から表紙にまでなったキャラがラストで死亡退場とか、記憶にない。これは思い切った構成にしてきたなあ。
何より凄いのは、物語の構成としてもほとんど、この急展開に対する備えをせずに事を起こしたことでしょう。あの影武者を用いる作戦は、ある意味伏線とも言えるんですけれど、実際に作戦で影武者を務めた剣姫士では味方も謀るほどの完璧な影武者を務めるのは無理であることが、作戦中に明らかになっています。さらには、冒頭では夜姫の演説を剣姫士のアイオリスは外から聞いているわけですしね。
普通なら、作中に姫様の影武者を務めることになる人物を用意しておくはずなんですが、そうした物語を滞りなく進めるための準備的な伏線が、作中で一切うかがえないのである。お蔭で、姫を不慮の事故で喪ってしまった姫士たちが今後どうするのか、そして夜姫と呼ばれバイオレッタの身代わりを務めることになる人物がまるで浮かんでこないのだ。これほど、先がまるで予想できない構成奇襲はなかなかお目にかかれないですよ。
こうなってくると、そもそもこの作品における真の主人公はいまだ登場していないんじゃないか、とすら疑いたくなる。本当に、夜姫になるであろう人物がこの第一巻では見当たらないのだ。そもそも、一人で復興軍の作戦戦略を担っていたバイオレッタ姫。彼女の軍才は他を寄せ付けず、6人いる姫士たちはそれぞれに豊かな才能を持つものの、とてもじゃないけれどバイオレッタ姫の能力には及ばない。誰も姫の代わりは務まらないんですよね。唯一可能性があるのが、侍女のティターニアだけれど常に姫の側に侍っていた彼女でも、バイオレッタに比肩するだけの才覚を閃かせるようなシーンはありませんでしたし。
となると、まだ本当の主人公は登場していないんじゃないか、なんて考えも浮かんでしまうというものです。
ぶっちゃけ、あのバイオレッタ姫ってちょっと肉食系すぎて、主人公というよりもむしろ舞阪作品の中でも主人公サイドのライバル的な存在になりそうなキャラだったんですよね。キャラ的にちょっと微妙なところがあったので、最初から退場を予定されていたと知ってしまうと、なるほどなあ、と妙に納得してしまったり。
そもそも、本作が【白兎騎士団】のあとのシリーズということで、男性の介在しない女性たちばっかりが主軸となる戦記ファンタジーになる、というのも固定観念なのかもしれません。こういう展開だと、影武者って本物と同じ性別とは限らない、というかだいたい逆になったりするもんなあ。
ともあれ、これだけでっかい爆弾を置き土産にされてしまうと、次の展開が気になってとてもじゃないけれど見過ごせません。掴みとしては凶悪なくらいに効果最大級でした。うむむ、参った。

舞阪洸作品感想