俺のかーちゃんが17歳になった (電撃文庫)

【俺のかーちゃんが17歳になった】 弘前龍/パセリ 電撃文庫

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澤村隆史、高校2年生。ある日学校から帰宅するとそこには見知らぬ女子高生の姿が!「隆史、おかえりー」って、まさか俺のかーちゃん!?いったい何があったのかと訝しむ隆史に、引きこもりの妹・優香が、どうやら巷で噂の「17歳教」が関わっていると教えてくる。この組織に入ると「永遠の17歳」になれるらしいのだが…。真相を突き止めるためにかーちゃんを尾行することにした隆史と優香。そして二人は17歳になったかーちゃんの真の姿を目撃する!かーちゃんを取り巻く「17歳教」とは…!17歳の母親による、ハートフルホームコメディ!第19回電撃小説大賞、最終選考作登場!
さすがに実のお母ちゃんとイチャコラするのはハードル高いよなあ、と思いつつ、それでも破壊力抜群のが来たら屈する気満々だったわけですが……あかん、全然そういうのと違ったっ! 邪な、この邪な気持ちにごめんなさい。
てか、重い。これってかなり重たいですよ。何気に設定がヘヴィすぎる。簡単に十七歳になれるのかと思ったら、ちゃんと代償があって、実に寿命の半分を捧げないといけない事になっているのだ。一年や二年どころじゃない、寿命の半分である。お母ちゃんに至っては、およそもう20年近くしか生きられない、て事だ。これはキツい、子供にとってはキツすぎますよ。
お母ちゃん自身には悲壮感はまるでなく、17歳に若返って意気軒昂。元気モリモリ頑張ります、と張り切っているのだけれど、その原動力、そして17歳に若返ろうとした理由を思うと、子供の立場からするともうやるせないったらありゃしない。これは、自分の母親がもう老境に差し掛かろうとしている時節だからこそ、余計にショックなのかなあ。まだ十代の若者の頃にはなかなか想像できなかったんだけれど、三十超えてくると色々と先が見えてくるんですよね。だからか、こういう設定はダイレクトにズシッと重みを感じてしまって、かなりキツい。まあ視点の位置が違うんだろうなあ。この子供たちは、大きすぎる母親からの家族愛に対して、まだ十代の独り立ちしていない子供として、これからの人生を親の愛情に報いることを担保にして受け止められるわけですけれど……三十路すぎてるとねえ。いや、今はまだいいとしても、この子たちだって十年すぎて十五年経ってその時期が来てご覧なさい。辛いなんてもんじゃないですよ。どれだけ苦しむことになるか。
そうした未来を繰り上げて持ってきたのが、ある意味婆ちゃんの話なんだよなあ……あのね、70歳なんていまどき全然年寄りでもなんでもないんですよ? あと十年二十年は余裕っすよ? いくらでも元気で過ごせるのに……。
なんちゅうかなあ、当人たちはアッケラカンとしているし、子どもたちは自分たちを育て、生活のために自分を費やそうとしているお母ちゃんや婆ちゃんに対して報いようという孝心を溢れ返していて、主人公の恋人となったヒロインの子は、17歳教に不信感を抱きながらも自分が信じられなかったまっとうな家族愛を実在を前にして、自分もまた愛を芽生えさせて主人公を支えようとしている、という優しさと責任感に満ちた愛情が往還しているとても美しい構図なんです。
でも、やっぱりヤだな。自分は、17歳の母親なんていりません。ただ、元気で長生きしてくれれば、それでいいです。

それにしても、主人公の男の子と、社長として自立しながら家族の愛情を信じ切れずにいた女の子が、ただの共感から付き合いをはじめて、それが本当の恋になり愛に変わっていく姿は、ほんとに良かったなあ。派手なラブコメとか全然抜きで、自然に寄り添うように恋人同士になっていくのは新鮮でした。母と妹の家族抜きにして、女の子で登場したのカノジョだけ、という一点集中のブレなさでしたし。

設定の何気ない重さが尋常ではなかったのでどうしてもそこに視点がよってしまいましたけれど、全体を通してみると決して重さに潰されたような鬱々とした雰囲気は欠片もなく、軽快で明るい調子で、しかし真面目にテーマに向き合った良作でありました。馬鹿馬鹿しい頭の悪いコメディだと思って読み始めたら、結構ガツンと来るかもなあ。