剣刻の銀乙女4 (一迅社文庫)

【剣刻の銀乙女(ユングフラウ)4】 手島史詞/八坂ミナト 一迅社文庫

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シルヴィアを仲間に加えたヒースたちは、新たに集めた“剣刻”のことを報告するため、エストレリャの王城へ赴く。そこで一行を出迎えたのはヒネーテ、最後に残った円卓の騎士だった。王の側近で信頼も厚いヒネーテはすでに複数の“剣刻”を宿しており、“剣刻”の最終形態“賢者の刻印”を手にするためにと、ヒースにも“剣刻”の譲渡を迫る。騎士姫ルチルの機転でその場を逃れたヒースたちだが、エステルと縁のある皇禍が現れたことで再び事態は急転していく。ヒースとルチルの“剣刻”の行方は、エステルに突きつけられる困難な決断とは、そしてシルヴィアの知る事実から明らかになっていく“剣刻”の謎とは―謎が謎を呼ぶ剣刻争奪ファンタジー、怒濤の第四弾!

一応、ルチルと同じお姫様属性でどういう扱いになるのかと思っていたシルヴィアだけれど……これはひどい(笑
なんか思いっきりパーティーの中の弄られ役になってるんですが。しかも、悪戯好きのエステルだけじゃなくて、他のわりと真面目な面々までついつい弄って遊んでしまうという天性の弄られ屋気質のご様子で、何この変則型癒し系w
殺伐としているはずの現状の中で和やかな雰囲気が途切れないのは、エステルだけが頑張ってるんじゃなくて、皆が積極的にエステルのノリを肯定しているからなのでしょう。何しろ、一番反発しそうなルチルが現状、一番の協力者だもんなあ。
面白いのは、恋愛面でも人間関係の方でも堅物に見えたルチルの方が色々と積極的であり寛容なんですよね、これ。恋愛感情というものを今まで実感したことのなかったエステルが、ヒースに抱いてしまった不思議な感情に戸惑っている一方で、ルチルは完全に開き直ってしまったのか、エステルのそれをヒースへの恋だ、と指摘した上で、エステルがヒースに抱いている感情も引っ括めて、ヒースも貴女も自分のものにしたい、という大胆発言。冷静に聞くとこの姫騎士さま、ものすごい欲張りなこと言ってるんですけど、あんまりにも涼やかに言ってのけるものだから、思わず納得してしまうところでしたけれど。
ヒースそっちのけで盛り上がってる魔王と姫様、という構図は、作者の別シリーズ【影執事マルク】でもお目に掛かってるんですよね。ラブコメになるとむしろ女性側での結束が強まる傾向にある作風のようなのですが、これがまた盛り上がるんですわ。しかも、あちらが正々堂々と張り合おう、という趣旨のものだったのに対して、こちらはルチルもエステルも、ヒースは私のモノ、貴女も私のモノ、という方針で、お互いにかなりべた惚れ状態なものですから、ちょっとえらいことになりそうです。「私の魔王」「あたしの姫騎士」なんてやりとりなんて、完全に主人公とヒロインの掛け合いですから、それw

今回はクラウンが直接的に介入してこなかったとは言え、王都の方で波乱含みの展開に。ルチルとエステルの将来が定まる、という意味ではかなり重要な流れだったのではないでしょうか。まさか、王様があそこまで覚悟決めちゃってるとはなあ。というか、そこまで王として責任感あるなら、もうちょっと早く何とか出来そうなものだったと思うのですけれど、そこは陛下自身が無能と自嘲する所以だったのか、クラウンの横槍が巧妙だったのか。しかし、はじまった当初はただの門番だったはずのヒースが、随分と格上げされてきたものです。むしろ、門番という職業自体が得体のしれないハイクラスの職業だったのでは、という誤解が生じかねないヒースの門番の概念がオカシイのですが。オカシイのですが。ヒースの思い描く門番だと、そのまま大臣でも王様でもなれそうなんですけどw

手島史詞作品感想