狼と香辛料 (9) (電撃コミックス)

【狼と香辛料 9】 小梅けいと/原作:支倉凍砂 電撃コミックス

Amazon

ははぁ、これがエーブ・ボランか!
狼と香辛料という作品において、ホロ以外に唯一「狼」と称された辣腕の女商人。原作ではその鋭さ、凄味ばかりが印象的だったけれど、こうして小梅さんの漫画によって描かれたエーブは、商人としての迫力、切れ味の尖さと同時に女性としての愛嬌や魅力までがヒラリヒラリと垣間見ることが出来た。なるほど、ホロがノーラ以上にエーブを危険視していたのもよく分かる。笑顔が、ときおり無防備なくらいに可愛らしく見えるんですよね。確かに、常に相手に緊張を与えるだけでは交渉も儘ならないだろう。もっとも、このエーブが果たして並みの交渉でこんな気安い笑顔を見せてくれるかどうかは、定かではないけれど。
ロレンスと接している時のエーブは、自分で思っている以上に楽しそうなんですよね。いっそ壮絶と言ってイイくらい商人としての性に殉じているエーブですけれど、こうして漫画で見るとロレンスに対しては単に利用するための相手というだけではない「本気」がたしかに見て取れるんですよね。
結局商売においては油断も隙も最後まで見せないエーブですけれど、ホロのいう「誑かし」には十分乗っていたんじゃないかと思えてくる。
とまあ、強烈な存在感をもってロレンスへと切り込んでくるエーブですけれど、一方でホロはというとこの街での一件においては献身的と言っていいくらいにロレンスのサポートに回ってるんですよね。一歩距離を置いて見守ってたり助言したり、というのではなくもっと積極的に縁の下で支えるように時に言葉で叱咤し、時に行動で相方を手伝うことを厭わない。前巻あたりで、二人の心理的な距離感が劇的に縮まった感があったんですけれど、こうした面からも二人の関係の進展が窺い知れようというものであります。また、傍でコルが見ているせいか、ホロとロレンスのスキンシップが一層イチャイチャ感増してるんですよね。ホロとロレンスがイチャイチャすると、コルが思わず赤面して顔を覆ってしまうので、ああ傍から見てるとやっぱりそう見えるんだなあ、と実感できるというか。
エーブ・ボランと組合のキーマン副館長。稀代とも、いっそ単純に怪物と呼んで相応しいであろう商人のバケモノ同士の食い合いの狭間にはからずも立たされることになったロレンス。ここで、ロレンスは商人という存在の一つの頂点と、自分が商人として目指す先を見出すことになるのだけれど、漫画となってもやはりこの辺りの駆け引き、凄味はいささかも劣ることなく、それどころかよりいっそうの迫力を持って描かれている。これは、次のエーブとの対決も含めて、非常に楽しみ。

シリーズ感想