姉ちゃんは中二病 地上最強の弟!? (HJ文庫)

【姉ちゃんは中二病 地上最強の弟!?】 藤孝剛志/An2A HJ文庫

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「第7回HJ文庫大賞」金賞受賞作

WEB小説投稿サイト「小説家になろう」で累計PV1,200万超の著者が放つ“最強"学園バトル!

ある日突然、他人の頭上に文字が見える力に目覚めた高校生・坂木雄一。それは相手を何者か見抜く魔眼「ソウルリーダー(姉が命名)」だった!
ふと見ると周囲は『死者』『吸血鬼』『魔女』など怪しい奴らがいっぱい!!
さらに、困惑する雄一に美少女な『殺人鬼』、奈月が近づいてきて……!?
中二病の姉に英才教育された“最強"の弟が繰り広げる新感覚バトルコメディ!!
姉ちゃん姉ちゃん、その髪飾りはけっこう危ない! ふっと何気なく無意識に髪に手をやった時にザクザクと刺さりそうである。姉ちゃん的に、手裏剣として使えるのかもしれないけれど。あれ? 姉ちゃんは実践の方は弟任せだったんだっけ?
最近流行りのウェブ小説からの参入組ですが、きっちり新人賞を経由して、というGA文庫のダンまちと同じパターンの書籍化であります。ウェブでは、この【姉ちゃんは中二病】よりも【大魔王が倒せない】シリーズの方が有名だったんじゃないかな。こちらの大魔王シリーズも書籍化の話があるそうなので、これはこれで楽しみ。
この作者さんの特徴というか妙味は、ある種の身も蓋もなさ、にあると思っているのですが、これは本作にも色濃く出ていて、実は姉ちゃんに振り回されているはずの弟くんも相当に非常識に対して身も蓋もなかったりします。これでもか、と姉の奇矯さを喧伝して自分こそはその被害者である、と主張する雄一くんですが、彼自身まったく自身の非常識さに自覚がありませんし、それを遠回しに指摘されてもまるで一顧だにせずスルーしているあたりは、まったくもってあの姉にしてこの弟あり、だったりするんですよね。その点、作中で一番の常識人というツッコミ役にして、もしかして自分の方がおかしいのかと常識がゲシュタルト崩壊してしまう被害担当艦が吸血鬼の愛子であります。なにか、取ってつけたようにヒロインという肩書を背負ってしまった彼女です。いや、本当にとってつけたみたいにヒロイン要素が添えつけてあって、思わず笑ってしまった。どうもラブコメ分を増量する要請があり、愛子さんがメインヒロインとして抜擢されたというお話ですけれど、愛子の反応は穿った見方をすると雄一たちと付き合うメンタルの疲弊からやや現実逃避してしまった、と見えなくもない。落ち着け、冷静になれ、現実を直視しましょう。大丈夫、オカシイのはあっちだから。疲れてるんですよ、きっと。

中二病というのは、そもそも格好、外側が優先であり、中身というのはあくまで「設定」で完結しているのがパターンであるのですが、この睦子姉ちゃん、どうも頭のオカシイ現実主義者の側面でもあるのか、本来設定でおわるはずの「実」であり「中身」の部分を弟に仕込んでしまった、という話なのであるけれど、考えてみると仕込まれる方も仕込まれる方である。いや、途中で、或いは始める前に弟も踏みとどまれよ! 弟は姉に逆らえない、にも限度があるだろうに、口では散々文句をイイながらもこの弟、限度があまりなかったりする。限度とはすなわち良識にも通じ、お陰様で直前まで殺し合ってた相手と仲良く歓談するなんていうシュールな光景が当たり前みたく現出してしまったりするのだ。拳と拳を交えて友情が生まれたり、殺し合ってたもの同士が一時的に和解して、というシーン自体は珍しくもないのだろうけれど、本作のそれはちとひと味違っていて、殺人鬼兇箸良活シーンのシュールさは、まあほかではお目にかかれない身も蓋もなさだったりする。あれが一番好きなシーンだというと変だろうか(苦笑
これから、クラスメイトの頭上のテロップもどんどんカオスになっていくことを期待しつつ、面白かったです。