浮遊学園のアリス&シャーリー 1 (オーバーラップ文庫)

【浮遊学園のアリス&シャーリー 1】 むらさきゆきや/しらび オーバーラップ文庫

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転校生を待っていたのは、学園最強ペア『お助け猫』アリス&シャーリー!

街が空中に浮かべられるくらいの近未来。特有幻想という異能力に覚醒してしまった者たちは、一般社会から隔絶された空中学園都市《楽園》に集められていた。
柾貴は菓子作りが趣味の平和な高校生だったのに、最高レベルの幻想具現者と判定され転校してくる。
再会した幼馴染みのシャーリーと、物静かで不思議な少女アリス。
ふたりは、幻想悪用の校則違反者を取り締まる《規律委員》の最強ペアだったが……ささいな口論からチームを解消してしまう。
しかも、柾貴は最高レベルだという理由でアリスから、新しいパートナーに選ばれてしまい……!?
最強! 最凶?紅茶とお菓子の異能学園バトルレベルMAXで開幕!!
異能学園モノって、それこそ山ほどあるんだけれど、書く人によってそれぞれ校風というか雰囲気が違うのは面白いなあ。
斯くして、本作はというとモチーフが不思議の国のアリスなせいか、空中都市というファンタジーな舞台なせいか、フワフワとしたワンダーランドらしいポップでメルヘンな香りが漂っている。そのせいか、わりと人間の悪意や悪徳がはびこっているにも関わらず、それに負けない明るさが作品全体を照らしだしている。その輝きの中心こそ、ヒロインの片割れであるシャーリーなのだろう。明るく前向きで、アッケラカンとした後ろ暗いところのない太陽みたいな娘である。一方のアリスはというと、これがもう捻くれ者でがんこで意固地で斜に構えた後ろ向きの寂しがり屋、という孤高を拗らせているような娘なのだけれど、まあ案の定シャーリーの餌食になったらしく、主人公の征貴が転校してきた時には既に迷コンビとして名を馳せていたのだけれど、案の定喧嘩もしょっちゅうらしく、シャーリーと喧嘩して拗ねていたアリスがタイミングよろしく征貴を咥え込んでしまったわけだけれど……何気にこの征貴がまた出来た男なのである。シャーリーという特別な女の子の幼なじみをやっていたのも伊達ではないようで、この手のややこしい面倒くさい対処の難しいタイプの少女のあしらい方、コントロール方法は弁えている、という以上に努力も重ねたんだろうなあ。シャーリーみたいな娘の側に居続けるというのは、なし崩しというか流されるだけでは案外むずかしいもので、相応の努力と知恵と処世術が必要だったりする。彼はその為の労力を惜しまなかったようで、賢明さと同時に柔らかな態度の裏に一本の芯が通っていることがうかがい知れる意志の強さが伺える。出来物、というやつだ。
つまるところ、本作は色々と面倒くさい性格の割に、わりとチョロかったりするアリスというヒロインを、シャーリーと征貴が二人がかりで攻略する、というか愛で倒すお話だと理解した。基本的に、シャーリー・征貴ラインは呼吸がピッタリあっていて、とにかく突っ走るシャーリーを征貴が巧妙にサポートする体制が自然に固まってるんですよね。だもんで、このラインはいじる必要が殆どないものだから、シャーリーも征貴も二人がかり、或いは二方向から確固にアリスに構う構図になっている。面白いトリオ関係なんですよね。
いずれにしろ、戦闘面でも性格面でもアリスとシャーリーが前衛で、主人公の征貴がサポートという陣形もそうそうに固まっていて、何気にわかりやすくもある。征貴が自分の脳力は戦闘向きじゃない、というのは謙遜でもなんでもなく、まったくその通りなのだけれど、むちゃくちゃなアリスとシャーリーの能力とコンボすると、これがまた制限を取っ払えるという意味で非常に有用なので、まさにピッタリハマる三人組なんだよなあ。もうこれ、征貴が執事でいいんじゃね?