マグダラで眠れ (4) (電撃文庫)

【マグダラで眠れ 4】 支倉凍砂/鍋島テツヒロ 電撃文庫

Amazon

「諸君に、帰る場所はない。故に、進む以外に道はない」
 新天地を求め、クラジウス騎士団と共に、改宗宣言のあった異教徒の町カザンに入植したクースラたち。異教徒の技術を得るため、まずは騎士団の手が伸びる前に、町に残る文献を読みあさることにする。そこでクースラたちは、カザンに残る竜の伝説を知る。そんな中クースラたちは、新たな工房を得ることに成功。カザンの町で、仲間四人での穏やかな生活が始まるかと思われた。だがその矢先、彼らにある過酷な運命が降りかかり―?竜の伝説が残る町で、クースラたちは大きな決断を迫られる。シリーズ第4弾!
やだもう、完全にラブラブじゃないですか、お二人さん。
これまではまだイチャイチャ・レベルだったはずなんだけれど、それってまだお互いの反応を手探りで確かめ合うような伺いあう段階とも言えたんですね。意識せずに相手の反応、相手と触れ合い心の動きを楽しんでいるような。
それはそれで十分甘やかな関係ではあったんですけれど、でもまだどちらかというと少し間をあけて眺めている、というレベルの距離感だったわけです。これはクースラだけじゃなくてフェネシスも。自分がいろんな行動を取ることに対して様々な顔、表情、態度を見せるクースラを楽しんで眺めていた、そんな段階だったと思うのです。フェネシスについては、クースラに自分の存在を認めてもらうのに必死だった頃に比べれば、本当に余裕出来たと思うんですけどね、この段階でも。余程、クースラに一杯食らわし認めてもらったことが良かったのでしょう。
ホントにね、この状態でも十分甘やかだったのに……。
あの、二人が別れ別れにならざるを得ないと覚悟し決断した末に、それでも一人で確実に生きるよりも二人で死ぬ可能性を乗り越えよう、という道をクースラが選び、フェネシスが求めた時、苦闘の道を二人で歩こうと決めた時、二人の関係はさらにもう一段深みを増し、距離がなくなり、本当の意味で寄り添う関係になった気がします。具体的にはラブラブに!!
ラブラブに!!
イリーネ姉さんは本当にいい仕事したなあ。なんか、彼女が加わったことで人間関係がすこぶるよどみなく回るようになった気がします。フェネイスも同性の友人であり仲間が出来たことで随分と心に余裕ができたみたいですし、折に触れて面倒くさいクースラやフェネシスの背中を押し、発破をかけ、水をぶっかけて目を覚まさせ、と七面六臂の活躍でしたし。それでいて、彼女自身は隙だらけで何でもできるお姉さんキャラみたいな嫌味もないですし、何というかウェランド含めて四人で一組というパーツにしっかりハマりこんだ感じです。ウェランドも当初の危なっかしさというか何を仕出かすかわからない危険な感じがだいぶなくなって、丸くなりましたしねえ。

これから入植するはずだった侵略した異教徒の地が、それを治める異教の女王が改宗したことで同じ宗門の街となってしまい、戻る場所もなくハシゴをはずされてしまったかのように見えた前巻の終わり。幸いにして、街への入植はそのまま行われることになり、クースラたちはまだ見ぬ新技術や未知の知識を求めて街へと飛び込むことになるのだけれど、むしろ街に駐屯することが出来たせいで袋のネズミに陥ってしまう、という街に入れないというよりも危機的な状況に。入った段階で長居は出来ないんじゃないか、という雰囲気が漂っていましたけれど、状況はさらに予想していたよりも最悪でした。辺境の異教徒を相手に団結していたはずの同じ宗派の味方が、どんな政治的策謀が渦巻いたのか、異教の女王が改宗したことで敵味方が逆転し、異教徒との対決が気がつけば同じ宗門内の異端を討伐する、という形に敵味方をシャッフルしなおして定まっていたという。これは、騎士団としては青天の霹靂もいいところだわなあ。と、同時に政治闘争において完全に後れを取ってしまった、ということでもあり……この辺りの騎士団が異端とされてしまうのは史実のテンプル騎士団そのままか。騎士団が金を握り財務機関として怪物化している、という情報を聞いた時点でああこれはテンプル騎士団だな、と想像はついていたのですが、隆盛を極めていた騎士団の斜陽の時期がこれほど早く訪れることになるとは。クースラたちは、騎士団の庇護を受けていたからこそこれまでかなり自由に立ち回れていたはずなので、今後騎士団が異端認定されて壊滅への道をたどることになったら、クースラたち錬金術師の立場もかなり見通し暗いんですよね。たとえ、今この場を生き残れたとしても、果たして今度いったいどうなるのか。
クースラがようやく、自分が求めているものの具体的な形が見えてきただけに、この四人がバラバラにならずに思うように生きられる場所を見つけ出して欲しいものです。特に今回、フェネシスはかなり危ない橋を渡ったからなあ。悪い意味で世間に知れ渡ってしまったでしょうし。人間関係の好転と進展とは真逆に彼らの置かれた環境がどんどん最悪の方に流れていくのが、心配でたまりません。

1巻 2巻 3巻感想