黒鋼の魔紋修復士7 (ファミ通文庫)

【黒鋼(くろ)の魔紋修復士(ヒエラ・グリフィコス) 7】 嬉野秋彦/ミユキルリア ファミ通文庫

Amazon

ボクは知りたい。“神"と“魔"、そして“魔紋"のはじまりを。

昏睡状態のヴァレリアを逃がすことには成功したものの、敵の手に落ちてしまったディー。
彼を連れ出したギャラリナは、それぞれの魔紋、そして神話について、不可思議な議論を求めてくる。
一方、街道が封鎖されたことにより混乱に気づいたアーマッド首脳陣は、
ガリード卿率いる軍の出陣に加え、ロマリックの魔法士に対抗するためカリンの同道を決定する。
“辺境伯"の野心が暴かれた敵地で、ヴァレリアとディーを待つ命運とは――!?
絶体絶命の第7巻!
ギャラリナさん、情に厚いのか冷酷なのか判断しづらいなあ。個人的にはあの弟をあの段階まで見捨てなかったのは十分情に厚いと思うところなんですけど。はっきり言ってアレ、使うにしてもメリットよりもあれが仕出かすトラブルとか損害を考えるとデメリットの方がどう考えても多いんですよね。姉弟だからって、決して姉を大事にしているとか愛しているという素振りもなく、本心では利用価値のある相手くらいにしか思ってないことも明白だし。それを、あそこまで見過ごしてあげたうえに、何度も忠告を繰り返してなお、それを徹底的に無視されて好き勝手やられたんだから、そりゃ切り捨てて当然です。切り捨てられて当然です。もっと早く切り捨てておけよ、とイライラしてくるくらいに、あのファティフという輩は最悪でした。もう此処まで存在がムカつく敵も珍しいですよ。こういう奴こそ、ディミタールの口撃でメッタメタに切り刻んでくれないと。結構ズタボロに言い返せずに顔を真赤にするほどネチネチ切って捨ててくれてましたけれど、それでも物足りないと思ってしまうくらいですから、ホントに最悪でしたよこのファティフは。
まあそれでも、思い上がったこの自信過剰野郎を真っ向から叩き潰してくれたディミタールはホント頼もしいったらありゃしません。捕まってどうなるかと思いましたけれど、彼のクレバーさは虜囚の身でも全く陰りを見せず。捕えられた相手がファティフなだけに何をされるかわからず、相当にハラハラさせられましたけれど。まあ一番生きた心地がしなかったのは、ファティフのおぞましさを身をもって体験したヴァレリアでしたのでしょうけれど。離れ離れになって初めて、というわけでもないんだろうけれど、こうしたディミタールが危ない、という形で別れ別れになったケースは初めてだったはずで、そうなって見て改めて今のディーとヴァレリアの関係みたいなものが透けて見えてきた気がします。ってか、この二人の関係っていつの間にか当初から随分変わったよなあ。それだけヴァレリアの成長というか、心構えが見違えてきたんだろうけれど、ヴァレリアを傷つけたファティフに対してディーがあれだけ憤怒してみせたのは、決して仕事上の都合だけではないはず。いや、怒ってた、あれは怒ってたから。一方のヴァレリアも、捕まったディーの心配の仕方を見るとねえ……あながち、ピンクの妄想も下衆の勘ぐりじゃないんじゃないかね。
正直言って、ヴァレリアとディーは性格的に合わないし、ぶっちゃけ相性悪いと思います。喧嘩や言い争いは絶えないでしょうし、喧嘩するほど仲がいい、などと言うにはディーの口の悪さはアレすぎますし。この二人が甘い雰囲気になるなんて、今もって想像だに出来ないんだけれど、嬉野さんって意外とビターテイストだったり、渋目の恋愛を書いちゃう人なので、ディーとヴァレリアの行く末については色々と期待しちゃうなあ。
うん、改めて見てもヴァレリアって面白い娘ですよね。聖人君子でも何でもない短気な娘なのに、普通の人でもまともに付き合えないようなディーに対して、逃げず避けずずるもせず、真っ向から言われたことに対してなんぼのもんじゃ、と向き合うわけですから。あのカリンが、マジでヴァレリア不慮の方に顔色をなさしめていたことからもわかるように、意外と人望があるというか、他人を寄せ付けないタイプの人間に対して案外受け入れられてるんですよね。カリンさま、本気でヴァレリアのこと友達だと思ってたんだ。結構今回、友達のピンチに果断に動きまくってた気がします、カリンさま。

さて、状況が動いているようでハッキリと今まで先が見えてきていなかったこの作品ですけれど、ギャラリナが残した示唆は、この作品の最終的な目標というか、倒すべき敵の姿がようやく見えてきた気もしますし、果たして相手はそんな超常の相手なのか。それより、国と国との質の悪い駆け引きの合間に、ヴァレリアたちが突っ込まされ続ける展開が続くんじゃないか、とも思えますし……いや、やっぱり何も見えてないじゃんw

嬉野秋彦作品感想