GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン 6(下) (電撃文庫)

【GENESISシリーズ 境界線上のホライゾン 6(中)】 川上稔/さとやす(TENKY)  電撃文庫

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―これはちょっと想定外ですの。
ついに始まった小田原征伐。戦前会議を経て、北条、羽柴、毛利、最上、上杉、滝川、伊達、武蔵―全勢力入り乱れた“総合相対戦”形式を取ることになった。歴史再現の行く末を世界各国が見守る中、武蔵が毛利代表である人狼女王への刺客として送り出した人物は、誰もが想定すらしていなかったあの人物だった!?どいつもこいつも主張重視のバトルロイヤルが温泉街でついに始まる一方、六護式仏蘭西では真性全裸が光り出す。各国が本能寺の変とその先の未来を見据え動き始めた初の大規模歴史再現。その戦いに勝利するのは?そしてノリキと氏直の因縁は―?第六話、終盤戦!
最上・義光がなんか凄く「みんなのお母さん」していて、ちょっとウルウル来てしまった。大切な一人娘である駒姫を失ってしまったあと、この人のモチベーションってどうなるんだろうと心配していたところに、里見・義康が最上・義康を二重襲名する形で新たな母娘関係を結ぶことで一先ず義光の心の救済は得られたと思っていたのですが、彼女が駒姫に向けていた母親としての愛情は義康だけに留まらず、もっと大きな範囲で広がっているようです。この小田原征伐戦で相対することになった可児・才蔵とのやりとりには胸が温かくなりましたよ。思えば義光って、他の同盟国や好意的なシンパが国の背景や建前が邪魔してなかなか純粋に武蔵を支援出来ない中で、殆ど手放しで武蔵の味方となり支援者となり、今はこうして直接的に手を出して助けてくれているわけですけれど、今まで武蔵ってどうしても孤立していましたし、義光が味方してくれるのってホントに安心感があるんですよね。それ以上に、保護者というか見守ってくれているという抱擁感があって凄く気持ち的に救われていることに今回気づきました。それ以上に、敵対している織田側の人間であっても、可児ちゃんみたいな頑張っている娘には無償の愛を注ぐという姿勢は好きだなあ。駒姫がただ失われるのではなく、彼女自身の頑張りと成長で「巣立っていく」という形で去って行ったことは、そして新たに義康が寄り添ってくれたことが、義光の「母」としてのあり様を大きく広げてくれたような気がします。自分には娘がたくさんいる、という義光の発言には目尻が熱くなりましたよ。
そんな義光に目をかけられた可児ちゃんは、襲名者とは思えないくらい普通の家庭に生まれ、両親の愛情に恵まれ、ひねくれることなくまっすぐに育った女の子で、織田・羽柴の人間が持っている諦観めいたものを全然持ってない後ろ暗さが全然ない娘なんですよね。「頑張ります!!」の真っ直ぐさは眩しいくらい。この娘には織田の暗さには飲み込まれないでほしいなあ。
しかし、小田原征伐が思っていたバトル全開のバトロワとはかなり様相を異にしたものになったのは意外とは言えば意外であり、面白いといえば面白い。いきなりハッサンとミトママが相対したときにはどんな対決になるんだ、と度肝を抜かれたものですけれど、さらにその対決がハッサンによるミトママへの「カレーおもてなし」になるとか、これどんな料理漫画!?
いやすみません、ハッサンのカレーってゲテモノのたぐいだと思ってました。あかんこれ、読んでてお腹減ってくるガチで美味そうなカレーですやん! それも、ミトママの好みと要望に十全応え続けるという「お・も・て・な・し」の心がこもった最高のカレー三昧。ミトママなんか相手にしたら誰であろうとどうやったって勝てるはずないじゃん、という思い込みをひっくり返す意表をつく対決が、この後のハッサン戦以外にも続いてたんですよね。
義康と可児ちゃんのカラオケ対決とか、ミトママと義光のビッグママ対決とか、予想外の見応えでメインのメンバーが今回控えに回るからどうなるかと思いましたけれど、盛り上がりについては全く危惧に値しませんでした。毛利の世鬼さんとか、自動人形ながら熱い魂のある人で、この不具合さんも意外なほど目立ってましたし、繁子さんと成美もさり気なく大暴れしてましたし。大久保ちゃんの弄られっぷりは、酷いのなんの。確かこの間までヅカ本多くんが武蔵では良識者故に弄られ役だったはずなのに……いや、そんなのは遠い過去か。既にウォーモンガーの氷河ギャグ使い(強攻)として馴染んでいたヅカ本多くんですけれど、後輩いじりの外道っぷりは最近凄まじいレベルで、鬼畜外道の味方殺しとしては元のメンツと比べてもえげつないですよ、ほんとw
会計? うどん、美味しいですよね!!
とまあ、なんかもろに談合が行われていたり、と内々での駆け引きが重点的におこなれている小田原征伐に対して、ガチで戦争やっているのが巴里攻防戦。福島・正則が前回の一件で完全に一皮むけて、覚醒のレベルが半端ないことに。二代も長いスランプを経て随分と成長しましたけれど、同じく未熟者の範疇だった正則のそれは二代と比べてもめざましい。これは二人のガチンコ対決は思いの外楽しみになってきました。

ラブコメパートは、というともはや上限に達していると思われたメアリの点蔵へのラブラブ度が、さらに倍増するというとんでもない事態に、チッ。いやまだ上がるのかよ! メアリ様、実は攻められるのに弱い、というのは点蔵に口説かれた時の様子を見ても明らかだったのですが、ちょっと点蔵が誠実に積極的になっただけであんなめろめろになるとか、ほんとどんだけだよ!! よし忍者もげろ。
そして開き直ったというかついに受け入れてしまったのが、浅間さん。もうラストはウハーですよ、ウハー!! 蓋してたものをとっちゃったらこれですか、それですか。全裸も全裸ですよ、お前そんなエロゲの主人公みたいなカマし方しやがって、この野郎。幼なじみルート、ガッツリゲットです。
とまあ、こんなお盛ん状態の中に後発となるであろうノリキと面倒くさい女代表の北条・氏直さんがどうやって馳せ参じるのかと思ってたら……あかん、ノリキ先輩が男前すぎるw 全部一足飛びに行きやがりましたがな、この兄貴。兄貴なのに姫とはこれ以下にw これ、ガチで性別が逆だったとしても萌えただろうなあ、と思わないでもないけれど、ノリキがここまでハッキリと督姫を名乗るとは思わんかったなあ。これまで男の歴史人物を女性が襲名するのは全然珍しくもないことでしたけれど、女性の歴史人物を男性が襲名するケースは見たことがなかっただけに、これは新鮮すぎて何この感覚w

至るものアレば去るものあり。真田を中心に、今回は退場者も多く出てもの寂しい気持ちにされられることも道々なることか。世代交代、というのもあるんだろうけれど、滝川の姐さんを始めとして、やっぱり胸にくるものがあるよなあ。これから、まだまだ織田陣営などは聖譜としても退場を余儀なくされる人が列をなしているだけに、そろそろ覚悟も必要か。十本槍も、結局黒狼が糟屋・武則の襲名者であり、最後の一人は三成が入ることでようやく完成したようで、次は関東解放、さてクライマックスたる本能寺まで秒読み開始もいいところ? 

シリーズ感想