B.A.D. 11 繭墨は紅い花を散らす (ファミ通文庫)

【B.A.D.  11.繭墨は紅い花を散らす】 綾里けいし/ kona
ファミ通文庫


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「ねえ、小田桐勤。君は繭墨あざかを、殺さなくていいのかい?」

「繭墨あざかは、必ず殺される運命にあるんだよ」
その言葉の意味に改めて気づく。
未来を見る御影粒良は繭墨と自らの死を予言した。だが、運命は自分の手で変えられなければおかしい。粒良は死の条件を覆すため協力を求めてきたのだ。
二人の死を回避するには粒良の左眼を潰さねばならない。そのため僕らは、自らの肉を食事としてふるまう代わりに、自殺を求める少女の宴に参加するのだが……。
残酷で切なく、醜悪に美しいミステリアス・ファンタジー第11弾!
うわああ、うわあああんっ!! なんでや、なんでなんや。あんないい子がなんでこんな末路を歩まにゃならんのや!! 最近、雄介が助かってバットを持ち歩かなくなったり、と最悪を回避できる展開が増えてきて完全に油断していました。



特に、七海の周辺についてはもう安全圏に入っていると思い込んでいたので、七海の庇護下にあった綾についても七海がいる限り大丈夫だと、何の根拠もなく信じ込んでいたんですね。だからこそ、今回の顛末はショックでショックで。綾についてはこの作品でも数少ない良識派で、押しも弱くて怯えてばかりだけれどホントに優しくて気配りの利く娘で、ああ、今更ながらにこの娘の存在には救われてたんだなあ、と気付かされる。

「………………へへっ……………忘れ、ちゃっ、た」

あの最後、本心を小田桐くんに告げようとして、でも残される彼の心を慮って何も言わずに微笑んで言葉を濁した綾の内心を思うと、彼女の優しさに涙がこみ上げてくる。あのシーンは切なすぎて、優しすぎて心が痛い。もっとわがままに振る舞っても良かったのに。小田桐くんの心に傷跡を残してやっても良かったのに。もっともっと、記憶に刻みつけてあげても良かったのに。あう、あう、あう(号泣
綾は、最期までずっと傷ついてきた小田桐くんを癒やそうとしていました。そのズタボロの心を罪悪感から守ろうとして、彼が過去に行った行為に許しを与え、彼の傷ついた体を自分の肉で補い、何もかもを与えきって行ってしまいました。小田桐くんのことを、小田桐くんが抱えている罪と後悔を、あんな風に「許して」あげた人がこれまで居たでしょうか。白雪さんのように彼を支え守ろうとしてくれた人は居ましたけれど、彼の抱えている罪悪感を、罪の意識を、こんな風に救ってくれた人がこれまで居たでしょうか。
あの繭墨あさとにすら、一抹の心境の変化を与え、小田桐くんのキズだらけの心身を優しく包んで行ってしまった綾の退場は、思えばギリギリで守られ続けていた「ファミリー」の中からついに脱落者を出してしまったという意味でも、あまりにも大きな損失でした。七海に、なんて言えばいいんだこれ。綾を連れて帰ってこれなかったなんて、なんて申開きすればいいんだよ。
それでも、消えてなお彼女が残してくれたものの大きさを思って、耐えるしかないのか。
零代繭墨あざかの醜悪なやり口には、綾や雄介、白雪などの足掻ききった末に浮き上がる人としての綺麗さとの対比もあって、本当に胸クソが悪くなる。小鳥も御影粒良も歪んでてろくな人間じゃなかったかもしれないけれど、あそこまで悲惨で救われない末路を辿るほどではなかったはず。こんな奴に、あの繭さんが負けてしまうなんて思いたくないなあ。
雨香がついに幼女と言えないくらいまで成長を遂げてしまった今、すべての決着は間近か。

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