ロムニア帝国興亡記I  ─翼ある虎─ (富士見ファンタジア文庫)


【ロムニア帝国興亡記 1.翼ある虎】 舞阪洸/エレクト さわる 富士見ファンタジア文庫

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帝国の“うつけ皇子”サイファカールに辺境長官赴任の勅命が下る。次代皇帝の座を巡る政争と陰謀が渦巻く宮廷から放逐され、歴史の影に埋もれるものと誰もが思っていた。
だが―「帝都より伝令!一刻を争う事態とのこと!」突如としてもたらされた、世界帝国の命運を揺るがす報!
「この後、帝国は大いに荒れるだろうね。それを食い止める」
サイファカールの才を信じ、ともに立ち上がる盟友たち。「見てみたい、この方の行く末を。この方の戦いを―」“うつけ皇子”か?それとも“希代の英雄”か?野に放たれた虎が帝国の運命を大きく変転させる興亡記、いま開幕!
古くからずっとファンタジー戦記を書き続けてきた舞阪さんにとっては、昨今の戦記ブームはまさに隆盛期の到来てなもんで、あっちゃこっちゃのレーベルで戦記モノを立ち上げているわけですけれど、その中でも本作はかなりガチンコの戦記モノを目指している様子が伺える。
そもそも、主人公の皇子が相当に野心家でやる気満々ですからね。最初から天下を目指している虎の相を持つ主人公は今までの作品の中でも珍しい部類。もっとも、既に天下は彼の父親の手で統一され、乱世にこそその能力を煌めかせるだろうサイファカールの資質は、平和になった世ではむしろ波乱の目になるものであり、サイファカール自身、爪を隠し愚か者を装うことで自分を守る事に終始していて、とてもじゃないけれど野心をひけらかすなんて出来ない現状であり、彼自身も生き残ることを最優先として、のし上がることについては半ば諦めていたと言ってもいい。
そんな中で、彼の父である皇帝が異民族の侵入に脅かされる辺境へと彼を遠ざけたのは、彼自身が語っているように親の愛情なんだろうなあ。サイファカールから持っているものを全部引き剥がして身一つで放逐したように見えるけれど、虎は野に解き放たれてこそ虎足り得る。彼に自由を与えることこそ、為虎添翼だったのでしょう。本来ならどう考えても粛清の対象だもんなあ。もっとも、自分が健在の間はどれほどサイファカールが大きくなろうとねじ伏せるだけの自信があったからなのでしょうけれど、まさか直後にあんなことになるとは。
これ、辺境に追いやられてたからこそ、この後の混乱に巻き込まれずに雌伏の時を得られた、とも考えられますけれど、サイファカールの才覚があったなら、その時中央に居たら居たでいきなり核心的に力を握れた、とも考えられるんですよね。どちらのケースでもお話的には相当に面白くなりそうなのだけれど、とりあえず本作では辺境から中央から追いやられたような跳ねっ返りの人材を集めて、反逆の殴り込み、という展開になりそうで、これはこれで王道に燃えるストーリーだったりします。
しかし、今回は女性陣の好感度が最初っからマックスに近いなあ。監視役であるステラステラからして、もう半ば泥沼に足突っ込んでいるようなもので、今回の変事によって軛を解かれたと思えば、もう何の障害もないですし。こうなると、辺境でサイファカールの臣下となる面々がどんな過程で彼に心服していくか、が当座のイベントになるのか。
かなり最初から大きく状況を動かしてきたので、ここはいつもみたいにダラダラと進行するのではなく、中央の動向含めて一気呵成に進めて欲しいところですね。
個人的にはフレイヤさん、山賊将軍の嫁になるのもアリなんですよね。NTR?
ところで、またヨーコさんがいるんですが、そんなにお気に入りなのかこの人。

舞阪洸作品感想