機巧少女は傷つかない12 Facing

【機巧少女は傷つかない 12.Facing "Master's Doll"】 海冬レイジ/るろお MF文庫J

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機巧魔術―それは魔術回路を内蔵する自動人形と、人形使いにより用いられる魔術。日輪の手で一命を取り留めた雷真だが、目覚めた時夜々の命の刻限は過ぎており―「夜々はどうなった!?」「申し訳ありません。わたくし…夜々さんを…っ」一方、学院では王妃グローリアが新学院長に就任。学院は英国に掌握され、アスラを魔王にする謀略が動き出す。そんな中、姉を殺され復讐の念に駆られたロキは、一人反撃の機会をうかがっていた…!秘められし硝子の過去が明かされるとき、乙女たちは雪月花誕生の『意味』を知る―!シンフォニック学園バトルアクション!
なんてこった、凄いぞ雷真。本来ならどうやったって攻略対象外だと思われていたあの硝子さんを、ガチンコの正面突破で攻略してしまいおった!!
いやこれ、皮肉じゃなく大したものですよ。最初期から登場していたキャラクターにもかかわらず、硝子さんという人は得体が知れない上に何を考えているかわからず、そもそも敵か味方かすらも窺い知れない、手の届かないステージに立っている人でした。その立ち位置はほんの最近まで変わらず、この所になってようやく彼女が本心から雷真に力を貸してくれている、というのがわかってきたくらいでして、そのわかったつもりになっていた真意すらも、彼女が薔薇側に与してしまったことで果たしてどこまで信じられるかわからない状態になってしまっていたのでした。つまるところ、花柳齋硝子という人はヒロインではなく、キンバリー先生や雲雀師匠と同じく、あくまで雷真たち主人公サイドの少年少女たちの先達であり、庇護者であり支援者であり、また黒幕でもあり、上位から手を差し伸べてくる側のキャラクターだったわけです。
それは、硝子さんが窮地に陥り、いつも助ける側だった雷真たちに逆に助けられる展開になったとしても、壁をひとつ隔てた側の存在であることは揺るがない、とそう思ってたのですよね。
ところが雷真の野郎、そりゃもう一途としか言いようのないくらいのなりふり構わぬ正面突破で、硝子さんの危機と絶望を粉砕した挙句、無造作に抱きしめるようにして彼女を助けてしまったのです。過去から引きずっていた憂い、心の傷すらも塗りつぶす、その男子としてのなさりようは、硝子さんに、あの硝子さんに女としてのトキメキを芽生えさせてしまったのでした。もう、驚愕ですよ、あの硝子さんが、デレましたよ!!
勿論、花柳齋たるもの、あのチョロいグリゼルダ先生みたいな有り様にはならず、早々にヒロインとして登極した場所からすぐさまに立つ瀬を退かせましたけれど、硝子さんをあそこまでデレさせたというのは快挙と行ってもいいんじゃないでしょうか。赤羽雷真、侮れぬ主人公だと改めて思いました。
ただ、硝子さんの誘惑に取り込まれそうになったときに思い出してしまった相手が夜々と日輪とシャルしかいなかった件については抗議したい。アリスやフレイはまあ仕方ないとして、グリゼルダ先生は思い出してあげてください。先生、わりとガチで結婚前提のつもりなのでw
そのグリゼルダ先生は、今回の総力戦でも切り札としての役割を遺憾なく発揮。ほんとにこの人、最大最強戦力として出し惜しみなしで毎回活躍してるよなあ。此処ぞという時にいつも現れて、生半敵わなさそうな敵を派手にぶっ飛ばしてくれるもんだから、師匠キャラじゃなくてヒーローキャラじゃないのか、と思ってしまうくらい。

一方で、硝子さんを追いかけて学園を出て行ってしまった雷真の代わりに、動乱の学園で紛うことなく主人公をやってのけたのは、毎度おなじみロキさんでした。こいつ、最近本気でライバルキャラを脱却して、主人公枠のっとり始めたぞw 
いや、ケルビムに変わる新たな相棒を手に入れ、単身軍勢によって厳戒態勢に入っている敵地に飛び込んで仲間たちのピンチに救援に入り、はからずも敵陣営に与することになってしまった友人とタイマンで殴りあった挙句にその信念を讃えつつ道を正して説得し、ついには勝利と友情をつかみとるというどこをどう見ても主人公な活躍を見せる始末。あかん、本気でカッコ良かったぞ、ロキ。アスラとの友情バトルとその結末には手放しで熱くなってしまいました。あの殺伐としていたロキが、アスラにあんなセリフを言って手を差し伸べるようになるなんてなあ。あの最後のシーンは本気で感動してしまったぞ。

前にも増して仲間も増えての総力戦。アリスがバックについて謀略めぐらしてくれた時の安心感は、行き当たりばったりの時と比べて全然安心度が違いますねえ。調子乗ってる王妃グローリアがどれだけ大物っぽく振る舞おうとも、アリスが何か画策しているのがわかっている以上、知らずに踊らされている道化に見えてしまう不思議。決してグローリア、そこまで雑魚じゃないんだけれど、エドマンドと比べるとどうしても俗人すぎて浮ついて見えたんだよなあ。そして、味方になっても全然パワーダウンしないアリスの策謀家としての辣腕が上すぎました。これでアリス、作戦の内容が悪辣ではなく、幾重にも多段式かつ重複式に効果が出るように練り上げてはいるものの、敵だった頃と違って仲間たちを信用しきった策だったりするので、見ていても気持ちいいったらありゃしない。特に、敵が読みきったと思った更に上をいき、裏をかき、ピタリと策がハマった時の痛快さたるや。
前々からそうなんだけれど、以心伝心というかこの雷真たちの事前に相談も何もしないくせに仲間同士がどう動くかを読みきって、或いは信じ切って打って出る逆転劇は、危なっかしいんだけれどやっぱり勢いがあります。でも、アリスまでそれに乗っかって作戦立案するとはなあ。いや、アリス味方になったぐらいからその傾向はありましたけれど、今回はその仲間たちがどう動くかを織り込んだ上での作戦は芸術的ですらありました。粋を極めましたわねえ、このあたり。

そして、順調に友達いっぱい計画が進行しているシャルロット(笑
この間の日輪と友達になったときもそうでしたけれど、今回の双子とのそれといい、友達ができれば出来るほどどれだけボッチだったんだ、と泣けてきてしまう友達慣れしていないチョロさはなんともはや(苦笑
シグムントも友だちをつくるのがうまくなったなあ、なんて変な褒め方しないであげてください。前までどれだけ惨憺たる有り様だったかが見えてきそうじゃないですかw

むむむ、それにしても凄い盛り上がりだった。この所総力戦続きだけれど、この出し惜しみのなさは大したもので、そこにそれぞれの成長分と新たな人間関係の進捗が加わるので、同じ総力戦でもどんどんパワーアップしているのが見て取れる。おお、面白いよ、面白かったよ!!
雪月花の秘密も明らかになり、エドマンドにマグナスの動向もようやく手の届く所に来た感じで、そろそろ本当にクライマックス突入か。これでまだ、雷真や夜々たちと、シャルやロキたちが別行動、という状態が続いているのだから、これが合流してしまったらどうなるのか。どうやら、夜会も残ったメンバーでタイマン、という形になってきそうでちょっと趣も変わりそうだけれど、面白さも極まってきた感じで次も楽しみです。

シリーズ感想