聖黒の龍と火薬の儀式<パウダーキス> (MF文庫J)

【聖黒の龍と火薬の儀式<パウダーキス>】 北元あきの/しらび  MF文庫J

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精霊に呪われ龍化に蝕まれる魔法使いの朝霧圭は解呪の手掛かりを求め、魂を宿して異能を放つ“アンティーク”を回収するハンターとしてアジア各地を駆けていた。学園都市に戻った圭はある日、常に人の姿を保つ特異なアンティークである金髪の少女ヴィクトリアと同棲することになる。圭の龍化は、ヴィクトリアから定期的にマギを吸われることで抑止された。その方法は…キス!?そして同時に、手段を選ばないコレクターたちから狙われ続けるレア・アンティークのヴィクトリアを守るため、圭の命がけの戦いがはじまる―!
魔法×銃のファイア・アクション開幕!!
ファンタジーでありながら、闇社会を題材にしたノワール的雰囲気が色濃かった【竜王女は天に舞う】シリーズの北元さん、久々の新シリーズ。前作、すんごい好きだったのですけれど、完結以降しばらく音沙汰なかったんで心配していたので、新シリーズ開幕の報にはキャッキャと躍り上がったものです。どうやら本職の方が忙しかったようですが、また書いてくれて嬉しい限り。そして、案の定というか期待通りというべきか、今度は舞台を現代に移しながらも魔法と銃という要素は健在な上に、またぞろノワールなダーティーな作品の空気も相変わらずで、待ってました。しかも、組織的には幇としか言えない香港マフィアがバックについていて、完全にノワールスタイルであります、美味しい!!
そして、ヒロインの片割れとなる幼馴染が、この幇の血族幹部であり、これがまた汚れ仕事も辞さない真っ黒ヒロインなのであります。まあ、主人公もダーティーな仕事を厭わないプロフェッショナルなので、いい意味で殺伐としたお話なのです。メインヒロインは、マスケット銃のアンティークであるヴィクトリアなのですが、個人的には今のところ幼馴染の雨宮燈子の方が好みドストライクなんですよねえ。この娘、日本の特地を責任者として任されているだけあって、非常に黒いのですけれど、その黒さは本来のものではなくてあくまで幼馴染の圭を守り味方する為に自らの意思で鎧ったものであり、冷酷さも必要だから身につけているだけで、本来は決して他人を無闇に陥れたり傷つけて喜ぶような質ではないのです。むしろ、メンタル的には普通の女の子寄りだと言ってもいい。
こういう娘が、ただ幼馴染の見方をするためだけに覚悟完了させて香港マフィアの中でのし上がり、黒社会にどっぷり足を突っ込んで地位を固めているのである。逆に言うと、地位も立場もこの娘は圭の為揃えたものであり、それ以外に何の価値も見出していない、とも見て取れるんですよね。怖いですよ、こういう一途で大切なもののためにはそれ以外は何でも投げ打てる、というタイプの娘は。それこそ何でもできるしやってのける、という冷厳にして火傷しそうな熱を内包している苛烈さがうかがい知れる。その一途さはちょっとヤンデレの卦も伺えそうですけれど、感情に引きずられて行動を決める傾向があるヤンデレと違って、こういう覚悟完了している娘は、あくまで冷静な意志と理性を以って狂気を肯定しコントロールしているので、恐ろしさの意味合いが段違いです。この娘は、感情任せではなく理性的に冷静に冷徹な判断として、圭の為なら他のすべてを切り捨てて世界を敵に回せるのですから。
ただ、雨宮燈子の場合は恋愛感情優先ではなく、あくまで朝霧圭の味方をし彼を守る、ということを最優先にしているので、その意味では彼の周りにヴィクトリアみたいなお邪魔虫が侍るようになっても、彼女が圭にとって有為であり助けになる存在であれば、どれだけ女の子として不本意でも許容せざるを得ない、というのが可哀想なところなんですよね。
圭は、化物として扱われ孤立する自分の世界でただ一人の絶対的な味方になってくれて、人生と良心と魂そのものを費やし捧げてくれている人について、もうちょっと考えるがよろしいよ。いや、対価として彼自身も当然のように彼女の絶対的な味方として振る舞おうとしているけれど、燈子が求めているものとはちとズレている事について、まあ気づけというのも難しいのか。
燈子ってそりゃ当然のように見返りとして女の子の幸せとして圭の心を欲しているんだけれど、そんな本音のさらに深層を突き詰めてみると、究極的には見返りなんぞ要らないという凄まじい献身の影がうかがい知れるんですよね。しかし同時に、生々しいまでの圭の全てを手に入れたいという飢餓感も感じれる。
怜悧な中に内包する狂熱、強烈な欲望の中に垣間みえる徹底した無私たる奉侍。ある意味純真でまっさらなヴィクトリアとは対照的な複雑にしてとぐろを巻くような内面は、ノワールヒロインとしてはまったくもって美味しいキャラクターなんじゃないでしょうか。これを簡単に報われない系幼馴染ヒロインと侮ってはいけませんぜ、へへ。
ほぼオーラスで燈子について語るのみで、作品の内容についての感想を一切書いていない気もするが、後悔も反省もしない!!

北元あきの作品感想