つきたま 3 ※公務員でも世界を救えます (ガガガ文庫)

【つきたま 3.※公務員でも世界を救えます】 森田季節/osa ガガガ文庫

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セカイの危機に立ち向かうのも、業務内容。

――<特徴>半透明でぷにぷにしています。
――<ご安心ください>「つきたま」が、ごくたまに見えてしまう方もいらっしゃいますが、基本ぷにぷにしているだけで、人間に危害を加えることはありません。

……そう信じてきた。今までは。

これからだってそのはずだった。
お気楽公務員を目指して県の「つきたま」処理窓口に務めた俺の生活は、ここ数か月で激変した。俺の周りは、つきたまで奇跡を起こしたり、魔法を使ったり、国家の陰謀がちらついたり、さらにはつきたまで世界を終わらせようとしたり……。「あり得ない」出来事を信じて疑わない人ばかり。
常識を覆す出来事&トラブルばかりが起こるけど、まあ、現場にできることをやるしかない……よね?

無意味な存在が突然意味を持ち始めたとき、「お気楽公務員」でもヒーローになれるんです?
軍人とか特殊部隊の隊員とかも一応公務員に当たるから、公務員でも世界を救うのは珍しくはないだろうけれど、冠に「地方」をつけて地方公務員とすると、途端に世界とは縁がなくなります。地方だけに。
そして、そもそも大層に言っている割に、別に世界の危機とか関係ないし! セカイの危機、或いは世界観の危機というならまだ合っているかもしれないけれど、正直社会秩序とか現代社会の崩壊の危機、という訳でも何でもない。
ぼくらの七日間戦争、じゃないけれど、警察に補導されるかも怪しいただの家出と立てこもりで、少年少女の青い主張というべき状況じゃあないですか。てっきり前巻で、妹のかやちゃんが、つきたまの存在に関わる黒幕なのかと疑いましたけれど、つきたまはあくまで現象であってかやちゃんが今まで確認されていなかった方法でつきたまに影響を与えていた、というだけでぶっちゃけつきたまじゃあどれだけ不良化させても武器にも兵器にもならないわけで。
そもそも、つきたまってこのお話において何なのさ、というと本当に特に意味ないんですよね。いや、意味がないわけじゃなくてちゃんと刺身のツマ、じゃなくて人と人との関係を芽生えさせるきっかけであり接着剤であり、お仕事の種ではあるんですけれど、自己主張するわけでもなくただそこに居るだけ、というのは結局カヤが不良化させたり、マノさんが大軍を操ったりしても根本的にはこのふわふわした生き物のあり方というものは変わらなかったわけで……。
その周りをそれぞれ理由をこさえて走り回って息切れして混乱して考えて答えを出したり迷い続けたり、という風にしている人間たちが、勝手に意味を与えたり付け加えたりしているだけの置物なんですよね。それに自分勝手に振り回される人間たちの滑稽な姿がこの物語の肝だったのか。その意味では、泰然自若として現実を咀嚼しつつつきたまと戯れていたマノさんが、一番の勝利者だったのか。はたまた、まわりまわった挙句に女子高生と美人上司に好意を持たれてウハウハになってしまった地方公務員のリア充化が本題だったのか。
公務員でも仕事を真面目にしていれば、女の子にもてます。って、どんなありえないファンタジーだよ!!
それにしても、魔法少女もどきはともかく、課長補佐のデレっぷりは一気呵成の火のごとしでした。まあ何度か呑みに誘っていた時点で怪しくはあったんですけれど、精神的に弱ったところを支えて貰った途端、ぐわーーっと肉にありついた大虎みらいに食いつき出したのは、やっぱり即座に子供な女子高生と結婚とつなげて考える大人の女との飢餓感の違いを感じられて勉強になりました、とか言ったら殺されるかw
しかし、上司を恋人とか奥さんにするには、この男、余裕みたいなものがちーっと足りないんじゃないだろうか。やる気ない割に真面目に仕事しているのは誠実というよりも小心者の風情だし。ただ、課長補佐ってダメ男属性がありそうなので、このダメさとちゃんとしているの境目らへんをふらふらしているこの男とは案外相性がぴったりやもしれぬ。
まあ、マノさんが一番奥さんになっても良妻賢母っぽいんですが。あの人は全然恋愛関係は興味なさそうだったからなあ。主人公もバンドの信者という以上のものではなかったようだし。

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