異世界因果のトラベローグ 1 (オーバーラップ文庫)

【異世界因果のトラベローグ 1】 姫ノ木あく/カグユヅ オーバーラップ文庫

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「弘武さんは驚かれるかもしれませんが、実はわたし 異世界から来たエルフなんです」
「うん、知ってた」
目前に控えた修学旅行を楽しみにしていた高校生の弘武には気になることがひとつあった。
最近転入してきたファルと名乗る少女に自分だけエルフ耳があるように見えるのだ。
トラブルのもとになりそうな存在に気が重い弘武だったが、旅行先で危惧した通り謎の褐色美人エルフに襲撃されてしまう。
どうやらファルも襲撃者たちも、弘武の周りにある“あるもの“が目的らしいのだが……
ヒロインも盛りだくさんのドタバタトラベルラブコメ、出発!

また益体も面白味もなさそうな話だなあ、と全然期待もしていませんでした。いや、我ながらなんで買ったのか不思議なくらい。普段ならお見送りして評判を確かめてから、というのが常なのですが、なんかタイミングがあったのかつい買い物カゴに入れてしまったんですよね。
いやいやいや、これがまたなかなか面白かったんですよ。予期せぬ面白さ! 冒頭からスッと話に入り込めて、キャラ同士の掛け合いに馴染んでしまったのですが、このすんなり感が尋常ではなくて、うおっなんだこれ!?と思わず瞠目してしまったほど。てっきり、新人さんだと思ってたんですが、あまりのこなれっぷりに作者の方、確かめてみたら案の定、シナリオライターをやってる人でした。でもね、シナリオライター出身つーたって、それだけで掛け合い描写上手いってなもんじゃないですよ。話の進め方といい、卒のなさは素晴らしいの一言。何の引っ掛かりもなく、スルスルとお話がまとまり進行していく感じは、一切ストレスを感じなくて読みやすいことこの上なし。正直、これだけでも特筆に値すると思うんだけれど、ヒロインを中心とするキャラクターが決して特徴的ではないにも関わらず、非常に魅力的なんですよね。うーん、改めて振り返ってみてもホントに突飛なキャラとかそんなんじゃないんですよね。かと言って、ベタな属性キャラというわけじゃなく、会話のリズムの良さも含めて、全体的に柔らかく…柔軟性が高いんかなあ。なんか変なものが見える、というぐらいしか特別なところのなくこれといった主義主張も持っていない主人公なんですが、硬すぎず軟派すぎず等身大な感じがとても好感持てるんですよね。
面白いのが、あらすじで自分エルフなんよー、と告白している異世界少女が転校生としてクラスに来ると同時に修学旅行に突入するという、ちょっとお目にかかった事のないシチュエーション。これ、なかなか優れた舞台設定だと、後々気が付きました。旅行という動的な舞台でスタートするものだから、新参入となるファルと既存のグループとの親交が組みやすい上に、シーンが動き続けるために様々なシチュエーションが自然に起こるので、個々のキャラの特徴やら関係性がわかりやすく色んなシーンで描写されて、読んでるこちらも自然と親しんでいるんですね。加えて、夜間も含めて常に同じグループで行動するために集中して話が展開しやすいですし、非日常な展開も無理なく盛り込めるんですよね。そもそも、学校なんか入学したてですぐに合宿みたいなイベントがあるのは、クラスメイトとより深く交流できるように、という目的がアルことを考えると、これはうまいやり方だなあと感心してしまった次第。
その上、旅の空で新しい出会いが待っている、というのも卒なく盛り込めますしね。あのちびっ子二人組との運命的な出会い(?)にはちと笑ってしまいましたが。
冒頭のファルが異世界から逃げてくる描写がかなり深刻さが迫ったものだったので、あそこである程度敵の印象が固まっていましたから、なかなかのインパクトでしたよ。まさかチョロい系だったとは。
女の子サイドからの視点描写があるのも好印象。こういうラブコメできっちり女の子の悩みと空回りを軽妙に描いてくれると、気分も軽く読めるんですよね。ラブコメの掛け合いってのは視点があまりに一方に寄り過ぎるとしんどくなりますし。
しかし、幼馴染よりもエルフちゃんよりも菊地真くんよりも、天才幼女のなるあが色々と強烈過ぎて全部持ってってる気がするぞ。他の三人娘も褐色エルフのアホ娘ちゃんも決してポテンシャル低くないのに、生意気幼女のお兄ちゃんはちょっと殺戮性が高すぎるw
巨乳属性を自称しながら、心なしか主人公の弘武もなるあのこと優遇というか、凄くかまってる気がしますし。ロリコンだろう、貴様w

このまま修学旅行の奈良編続くかと思ったら、ラストでまさかのちゃぶ台返し。いや、何気に予想の死角を突く展開で、これは面白いぞ!!