この素晴らしい世界に祝福を!     あぁ、駄女神さま (角川スニーカー文庫)

【この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま】 暁なつめ/三嶋くろね 角川スニーカー文庫

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ゲームを愛する引き籠もり少年・佐藤和真の人生は、あっけなく幕を閉じた…はずだったが、目を覚ますと目の前に女神と名乗る美少女が。「異世界に行かない?一つだけ好きな物を持っていっていいわよ」「じゃあ、あんたで」ここから異世界に転生したカズマの大冒険が始まる…と思いきや、衣食住を得るための労働が始まる!平穏に暮らしたいカズマだが、女神が次々に問題を起こし、ついには魔王軍に目をつけられ!?

「耕される!」
が初っ端からなかった時点であれぇ? となったんですよね。あの掴みで冒頭からガッツリハマった感があったんで。いやだって、耕されるってw
というわけで、「小説家になろう」で絶賛連載中の人気作が、書籍化されてスニーカー文庫から出版される事に相成りました。かくいう私も、この作品ほんとに大好きで毎回ゲラゲラ腹を抱えて笑ってたんですよね。滅茶苦茶面白かったんだこれ。一度読んだらはいおしまい、のギャグものとは違って、何度繰り返し同じ場面読んでも笑えてくるんですよね、これが。それだけではなく、場面場面の勘所では思わず胸がスカッとするような痛快な展開も数々備わっていて、もっともそれも普通考えられない突拍子もない、或いはなんてクズいやりかたなんだ、
と思わずひっくり返って爆笑するようなやり口で懸案をふっ飛ばしてくれるので、楽しいわ笑えるわ気持ちいいわの三拍子揃った快作だったのでした。
ヒロイン三人衆がまた素晴らしく残念で、高位の女神様にも関わらず知力が著しく低いアホの子で後々トイレと宴会芸の女神様として有名になる駄アークプリーストのアクア。最強の魔法である爆裂魔法を操る天才アークウィザードだけれど、使える魔法はその爆裂魔法だけ、他の魔法は意地でも習得しない、しかも一発撃つと魔力切れを起こしてダウンしてしまう駄魔法使いのめぐみん。超絶的な堅さを誇りながら攻撃スキルを一切取らずまず攻撃があたらない、しかも陵辱系エロゲヒロインみたいな境遇に憧れる、好みのタイプは無力な女性をいたぶってゲヒヒと笑う脂ぎった豚みたいなオヤジ系、というドMクルセイダーのダクネス。
この娘たちがまた、本当に酷いんですよね。もう、筆舌しがたいひどさ。仮パーティーを組んだあるチンピラ冒険者が、ガチ泣きでカズマに勘弁して下さい許してくださいこいつらとパーティー組むの無理ですタスケテ、と縋って許しを請うほどの壊滅的なひどさ。なんですけれど、付き合うぶんには結構可愛いのでタチが悪いんですよ。
残念系ヒロインって、結構日常的に接触するのも勘弁して下さい、みたいな性格破綻者も多いんですけれど、この子たちはおもしろ可愛いくて愛らしさが極まっているので、嫌う人はいないんじゃないかなあ。ダクネスなんか、今はまだドMさが結構キモいんだけれど、被虐嗜好とはまた別の棚で女の子らしい恥じらいを見せるシーンものちのち増えてくるので、カズマに弄られまくって赤面しまくるようになるとたまりません。特に本名が知れたあたりから。これは、次巻以降になるのかな。

うーん、でもねえ……。この書籍版、ものすごくぶっちゃけて言ってしまうと、ウェブ連載版の方が面白いです。決して大きなストーリー改変なんかはないんですけれど、主人公のカズマを筆頭に、全体的に灰汁がかなりスポイルされてるんですよね。書籍化にあたってかなり文章をスマート化したんでしょうけれど、その細々と削ってしまった描写や言動が、無駄に見えてキャラクターや世界観に大きな肉厚を与えていたんだなあ、とこうして比べて読んで見るとよくわかります。特にカズマは、これ同一人物か? と首を傾げてしまうほど印象がかわっちゃってるんですよね。というか、非常にキャラの濃さが薄くなってる。この男、本来はもっととんでもない輩なんですよね。悪知恵が働くとか知恵が回る、というのとは少し違って、もっと身も蓋もないというか、わりとクズというかゲスというか、何を仕出かすかわかんないびっくり箱みたいなやつなのです。それがなあ、なんだかえらく存在感がボケてしまって、そこらへんによくいる印象の薄い主人公みたいになっちゃってるんですよね。いや、これでも十分クセがあるんでしょうけれど、ウェブ版の印象と比べるとなあ。それに、ゲームが好き云々と連呼しているのも、なんだかなあ、という感じで。ゲームが好きだからゲームでやってたみたいなやり方で解決しよう云々とか言い出すと、途端に言動が安っぽくなっちゃうんですよね。カズマのキャラにしても、世界観にしても。まったくふざけた世界ですけれど、そんなゲームみたいな世界じゃなかったはず。
あと、めぐみんがロリ化してしまったのもなあ。のちのち、わりとめぐみんとはラブラブでエロいイベントが待っていただけに、めぐみんがロリ化してしまったらベッドの中でイチャイチャ展開とか出来ないじゃないっすか。紅魔の里編とかどうするんだろう。
キャラだけではなく、話の構成なんかも巻の終わりに話を盛り上げて締めようとしたせいか、魔王幹部編を持ってきたせいで、それまでのいくつかのエピソードが端折られてるんですよね。お陰で構成や話の辻褄が微妙にギクシャクしていてぶつ切りになってしまっていたり、このカズマのパーティーのどうしようもなさと、でも一緒に冒険することで育まれていく残念ありの仲間意識の醸成までがカットされてしまったせいで、ダクネスやめぐみんのキャラが馴染む前にクライマックス入っちゃって、えらい唐突感ありますし、この街の他の冒険者たちとの交流もなくなっちゃってるので、最後の戦いでカズマが街の人達の事を心配したりするシーンも浮いちゃってるんですよね。そもそも、デュラハン戦もなんかリズム悪くなってたしなあ。そうだ、ミツルギとの対決もカズマさんのもうやめてあげて!と言いたくなるようなハチャメチャっぷりが削られてて全然盛り上がりたりなかったし。
とにかく、あっちゃこっちゃでチグハグしてしまっているのが、何とも残念で残念で。この作品って、こんなもんじゃないはずなのに。
一応、本番はこれからというか、さらに盛り上がってくるのはダクネスがヒロインとして活躍するお話からではあるのでそこから持ち直してくれることを期待したいです。