薔薇のマリア    19.たとえ明日すべてを失うとしても (角川スニーカー文庫)

【薔薇のマリア 19.たとえ明日すべてを失うとしても】 十文字青/BUNBUN 角川スニーカー文庫

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マリアたちの決死の敢行で“獄の獄”から完全復活を遂げたトマトクン。激戦のシャッコーに舞い戻ると、かつてない強さで悪魔たちを押し戻していく。そんな中、宙に浮かぶエルデンと共に、伝説の魔導王が姿を現し!?一方、幾万もの悪魔に取り囲まれ、防戦一方のワールオックの孤城に、アジアン率いる昼飯時の援軍が近づいていた。そのわずかな希望に城内の戦士たちは息を吹き返し、秩序の番人がついに攻勢に出るのだった!
伝説のディオロッド復活で、悪魔の構成で全滅しかかっていた人類の逆襲のターンだ!! と思っていた時期がありました。ありました。
あかんがなーーー!!
いや、もうあかん、こらあかん!というギリギリの瀬戸際でワールオックにZOOが帰ってきた時は一気に流れが変わるかと思ったし、実際復活したトマトクンはじめとしてZOOの面々の活躍ときたら八面六臂じゃ足りないくらいだったんだけれど……あかん、あまりにも凄惨で登場人物も死にまくったお陰で全然助かった気がしない!!
とてもじゃないけど、反撃開始という感じじゃなかったですよ。溢れかかった破滅が、ようやくZOOの参戦でギリギリ堰き止められた、という感じでしたから。
結果から見ると、確かに陥落必死だった悪魔の万軍を辛うじて退けて、一息つけたんですけれど絶望感の晴れなさは凄いですわー。なんか一時的に凌いだとしても、ジリ貧にしかならないという先行きのなさ。もうね、場面場面で今までシリーズの中でその姿を垣間見てきた名付きのキャラクターたちがガリガリ削られるみたいにしてどんどん死んじゃっていくわけですよ。そりゃもう、ザックザックと死んでいくわけですよ。こんなん、何度か繰り返してたらそれだけで誰もいなくなっちゃうんじゃないかという勢いで。ついこの間まで誰も死んでいなかったアジアンの昼飯時ですら、雪崩を打って有力どころがポンポン死んじゃっていくんですから。秩序の番人やチーロファミリーも全く同様のありさまで。
それでも、あちらこちらで散らばっていた面々が、一処に集ってエルデンに乗れたのだからこれでなんとか……と思ったら、即座にエルデンあんなことになっちゃうしさ!! 速攻すぎるよ!! エルデンに帰ってきたという感慨に浸りきる暇もなしだよ!!
それでも、絶望に浸りきらないのは恐るべきことに、戦慄スべきことに、誰も、誰もこの悪夢にして煉獄さながらの状況で絶望していないからなのだろう。諦めなど欠片もしていないからなのだろう。最後の最期まで戦って戦って生き残ろうとすることを、仲間を助けることを誰も諦めていないからなのだろう。この凄まじいまでの消耗戦の果てで、命がポロポロと簡単にこぼれていく中ですら、誰も諦めていないからなのだろう。
なんか、泣けてきたよ、ほんとに。
今回なんかさ、ついに荊王までが。彼、超人的な面々と比べたら強いって言っても常人の領域だったはずなのに、凄絶なまでの死線を繰り広げて守るべき小さな弱い生命たちを守って逝ってしまったのです。飛燕が一人、別れを噛みしめるシーンには、打たれたなあ。いいコンビだったもんなあ。
一方で、生きて再会することの出来た恋人たちもいるわけで。アジアンとマリアについてはもうごちそうさまとしか言いようがないんだけれど、今回それ以上になんともニモニモさせられたのがやっぱりダリエロとベティなわけでして。ベティってアジアンのこと完全に割りきっちゃったよね、これ。アジアンへの対応とくらべて、ダリエロへのあの反応なんですか?
そして、フラグ立てた途端にえらいことになってしまった陛下。へいかーーー!! いや、大丈夫だと思いたいけど。この人類絶滅戦争のMVPは、どう考えてもこのファニー・フランク陛下だもんなあ。この人だけは死なせたらあかん!!

あとがきによれば、ついにこの薔薇マリも次の二十巻にて幕引き。もうそんなに経つのか、このシリーズも。今なおこのシリーズこそ十文字青という作家のプライマリーにして根源であり、切先であると思えるだけに、その完結には特別な想いが駆け巡る。結局、マリアの性別は何なのか。マリアのうちにある秘密ってなんなんだろう。とか、色々気になってる謎や安否が気になる人とかたくさんあるんだけれど、なるべく沢山回収しつつ、全部べろりと堪能して大の字になれるといいなあ。ただただ楽しみで寂しいよ。

シリーズ感想