ヒャクヤッコの百夜行 (このライトノベルがすごい! 文庫)

【ヒャクヤッコの百夜行】 サブ/Ixy  このライトノベルがすごい!文庫

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高い霊能力を持つ家系に生まれた高嶺裕也は、超ダメ人間の父親の尻拭いのために、とある学園の怪奇事件を解決する仕事を請け負うことに。転校生として学園に潜入した裕也は、こっくりさんの怪異と融合した狐耳の少女・百留谷津子(ウザさ120%)と出会う。裕也に一方的な恋心を抱く谷津子(マジ激ウザ)に手を焼きながらも、裕也は事件の謎に迫るが、二人のちょっとしたすれ違いから事態は思わぬ方向に転がり始め…。ウザカワ(イイ)度120%の狐耳ヒロインと退魔の能力を持つ少年が巻き起こす、痛快学園妖怪ラブコメ&バトル!第4回『このライトノベルがすごい!』大賞・優秀賞受賞作。
マジ激ウザ! いや、ホントにマジ激ウザ! ウザ可愛いってジャンルは、なかなか難しい微妙なセンスが要求される属性なんじゃないだろうか。例えば、芸人のスベリ芸みたいな、おもしろくないのが面白い、みたいな? 他のジャンルよりも、個人の感性に大きく依存するタイプなのである。
その点、自分にとっては谷津子は本気でうざかったです。もう坊主憎けりゃ袈裟まで憎いじゃないけれど、キャラどころか谷津子という名前すら段々とうざくなってきたくらい。見ている限り、主人公の裕也も同じくらいこの娘のことをウザがっていたように見えたのですが、それでもギリギリで見捨てずつきまとうにまかせていたのは、彼のお人好しさ故なのでしょう……お人好しだからなのか? 地味にダメ属性でもあるんじゃないのか、こいつ? というのも、彼の父親がまた冗談抜きで人間のクズなんですよ。個人的に自分の負債を子供に押し付けて自分は楽しているという親には殺意を覚えるのですけれど、このクズ親に対して裕也は散々憎まれ口を叩きながらも見捨てずに面倒を見続け、父親がおっかぶせてくる厄介事も自分の人生を消費しながら逃げ出さずに全部請負い、その報酬を父親に貢いでいるのであります。そんな境遇の主人公でありますから、単にうざくてつきまとってくるだけの谷津子なんて可愛いものなのかもしれません。人の話を聞かなくて、人の都合も気にしないような輩でも、あの父親と比べればマシなのか。
キッパリとしていて、決断力もあり、情に流されずしかし情を蔑ろにしない判断力もある。そして甘さのないシャープな性格、とこれだけ冷静果断なキャラクターでありながら、本質はミツグくんというのは、憐れむべきなのか。
彼以外のキャラクターは全般的にボケキャラというか、マイペースに怪異している連中なのですが、実のところあんまり印象に残るような強烈なキャラはいないんですよね。この点は、同じ学園妖怪ものの先達に比べると、かなり存在感の弱さが際立っている。イタチさんところにしても、紫鏡さんところにしても、脇を固める妖怪たちのキャラクターが立ってたからこそ、ドタバタコメディが映えたものでしたからね。シリアスサイドに話が傾いても、盛り上がりらしい盛り上がりもなかったし、もうちょっと特徴というか掴みが欲しかった作品でした。