クロス×レガリア  双貌の王 (角川スニーカー文庫)

【クロス×レガリア 双貌の王】 三田誠/ゆーげん 角川スニーカー文庫

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夏期補習を受ける馳郎のもとに初めてまともなボディガードの仕事が、リコの後輩・土師さやかから舞い込む。俄然やる気をみせるが、その内容は恋人のフリで…。ナタも蓮花も気が気でない!そんな乙女心も露知らず、馳郎は頼られる喜びを噛みしめ依頼を遂行する。しかし幸福な時間も束の間、辿り着いた先には白鳳六家の第二位・月白弦摩が。真の依頼主が告げる思いがけない提案に馳郎は!?
えーっ、そっちなの!? ナタや蓮花たちと微妙な距離感で恋愛事を営んでいる馳郎の一方で、彼の対極となるジンはというと、ウーという可愛い嫁さんだけじゃなく、さらに娘まで出来ました、ってなんでライバル組の方が着々と家族作ってるんですかっ。馳郎くん、こっちがもたもたしている間にあちらときたら子供までできちゃいましたよ、どうすんですか。
というわけで、小さな女の子を拾ってヒロインと擬似家族を形成するのは主人公の特権だと思い込んでいた固定観念を盛大に打ち崩す、まさかのジン・ファミリー拡大編。いや、これはジンこそが馳郎に並ぶもう一人の主人公なのだという事実を明快にしたということなのかもしれません。双貌の王、というサブタイトルもまさに馳郎とジンの二人を指したものでしょうし。初登場時はジンってあまりに独自のルールにより過ぎてて、同じくぶっ壊れたウーみたいな子しかついていけない孤独の王になるキャラクターなのかと想いましたけれど、思っていた以上にカリスマの塊というか、同じくはぐれ者である逸脱者たちを強く惹きつける、まさにもう一人の王だったわけだ。いや、娘が出来ました、だけじゃなくてまさか隼人兄ちゃんまで魅了してしまうとは。
ジンも馳郎もまったく対極の立ち位置にいながら、だからこそ両者とも白にも黒にも染まらずに、灰色である事は全く同一なのか。ジン・ファミリーばかり目立ったような今回の話ですけれど、一方で馳郎の月白弦摩への対応なんか見ていると、老獪だとかそういう段階を通り越していて、その考え方とか視点の高さというのは怪物的でもあるんですよね。より血まみれの方向に寄っているからジンなんてひどく壊れたモンスターに見えますけれど、ベクトルが違っているだけで馳郎のそれも全く位相を異にしてるんですよね。こればっかりは、どれだけ戦闘力が高くても、謀略に長けていても、政治力が妖怪じみて居ても関係ない。実際、月白弦摩という長老は本来ならラスボスレベルの黒幕を担えるだけの能力と人品骨柄の持ち主なんですよね。それを、今回主導権はこちらが握って居たからとはいえ、完全に制してみせたわけです。いや、主導権を握れたのも、馳郎だからこそか。こればっかりはなるほど、王の器としか言い様がない。勿論、どうやら弦摩翁も大人しく付き従っているようなタマではなく、狂気と理性と激情と聡明さを兼ね備えた実に味のあるキャラクターで、今後も敵味方の括りを逸脱したところから状況を引っ掻き回してくれそうな実に頼もしい人なのですが。
何れにしても、着々と一団を形成していっているジン・ファミリーは今度目が離せないなあ。ちょっと馳郎サイドで味方にはなってくれなさそうだけれど、そのままフェイドアウトするには勿体無いと思えるような濃いキャラクターを、こちらでどんどん拾っていってくれそうですし。

さて、ナタに遠慮しているように見えて、実は着々と距離を物理的にも精神的に縮めていっている蓮花さん、自覚的になっている分、可愛さがどんどんアップしてるなあ。ナタが手を休めているわけではないので、その分蓮花の猛攻が目につくのかもしれません。いい具合にダブルヒロイン化してきたか。でも、馳郎の本命はナタから揺るがなさそうなのが、蓮花には辛いところなのですが。

シリーズ感想