祓魔学園の背教者 ―祭壇の聖女― (電撃文庫)

【学園の祓魔背教者(ミトラルカ) 祭壇の聖女】 三河ごーすと/ukyo_rst 電撃文庫

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祓魔師―それは信仰する神仏精霊を具現化し、悪魔契約者と戦う選ばれた聖職者。“逢沢拓真”は、祓魔師の一人でありながら信仰心のない無宗教主義者という変わり者だった。拓真はある理由で、祓魔師を教育し国家資格を取らせることを目的とした学校“祓魔学園”の入学試験に挑戦することに。さらに世界最強の祓魔師である銀髪美少女“ミトラ”と同居し、彼女の護衛をすることになってしまう…!二人の背教者を波乱の運命が待ち受ける。最強学園バトルファンタジー開幕!
もはや宗派じゃなくてこれは流派と捉えた方がいいのか。一応、主人公は信仰心ゼロであり宗教への不信感から無宗教を貫いているけれど、根本的に「信仰」という概念とはどうやら関わらない方向でお話は作られているようですし。宗教論については完全に別枠で。
しかし、ヒロインのミトラの宗派は「マイトレイヤ教」かー。本作は基督教は白十字教、仏教は蓮などといった風にそのままではなくアレンジして表記されているんだけれど、よりにもよってマイトレイヤ教で扱う聖霊はミスラ、んでそれを使うヒロインの愛称はミトラ、って全部同じじゃんw
これってつまりミトラ教、ミトラス教の事なんだろうけれど、なるほど既にとっくの昔に消滅しているこの宗派なら、そりゃ他に信仰している人はいないだろうなあ。でも、マイトレイヤ教って名乗っちゃうと仏教の一派の一つになってしまいそうな気がしないでもないでもない。マイトレイヤーっていわゆる弥勒菩薩のサンスクリット名ですから、弥勒教って事になりますし。まあ名前を変えている通り、単に宗派はそれっぽく見せているだけで詳しい神学宗教知識に則った設定が出てくるというわけではないので、その辺スルーでいいんでしょうけれど。
しかし、常に棺桶みたいな祭壇背負ってるって、昔そういう設定のヒロインが出てくる話あったよなあ、と懐かしく振り返ろうとして思い出したら、現在絶賛シリーズ展開中の棺姫のチャイカのことだった。全然昔じゃないじゃん。でも、あちらと違ってこちらのミトラが祭壇いつも背負っているのは非常に世知辛い理由があるので、同類扱いすると可哀想、いや別にチャイカがアレってわけじゃないんだが。
一方で宗教嫌いの拓真はというと、これがまたなかなか深い業とも言える呪いを背負っている。第一巻ではその呪いの恐ろしさについてはそれほど言及されていなかったけれど、これってよくよく考えると本気になって興味・感心・好奇心を抱き、人に対しては好意や愛情、執着を抱けば抱くほど、バラバラにバラしてしまうほど知りたくなる、というのはもはや殺すことでしか愛情を発露できないシリアルキラーと対して意味合い的に変わんないんですよね。主人公、容赦とか躊躇といった甘さをポイ捨てしてるかなり徹した人物だけれど、人格的には非常にまともで情にも厚い人物で、まったく異常者とはかけ離れた人品の持ち主だけに、逆に呪いが本格的に発動した際の悲惨さが際立つ環境にあるとも言える。果たして、彼自身実際に「やっちまった」ことはないようなので、自分が抱えている呪いの本当の恐ろしさを自覚しているのか怪しいところがある。かなり気をつけて冷静に、好奇心を抱かないように振る舞ってはいるけれど、翠花と普通に親しく幼馴染づき合いしているのを見ると、本当にヤバいという感覚はなさそう。こういうのは、一度本当に呪いが発動して取り返しがつかない事態になってしまうと面白い展開になるんだけれど、果たしてそこまで殺伐とした救いようのない話になるかどうかは、ちょっと窺い知れないな。そういう方向性ではないみたいだし。特に敵サイドの救済までしてるとなるとね。
あれはちょっと甘い処分のような気もする。翠花のところの寮長なんか、かなりエグい目に合わされてますし、知れると一悶着どころじゃなく荒れそうな。
面白い立ち位置というと、あの玖珂暁という子が思っていたのと全然違った役回りだったことにニマニマ。居丈高で傲岸不遜、主人公に余計なちょっかいかけてくる嫌なやつなのかと思ったら、取り巻きもつれずに本当に単独行動で我が道を行ってるんですよね。自分を正しいと規定していますけれど、よくよく見てると自分を正義とみなして驕り高ぶっているのとは全然違うようで、彼の持っている真実の一端を見るとなるほどなあ、とその自分を正しいと宣う言い分も納得できるわけで……むしろこいつ、主人公サイドなのか。
キャラ的にも翠花もサヴァトリィも十分立っているので、なかなか出だしとしては良いスタートだったんじゃないかと。