マージナル・オペレーション 03 (星海社FICTIONS)

【マージナル・オペレーション 03】 芝村裕吏/しずまよしのり 星海社FICTIONS

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そして、仲間たちの血は流れる──。
新宿を恐慌に陥れた戦いの後、アラタたち一行は日本を出国し、タイへと降り立った。その地でアラタを待っていたのは、“子供使い”の悪しき影響で横行する少年兵を使ったビジネスと、“あの男”との思わぬ形での再会だった。再び、ファンタジーで現実を壊すべく、戦いに身を投じるアラタだったが、わずかな油断が、子供たち──そして、彼を愛した女の命を窮地に陥れてしまう……。熱帯の戦場に血飛沫が舞う、緊迫の第3巻!
これは確かに完全にアラタのミスだなあ。それも、単なる判断ミスや油断というよりも、根本的に自己評価が間違っている点と他人の気持ちや心情を察することの出来ない鈍感さが招いた破綻だったような気がする。勿論、自分を過大に評価してしまう事は大きな被害を招く理由になるけれど、自己の過小評価もまた客観的な判断が出来ていないという点で状況判断にミステイクを起こしやすいという意味では大した違いはないのかもしれない。アラタは自分の能力と影響力について賞賛を受けたがらないあまりに、過剰に自分を卑下する傾向があるけれど、自分の名声と能力が他人にもたらす影響というものをもっと真剣かつ深刻に考えていれば、この事態は避けられたんじゃないだろうか、と思わざるをえない。
ただ、どうもこのあたり、意識が足りないとか現実逃避というよりもアラタという人間がそもそもそういう考えを巡らせられない、想像できない欠落を持っているんじゃないか、という風にも見える。どうも、治るように見えないんですよね、他人の感情の特定の領域部分を全く理解できていない、というのは。決して人の心がわからないというわけじゃないんだけれど、恋愛感情にしても嫉妬にしても憎しみにしても、ある一定の熱量を持った感情をぶつけられても、全く認識出来ていないような素振りがつきまとっているのである。さて、それが自分という人間はそれほど強い感情を向けられるに値するだけの価値はない、という自己評価の低さが根底にあるのか。それとも、人の心がわからない後付の理由として、そういう風な設定を自分の中に構築しているのか。
何れにしても、後悔してもし切れないほどの取り返しの付かない失敗をしてしまったアラタ。喪ってしまったものの大きさに打ちのめされている暇もなく、彼の前には彼を中心にして稼働し出した巨大なシステムが誕生してしまった。子どもたちを守るため、子どもたちに未来を与える為に、子どもたちを戦場に送り出す矛盾したシステムが。
果たして、彼は壊れずに居られるのか。それとも、もう既に壊れてしまっているのか。ラストから、平素と変わらないように見えてどこか乾ききって温度が感じられない空気をまとうようになった気がするアラタの今後に、身震いするような薄ら寒さがまとわりついて離れない。こればっかりはもうジブリールに頼る他ないんだろうけれど……、この娘兵士としてはともかく、女性としてはかなり脆いというか、粘れずに泣いてしまうところがあるので、こうなってしまったアラタに果たして訴えかける事が出来るのか、ちょっと不安なんですよね。

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