落第騎士の英雄譚(キャバルリィ)2 (GA文庫)

【落第騎士の英雄譚(キャバルリィ) 2】 海空りく/をん GA文庫

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「なによ、あのセンパイばっかりひいきして! 」
学内戦で順調に勝ち星を重ねていく一輝とステラ。
だがその一方で恋人としての関係はまったくと言っていいほど進んでいなかった。
おまけに美人の上級生・綾辻絢瀬が一輝に剣術の弟子入りをすることになり、
ステラのやきもちが大爆発!
そんなある日、一輝は前大会ベスト8にして絢瀬にとって因縁の敵《剣士殺し》倉敷蔵人に絡まれ、
やがて決闘することに!
生徒会役員との戦い、初めての恋人との距離感、他校エースとの場外決戦――

最底辺から並み居る敵をなぎ倒す学園ソードアクション、激闘の第2巻・開幕!
おいこら生徒会執行部! 前回ラストで、恐ろしく勿体ぶった登場の仕方をして、ふんあの程度の輩を倒したくらいでいい気になっては困るな、次は我々がお相手してしんぜよう、みたいな偉そうな態度だったのに、速攻で生徒会執行部庶務が蹴散らされたぞ(笑
まさに、ふふふ、奴は生徒会執行部の中でも最弱っ!! なぜならば庶務だから! みたいなノリになってるよ。大丈夫か? 本当に強いのか、生徒会執行部!! 実はこいつら、噛ませ犬どころじゃない面白枠なんじゃないか、という疑惑がこんこんと湧き上がってきたのだが、一応副会長とかが実力者っぽい含みのある接触の仕方をしてきて、庶務とは違うのだよ庶務とは、とアピールしてきましたし、まあ大丈夫だと思うんですけれど。
でもむしろ「面白枠」だったりする方が、敵に回ると面白キャラだけれど味方になったら異様に頼もしい、とか普通の逆パターンだったりするケースが見受けられるので、なんだか変にワクワクしてしまう。本作の作者はデビュー作なんか見ると、サイドを固めるキャラクターのキャラ付けには大きな信頼がおけるタイプの人なので、むしろどんどん登場人物増やしてくれた方が盛り上がって楽しい事になりそうなんですよね。
一方で、恋愛パートは殆ど目移りせずに、ステラ一択というのが何とも頼もしい限りである。ホント、まさか1巻で彼氏彼女の関係になってしまうとは、まず他では見ない大胆な展開だったもんなあ。
とはいえ、前回で危惧したような甘酸っぱい砂を吐くようなデレデレな関係にはすぐさま行かず、お互い恋愛初心者というおっかなびっくりの初々しさが見ていてもどかしいやらこっ恥ずかしいやら。
でも、お邪魔虫になるような人も居ない、どころか妹も絢瀬も消極的・積極的の差はあっても一輝とステラの中を応援するモードに入っているので、ある意味じっくりいい雰囲気と関係を醸成していける環境が整っている、と言えるのかもしれない。妹ちゃんなんか、付き合っているのを表沙汰に出来ずにコソコソしている二人に対して、自分くらいには言ってくれてもいいのに、みたいな感じで不満気にしている様子なんか可愛いもんじゃないですか。イイ小姑になりそうです。

と、何だかキャッキャウフフな甘酸っぱいラブコメなお話が繰り広げられているような錯覚を感じてしまいますが、終わってみると今回の一連のお話……凄まじく男クセえ!!
今度の敵役である《剣士殺し》倉敷蔵人は、前の狡っ辛い小物の悪役と違って、態度こそガラの悪い残虐非道の無頼漢、みたいな悪人風情ですけれど、中身は純粋と言っていいほどの剣術バカ。言わば、一輝と皮一枚剥いてしまえばほぼ同類なんですよね。この一連の出来事は、最初は絢瀬が父親を再起不能にされた事への復讐劇、というドロドロとした粘性の様相を呈していたのですが、クライマックスに行くと完全に女どもはすっこんでろ、という展開になってしまって、唖然とする一方で思わず笑ってしまいそうな爽快感が。
なんつう気持ちの通じあった楽しそうな喧嘩をしてるんだ、この男どもは。それぞれの心情が明らかになると、惨たらしく情けも何もあったもんじゃない、と思われた絢瀬と蔵人の戦いも、当人同士の間では心から存分にやりあった決闘であることがわかり、印象もガラリとかわってしまった。結局、再起不能にされてしまったわけだけれど、親父さん当人も含めて全然後悔が見当たらない。いや、様々な不足が原因で全力を尽くしきれなかった、という意味で後悔ではなく未練が残ってしまっていたようだけれど、それを絢瀬が勘違いし、結果として蔵人と一輝が未練を全部吹き飛ばす存分な決闘をするに至ったわけだから、絢瀬の誤解もまあ無駄ではなかったわけだ。絢瀬からすると、かなり面倒くさい回り道をさせられたわけだけれど、男どもの馬鹿さ加減には笑うほか無いよなあ。
でも、なんだかんだとステラ含めて、ここに出てくる女性陣は、こうしたバトルジャンキーには理解があるので助かる。何気に彼女ら自身にもその傾向があるからなんだろうけれど、楽しい喧嘩をしている最中にしたり顔で横からごちゃごちゃ言われたら鬱陶しいったらありゃしませんもんね。そういうしたり顔のヒロインがいないのも、また痛快である。

さて、次回は妹ちゃんが大暴れしてくれそうな雰囲気。どうもこの妹も良識をヤクザキックを背中に蹴りこんで這いつくばらせて踏みにじりそうな、血を見て舌なめずりしそうな風情のある娘なので、愉快な大暴れしてくれそうなんで楽しみデスよ。

1巻感想