紫電の刃と慟哭の精霊姫 (一迅社文庫)

【紫電の刃と慟哭の精霊姫】 坂照鉄平/COMTA 一迅社文庫

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「日本人」が恐れられる剣と魔法の異世界。魔法王国の少女・ミラベルは、ひょんなことから侍の少年・陣八に助けられる。気の良い「日本人」が新鮮なミラベル。意気投合した彼らは一緒に旅をすることになるのだが、行く手には無法者たちの影が迫り―。失われた「ブシドー」の境地を求め、侍と少女騎士は荒野を駆ける!異色の西洋×日本ファンタジー!!!
こ、これはまたスチャラカな洋風異世界と和風ファンタジーの混合ワールドだ。真面目に世界観を融合させたものとは少しずれていて、そう…漫画の「銀魂」に似た路線、とでも言うんでしょうか。あちらは江戸時代に宇宙から異星人がやってきて、混ざった文化が素っ頓狂なことになっていましたけれど、こちらも現代日本ではなく恐らく戦国末期か江戸初期の日本がまるごと異世界に飛んできてしまって陸続きとなり、以来500年が経過して異世界ファンタジーが混ざったへんてこな文化が育ってしまった、と。もっとも、日本とは言っても日本人、倭技(ヤマトクラフト)なる天然の精霊魔法みたいなのを生来備えている人が多かったり、とどう見てもこっちも和風ファンタジーの世界の日本だったりするのですが、横文字の流入もお洒落とか粋とはベクトル真逆の、でも妙にツボに入るルビ振りで、これが結構楽しかったり。
しかしこの世界の日本人って、扱い完全に亜人蛮族だよな(笑 というよりも、オークとかエルフとかドワーフに混ざって、日本人が加わってる、みたいな。種族・日本人って感じでヒューマン扱いされてないw
このごった煮感はあんまり見たことが無いタイプな上に、全体的にノリが軽くてワイワイと大騒ぎしながらテンポ良く進行していくお話なので、このノリと味付けが気に入ったら読んでいてもかなり楽しい気分になってくる。主人公の陣八とお姫様のミラベルが完全に脳天気アーパー系で波長が合ってしまっていて、お供のグーデリアが二人に振り回されて、とりあえずぶちきれて蹴りを入れる係、になっているあたりも、ドタバタコメディとしての形ができているんじゃないだろうか。
一方で、脳天気でありつつもこの二人、一本芯の通った信念を胸に秘め、肝心なときには毅然とそれを振るう事が出来る子たちであり、同時に抑え役であり世話係であるグーデリアもそういう時には見事に主人の意思を体現しようとする剣となるので、締まるところはビシっと締めてくれるあたり、緩急がしっかりしているとも言えるのではないでしょうか。
加えて、主人公の陣八に与えられた話のテーマは受け継がれる魂に託される意志。師弟愛とも親子の愛情とも取れる少年がある意味本当の意味で独り立ちする成長のお話でもあるんですよね。

若干、内包している様々なテーマや要素の整理に手間取り、とっちらかってやや焦点がブレている感もあって完成度としては甘さもあるんですが、楽しくも読み応えのある物語としては十分な出だしだったんじゃないでしょうか。あと、どうもこのメインの三人、配置的に水戸黄門的な世直しの旅とか出来そうな塩梅で、てっきりそっち方面に話が展開するのかと思っていたくらいで、次回辺りはそんな方向に行くのかなあ、とチラ見で期待してみたり。あとは、もうちょっとグーデリアの方も持ち上げてほしいな。まだこう、三人のキャラの紹介、みたいな要素に留まっていて、三人の関係の掘り下げというところまではまだ至っていなかった気がするので。

坂照鉄平作品感想