封殺鬼 数え唄うたうもの (ルルル文庫)

【封殺鬼 数え唄うたうもの】 霜島ケイ/カズキヨネ ルルル文庫

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『本家』の二人の鬼・聖と弓生が使役の任から解放されて半年。相変わらず新宿で拝み屋をやっている野坂三吾のもとにある日、仕事の依頼が舞い込む。依頼主は女子大生、高階結衣。大学の探検サークルに所属している学生がつぎつぎに不審な死を遂げているので、助けてほしいという。三吾は二人とともに、調査を開始した。
事の起こりはサークルのメンバー九人が、『埋蔵金探し』と称して瀬戸内海にある恵比子(えびす)島の禁忌を破ったことだった。島の岬には七体の地蔵が並んでいて、その場所に近づいた者は、祟りを受け島に伝わる唄の通りの死を迎えるという。この島は潮の流れの関係で昔から水死体が流れ着くことが多く、地蔵はそれを供養するためのもの――だがなぜ、それが祟るのか。
謎を解明する過程で、三吾と二人の鬼は、島のもうひとつの言い伝えを知るが…!?

『薄桜鬼』などで大人気のカズキヨネを新イラストレーターに迎え、大人気シリーズの現代編新作がいよいよ登場!!
封殺鬼シリーズ、続行だけでも嬉しいのに、まさかの現代編。そう、近年続いていた戦前を舞台にした桐子編は、いうなればスピンオフであって封殺鬼の本編は元々この現代を舞台にした時代の話だったんですよね。その本編も星神編の終結と共に聖と弓生が本家の使役から解き放たれ、自由を得るとともに幕引きと相成っていたわけですけれど、あれから何年ですか? 七年? 八年ですか。2005年にシリーズ完結となったので、もうそんなになるのか。それだけ久々の現代編、しかも時系列を遡るのではなく、終わった後の続きですよ。続いてくれるんだ、と思うとうれしくて仕方がない。
残念ながら、封殺鬼シリーズを出版していたキャンパス文庫は現在潰れてしまって、現在シリーズを入手するのは極めて難しい状況で、新装版も確か何巻か出したあとは音沙汰なくなってしまっているのですが、この作品はホントに素晴らしい傑作なので、是非手に入れる機会があれば手を出してもらいたいものです。というか、新装版改めて出しましょうよw 
さて、もう現代は随分と久しぶりで、聖と弓生はというと桐子様に構いっ放しの親ばか状態でしたから、こっちに戻るにもブランクは大丈夫なのか、と心配する余地もなく、懐かしい三吾や佐穂子たちとのどこかのほほんとしたやりとりは相変わらずで、ブランクなんか全然感じませんでしたよ。暴走する聖にマイペースな弓生、そんな二人に振り回される苦労人の三吾。この構図はやっぱり変わらんのだなあ。そこに佐穂子や成樹が加わって、ワイワイと賑やかに鍋パーティーしている姿には、ほっこりすると同時に安堵感も湧き上がります。一時期から、風雲急を告げる展開の連続にみんな色々と切羽詰まり追い詰められて、こんな風に和やかに過ごせる時間はいつの間にかなくなっていましたからね。改めてこうして騒げるというのは、それだけちゃんと平和が取り戻せて、それぞれの関係にも決着がついて憂いがなくなった、ということなのですから。特に、聖と弓生を取り巻く重苦しい環境が、先のシリーズ関係である程度綺麗に払拭された事も大きいのでしょう。弓生がこれだけリラックスしていられるのって、桐子が鬼使いであった頃を含めても、清明の時代からホントに数えるほどしかなかったでしょうし。まだ佐穂子が、微妙に聖のこと気にしている風だけれど、この二人の関係もある程度決着ついているので、今更ごちゃごちゃもめるほどでもないですし。ってか、あの男前なちびっ子の千冬が出てこないかとちと期待したのですが、さすがに今回は出番なかったか。どちらかというと、今回は三吾がメインで佐穂子はサポート役でしたもんね。
というわけで、今回は桐子さまみたいにラブコメしてくれるキャラがいないもので、もっぱら内容の方は島を訪れた大学生たちを様々な方法で殺して回る怪異の真相を探るミステリー形式。このベールに包まれた怪異の真実をフィールドワークなどでコツコツと探り当てていく形式は、まさに封殺鬼シリーズ本編の主軸と言ってもイイ方策だったので、これもまた懐かしいやら面白いやら。
序盤は、岬にある7つの地蔵や、順番に殺されていく被害者たちなど、あからさまに「七人ミサキ」を連想させる展開だったのですが、何気に一筋縄ではいかなかったりするのがこの作品。いや、普通に七人ミサキじゃないの? と思ってて、なんでプロである三吾たちが言及しないのかと首を傾げていたら、どうやら早々にその可能性は排除していたようで、途中でさっさと七人ミサキじゃないと断言されてしまいました、参った。
やっぱり、この怪異との対決を絡めた謎解きは面白いなあ。一つ間違えれば陰惨極まりない鬱な話になろうというものなんですけれど、そういう時、聖がいい意味で空気を読まずに重苦しい空気を吹き飛ばしてくれるので、救われる思いです。それに、結末も古いものも新しいものの、残された想いも今を生きている人の想いも否定せず、柔らかく包み込むような優しい終わり方で、思わず和やかな余韻に浸ってしまうものでした。
三吾も佐穂子も、いい加減ぶらぶら出来ずにそろそろ御景、秋川本家を継がなきゃいけない時期に来ていますけれど、こんな風に聖や弓生が使役ではなく、友人として見守っていてくれるなら、滞りなくうまくやってけるんじゃないかなあ。神島達彦も、いい意味で食えなくなっているようですし……戦隊物の陰陽セブン、いいのか? 吹っ切れた後の達彦のキャラが、微妙に怪しくなってきてないだろうか、これ。聖と波長合ってなきゃいいんだけれど。やっぱり、色的にはブラックなんだろうかw
あと、聖さん、御師さんはそろそろ許してあげてください。あんたのノリについていけるほど、もう若くないんですから。どれだけご老人の血圧あげたら気が済むんだw 緊急の連絡かと慌てて電話口に駆けつけて、出てきた話が陰陽セブンとか、罰ゲームにも程があるだろう。中央のえらい人なんですよ、その人w

ある意味、再スタートという感じのきりの良いお話で、これは改めて続編期待出来るんでしょうか。期待したいですねえ。