グラウスタンディア皇国物語1 (HJ文庫)

【グラウスタンディア皇国物語 1】 内堀優一/鵜飼沙樹 HJ文庫

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皇国最強の切り札は――双剣使いの英雄軍師! 超王道カタルシスで刻むファンタジー戦記、始動!!

五年前、隣国リジアとの大戦を終結させた七人の英雄――《皇国七聖》。
その一人である双剣使いの青年軍師クロムは、主たる姫君ユースティナとの誓いを守り、再び開戦が迫った皇国の切り札として戦場の最前線へ舞い戻る!
武力と知略の両面で卓越した才能を発揮し、絶望的な戦況さえも鮮やかに覆す英雄軍師の活躍を描いたファンタジー戦記、開幕!!
大戦が終わった後、山奥に隠棲して俗世から離れた生活をしていたという、何とも浮世離れしたというか仙人めいた雰囲気のある経歴からはじまり、また登場してしばらくは生真面目な態度に徹していたので、あんまりおちゃらけたところのない、性格的に面白味のないタイプの主人公かと思っていたら油断した……(笑
大戦期、暇さえあれば読書に没頭していた姿が、当時まだ幼かった少女騎士フィフニスの憧れの記憶として残っており、彼女のクロムへの憧憬を形成する光景となっていたのだけれど、まさかその時黙々と読んでいた古書が……エロ本だったとは思うまいw
バレたからって開き直るな、このムッツリスケベ。いやいや、仙人どころか普通に助平な兄ちゃんじゃないですか、こいつ。本性がバレたあたりから、クロムの態度もなんだか飄々としてとらえどころのない食わせ者的なものになってきて、皮肉や図太い言動、身近な人達をからかって弄るような面も見えてきて、刺客的にも面白味ばっかりじゃないですか。
うむ、エロ本ネタは素晴らしかったな。あの一個だけで、とたんにすんごく親しみの湧く主人公になりましたよ。同じく、再会のシーンが結構重めな展開だっただけに、こちらも重苦しい雰囲気だったフィフニスも皇都に戻ってきたあたりから緊張が解けて素に戻ったからか、乙女的な思い込みの激しい妄想少女であることが発覚してしまい……ああわりと残念な娘だ(苦笑
しかしこのクロム、かなり悪辣というか口が立ち機先を制して現場の応急判断から外交交渉にはじまるグランドデザインに至るまで、状況の主導権を握り続けて自分で描いた図に世界を引きずり込むタイプの軍師にも見えるんだけれど、同時に双剣使いとしても際立った腕前を持ち、さらに器用貧乏的ではあるものの、あらゆる方面に手腕を見せる、とかなりの万能選手なんですが、結構性格が悪いというかイイ性格をしているのであんまり嫌味な感じはしないんですよね。これで性格までスマートで欠点なかったり、理想家や正義感たっぷりだと鼻につくものなんですが。やっぱり、軍師は腹黒でないとねえ。

ストーリー自体はオーソドックスな戦記モノ、と見せかけつつ、クロムの義妹であるリュリュの存在が微妙に違う色を見せてるんですよね。どうやら、人間の戦争の物語にとどまらない、神代と人の世の交錯が介在してきそうな予感。クロムたちの主人となるお姫様の勢力基盤がほぼ無いに等しく、現皇王と皇太子が能力的にも性格的にも存在的にもかなりヤバ目である、というのもなかなか面白い舞台設定なんじゃないでしょうか。平気であの国王に口出しして国政の現場にしゃしゃり出てくるクロムの図太さというか豪腕は、さり気なく凄いと思いました。逆に言うと、あそこでクロムにやらせる国王と皇太子も怖いなあと思うのですけれど。


内堀優一作品感想