夜姫と亡国の六姫士II (ファミ通文庫)

【夜姫と亡国の六姫士 2】 舞阪洸/こ~ちゃ ファミ通文庫

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茨の道も恐くはない。たとえ茨の棘にこの身をずたずたに切り裂かれようとも。

バイオレッタは新生ヨルゲン王国の樹立を宣言した。しかしその直後に――希望の光は失われてしまった。
あまりにも呆気ない最期に慟哭する剣姫士アイオリス。兵や住民に真実を明かせば今までの戦いの意味は失われ、復興への道のりは瓦解する。そしてなにより王女の念願を叶えることが出来なくなる。
そこでアイオリスは一つの決断を下した。
王女を黄泉の国から蘇らせる――すなわち、依り代をつかって王女の魂を召喚するのだ、と。
戦いと裏切りのハイ・ファンタジー、待望の第二巻!
うわぁ、そうきたか。あらすじを読んで、え?バイオレッタ復活するの? と拍子抜けしたのも束の間。事態は思わぬ展開へ。




一応、現状では「夜姫」の正体についてはアイオリスと侍女のティターニア、そしてスナイデルッラのわずか三名だけがその秘密を、というよりも彼女たち三人が「夜姫」を作り上げており、他の4人の姫士やヨルゲン王国の幹部は真実を知らないまま、アイオリスたちが語る「夜姫」の正体を信じている、という状態。
いや、もしかしたら「夜姫」となったティターニア当人すら、知らないまま「夜姫」を演じているのかもしれない。自身が、演じているという自覚なく。
本文中では明言はされていないものの、アイオリスと術をかけたというスナイデルッラの反応からして、反魂でバイオレッタの魂をティターニアに乗り移らせた、というのはどう考えても嘘でありそうなんですよね。しかし、ティターニアがバイオレッタを演じているにしては、あまりにバイオレッタの本物に真が迫りすぎている。スナイデルッラが何らかの術をティターニアにかけているのは間違いなさそうなんですが。幾らなんでも、ティターニアにはあそこまでバイオレッタを演じる才があったとは思えないですし。
となると、ある種の暗示系の術と考えるのが一番簡単なんだけれど。夜だけしか出現できない、というのもティターニアにそれだけ負担が生じる、と思えば納得できますし。
ぶっちゃけ、この「夜姫」が夜しか活動できない、ってこの時代の戦争だとかなりのハンデですよ。よほど近代になるまで、夜間における戦闘はまともに成立しなかったそうですし、それ以前に戦闘の時間帯を制限されるというのは、それだけ戦場のイニシアティブを失いかねない要素ですしね。
いや、それよりも本当に「夜姫」でリーザ公女と渡り合えるのか。とりあえず、夜姫としての初陣は見事なほど綺麗にハマりましたけれど、「夜姫」があくまでティターニアの記憶にあるバイオレッタ像を元にした模倣だったとしたら、引き出しにも限界があるでしょうし。それに、既にバイオレッタと「夜姫」の間にはその精神の在りようにおいて、若干の差異が出始めている。それも、ややも残虐な方向に。
バイオレッタの死を引き金にして、脳筋と思われたアイオリスが異様な覚醒をしてしまっていますけれど、バイオレッタの代わりを務められるようなものではないようですし、アイオリスが影で作戦を担う、というのはやはり無理でしょう。
そうでなくても、今回の策はアイオリスとスナイデルッラの間だけで作られたもの。他の姫士をも騙している、というのはいずれ大きな瑕疵になりかねない。「夜姫」の誕生はバイオレッタの死というヨルゲン王国軍の崩壊を招く最悪の展開を覆す起死回生の出来事でしたけれど、同時に「夜姫」の真実は安全装置のついていない爆弾のようなものであり、まさに内憂そのもの。そして、本物のバイオレッタを欠いたまま劣勢の勢力のママ、リーザと戦わなければならない外患。これは、相当のハードモードでありますよ。
いったいどんな着地の仕方を狙っているのかもわかりませんし、これは先の見通し立たなくて面白いなあ。

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