終末領域のネメシス (このライトノベルがすごい! 文庫)

【終末領域のネメシス】 吉野匠/木村樹崇 このライトノベルがすごい! 文庫

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なぜか住民が誰も市外へ出ようとしない「天野原市」。それに疑念を抱いた少年・遠野冬輝は、外部への脱出を試みるも、市境にて警備兵に捕らえられてしまう。連行された先で冬輝は、人類がウィルス生命体「ネメシス」との戦いの渦中にあること、市外はすでにウィルスに汚染されていることを知る。敵に対抗できるのは、ネメシスに感染しない「インフィニタス適合者」のみ。素質を見出された冬輝は、適合者の少年少女を集めて戦士として教育する施設「朝日ヶ丘学園」に転入させられる―。
少年少女が兵士として戦争に投入される話だと、大概素人同然の新兵たちは鬼のような下士官や上官によって地獄の訓練を施される。それこそ、死んだほうがマシだと思うような訓練訓練、ひたすら訓練である。場合によっては死にかねないようなケースすらあるそれは、傍から見ているぶんには同情を禁じ得ない。
だが、これは新兵たちが生き残る可能性をわずかでもあげるためのものであると捉えるなら、それは兵士を無駄に損耗しないための損得勘定であり、同時に愛情であるはずなのである。
勿論、そこには冷徹な計算があり、また場合によっては個々の俗悪な欲望を満たす暴力が横行する現場が存在することもあるのでしょう。でも、少なくともそこには、兵士を送り込む側の義務と責任が存在する。

翻って、この作品における教育施設「朝日ヶ丘学園」の実情を見てみると、ここの責任者たちは子どもたちを生き残らせるための努力を完全に放棄してしまっているようにしか見えないのである。それどころか。子どもたちを有益な消耗品として消費することに関してすら、まともに行おうとしている気配が見えない。
ただ、ウイルスに対抗できる要素を備えているから、とまともな訓練も教育も指示も何も与えないまま、わけが分からず混乱するばかりの子どもたちを戦場に放り込んで、とにかくなんとかしろ、と言い放つばかりで逃げることすら許さない。
馬鹿じゃないのか。本当に、度し難いバカさ加減である。ちゃんと訓練しろよ!! 敵のこととか戦い方とか教えろよ! 味方がどういう力を持っているのかすら教えないままで、何をどうしたらいいのかすら支持せず、適当にまともそうなやつをリーダーに指名して、丸投げして戦場にぽい。こいつら、頭がおかしいんじゃないだろうか、と本気で目を疑ってしまった。これで、その責任者たちが見るからに頭の悪い愚者だったり、小物だったりしたら、まだ理解できたのだけれど、自分たちは子どもたちを戦わせている理不尽さをわかっている、自分たちは許されざる悪である、とわきまえ冷徹に徹しているような顔をしている連中なんですよね。それが、余計に頭に来た。腹が立ちました。
子どもたちを生き残らせる準備も努力もせず辛い戦いが待っているのだからとちゃんとした訓練も教育も施さないまま自由に遊ばせ、子どもたちを駒として有益に消費する方策も計算も何もないまま何も考えずに怠ってただ放置して、まるで良識があり敢えて冷徹であるかのようにして罪を背負っているかのように振る舞うとか、これほど酷い無能な連中は見たことがありません。信じられない、尋常じゃない無能さです。貴様らの罪は、ただひたすら無能であることだよっ!! もう絶句でした。唖然でした。なにこいつらほんとに。

これなら、突然ウイルスが跋扈する世界に無手勝で放り込まれた方が、シチュエーションとして自由があるんじゃないだろうか。逆に、無能極まる既存の組織に囲われることによって生存確率がガリガリと削られているように見える。正直、この手の俺様な増長しまくった主人公は苦手なんだけれど、これくらい特別扱いの主人公が引っ張らないと生き残れないシチュですわ、これ。むしろ、この主人公ですら無茶ぶりの連続でSAN値がゴリゴリ減っているのを見せられると、環境のひどさは筆舌しがたいレベルである。
つまりこれって、人類はもうまともに組織を運営できないほど末期的に破綻しているレベルの終末ってことなんだろうか。あかんわこれ、もう無理、詰んでますね、終了のお知らせ。
これでウィルス側が無知性の存在だったら対抗の使用もあるのかもしれませんけれど、どうも人類と同レベルの知性体もいるようですし、考えることを放棄している人類が勝てるはずないじゃないですか。はい、やっぱり投了で。主人公一人が頑張ってもどうにかなる状況には見えないぞ、これ。