失恋探偵ももせ (2) (電撃文庫)

【失恋探偵ももせ 2】 岬鷺宮/Nardack 電撃文庫

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ミステリ研究会の部室を根城に行われる、学校非公認の探偵活動―失恋探偵。千代田百瀬と野々村九十九は、解散の危機を乗り越え、再び「失恋探偵」として恋に破れた人のために失恋の真実を調べる日々を送ることになった。しかし依頼人たちの失恋に触れるうち、一度は通じ合ったはずの気持ちに思わぬかたちで影が差しはじめて…。「恋は常に、痛みを伴います」「だとしても、俺たちは上手くやれるよ」両思いになった日に交わしたその言葉は、果たされるのか―。第19回電撃小説大賞“電撃文庫MAGAZINE賞”受賞の、叶わぬ恋の謎を紐解く学園青春“失恋”ミステリ、待望の第2弾!
第一話がまた昨今のSNNが当たり前に使われるようになった現実にありそうな話で。顔も合わせずネット上のやりとりだけで交友を深めて恋にまで発展する。直接対面しないまま、というのは相手の顔も立場も何も知らないのだから上っ面だけの浅い付き合いじゃないか、という見方もあるけれど、逆の見方として外見容貌だとかその人の置かれた環境など一切余分なものを介在させず、純粋に内面同士で繋がりあえる、という捉え方も出来るのではないでしょうか。SNNなんかない古来より、文通などによって心を通わせていったケースは枚挙に遑がないでしょうし。交流の仕方というのは、結局何が悪いというものではなく、その人同士の相性によるものなのではないでしょうか。
まあ、実際顔を合わせると想像と、或いは理想と全然違った、と途端に冷めてしまうケースもまた枚挙に遑がないでしょうけれど。
この第一話の場合だと、何というかもっと悪いというか身も蓋もない展開だったわけで、ある意味生々しいというかこんなもんだよなあ、と幻想に杭を打たれるというか。

初めての相思相愛に浮かれ上がっていた九十九にも、冷や汗を浴びせかける顛末だったのかもしれません。
そして、話は付き合いだしたばかりで一番幸せな時期である九十九と百瀬へと焦点があたっていきます。理想と現実の齟齬が、思い描いていた相手の姿と現実に見えてくる相手の姿とのブレが、ジリジリと浮かれた心を焼き焦がしていく時期へと、彼らは早速突入し出したのでありました。
ハッキリ言って、今回の一件はどう見ても九十九が悪いです。悪いんだけれど、あんまり責めたくはないですなあ。まだ高校生のガキであり、女の子と付き合うのは初めてで、同時に浮かれた挙句に常時テンパっているような精神状態。普段から、どこかテンション落ち着いてないところがあったのでしょう。平静だったなら、もう少し対応にも違いが出ていたはず。ただ、好きで好きでたまらない女の子のことばかり考えている状態で、平静であれというのは少々無理押しです。不運なことに、彼のアゲアゲでピーキーになった精神状態が負の方向に反転してしまった、というのが今回の理由の一端でしょう。そしてなにより、経験値のなさがさらに視点の偏向を煽り、年齢的に基づくと言ってもいいだろう未熟さが止めを刺す形になり、二人の仲にとんでもない亀裂が入ってしまうことになるのですが……。
人間、なかなか誠実になり、内心を吐き出すことは難しいです。好きな相手になら、尚更に自分を押し殺してしまうこともあるでしょう。二人の問題は、若いカップルには、いや若くなくても女性と男性の付き合いの中では普通によくあるケースなんじゃないでしょうか。思いのすれ違い、それはどれだけ好きあっていても起こってしまうものであり、それがすれ違いだと気づいても修復する事が出来るのは案外困難なのかもしれません。些細に見えるかもしれませんが、人間関係とは斯くのごとく繊細にして微妙なものなのでしょう。度々生まれるであろうこうした山を、超えられないカップルが脱落していくのが、男女交際の常なのかもしれません。
九十九の目から百瀬が嫌な娘に見えたように、読者視点からは九十九が狭量で神経質に見えたように、人の姿、在り方というのは定まらないものです。深く付き合えば付き合うほど、相手のことを見つめれば見つめるほど、沢山の情報が入力され、それに対する解釈を要求され、結果として様々な実像を目の当たりにすることになります。そんないろんな像を、それでも許容し飲み込み受け入れられたら、人間関係ってうまくいくのかな。
一度山を超えた二人ですけれど、さてこのままどんな姿を目の当たりにしても気にしないでいられるくらい自然になるまで仲が深まり馴染むのか、はたまたまたぞろ大きな山が、失恋という一つの境を跨ぎ超えないと行けないような出来事が二人を見舞うのか。
等身大の少年少女の恋物語だけに、余計に興味がつのります。

1巻感想