魔法少女育成計画 limited (前) (このライトノベルがすごい! 文庫)

【魔法少女育成計画 limited(前)】 遠藤浅蜊/マルイノ このライトノベルがすごい! 文庫

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「あなた達は魔法の才能を持っているのよ」放課後の理科準備室に現れた妖精は、そう告げると、室内にいた女子中学生達を魔法少女へと変えてしまった。「魔法少女になって、悪い魔法使いからわたしを助けて!」まるでマンガやアニメのような展開に、色めき立つ少女達。誕生したばかりの七人の魔法少女は、妖精に協力することを約束するが…。話題のマジカルサスペンスバトル、ついに第三幕スタート!
バトルロワイヤルにはじまり、続いてはデス・ゲーム。そして今度はリアル鬼ごっこ! と見せかけて、これってモロにスパイスリラーじゃないっすか!! 魔法少女を某国のスパイとか工作員に置き換えたら、まんまスパイ・サスペンスの出来上がりである。
長年行ってきた不正が発覚し逃亡した犯罪者を追いかけるために派遣された捜査官。しかし、人間界に逃げ込んだその犯罪者たちを追うために、外務部や人事部など他のセクションから「協力者」が送り込まれてくる。そして、犯罪者ごと街は封鎖され、脱出不可能になってしまう。あからさまに怪しげなこの干渉の意味は何なのか。逃げている犯罪者は、どこかの部署の重大な秘密を握っているのか、はたまたこの逃亡劇は初めから「裏」の意図があったのか。
セクショナリズムからくる疑心暗鬼に手足を縛られながら、ぎこちない協力体制で犯罪者たちを追う魔法の国のエージェントたち。一方、逃げた犯罪者は事情を知らぬ無自覚な魔法少女を大量に生み出し、正義の魔法少女のつもりの彼女らを駒とし盾として追撃者への反撃を開始。さらに、魔法の国の反体制勢力が刑務所から伝説的な超危険人物を脱獄させ、その一団は第三勢力としてこの封鎖された街へと介入してきたのであった。
とまあ、今回の粗筋をぶっちゃけてしまうと、まさにこんな感じである。同じ魔法の国内部でも、セクションによってすさまじい駆け引きとテリトリー争いがあり、泥沼の足の引っ張り合いが繰り広げられている様子が伺える。場合によっては、謀略・陰謀によって死人もダバダバ出ていそうな雰囲気。さながら、冷戦中の旧ソ連のセクショナリズムもかくや、という有り様である。魔法の国とやら、相当のブラック国家じゃあるまいか。
そんな中で、無茶しがちな友人スノーホワイトを援護するため、組織の中で出世しようとしているのが、1巻より久々に登場のリップルさん。あの社会不適合者だった彼女が、今や真面目に研修を受ける社会人である。立ち居振る舞いはかつての相棒に倣っているというのだから、今は亡き彼女の流星のような生き様は相棒によって受け継がれている、そう思えば、少しでも心慰められようというものだ。あれから随分と魔法少女は死んだけれど、その中でも彼女の死は未だに痛みを伴い忘れられない傷跡だけに。

さて、そんな様々な生き様を示している魔法少女たちの中には組織の猟犬として働くものや、それこそサラリーマンとして組織の歯車となって生活している者もいる。給料があがればテンションあがり、ちょっとオシャレに凝ってみたり、とそこいらのOLと変わらない生き方をしている魔法少女も、魔法少女を仕事、魔法の国の公務員と考えれば存在して然るべきもの。専任魔法少女として戦闘方面とはあんまりかかわらずに生きてきた7753も、そんなOL魔法使いの一人である。それが、何の因果か、スパイアクションさながらの、セクション同士の駆け引きの結果生まれた汚泥のような現場に、偶然かそれとも誰かに意図によるものか、研修対象のリップルと共に放り込まれてしまったのでした。ある意味、一番可哀想な人である。
とはいえ、直属の上司の誘導もあってか、現状彼女が一番イニシアティブを握っているのは面白いところ。7753当人は何が何だかさっぱりわからずまったく埒外に置かれてしまっているのに、気がつけば事態のど真ん中である。
この直属の上司という人も、以前登場した人なんだろうか。どうも、かなりのやり手なのは間違いなさそうなんだが。

驚くべきことに、前編では誰も死なない(実際は一人、合流前に捜査員の一人が殺されているが)まま次回に続いてしまったが、伝説の凶悪犯罪者たちの介入に加えて、新規魔法少女たちの中にどうやら黒幕が混じっているようで、裏切り者は、スパイは誰だ!? という要素もあり、さてこれは一気に雪崩を打って血が流れそうな予感。普通なら7753とリップルは安全枠に思えるんだけれど、この作品の場合そういう既存の概念は捨てて掛かった方が良さそうな気配もあるわけで、希少な前作までの生き残りであるリップルだってそうそう油断は出来ないぞ。意外とハリウッド映画だと、前作の生き残りがサクサクと死んでしまうんですけどね。あれは、でも萎えるんだよなあ(苦笑

シリーズ感想