楽聖少女 (4) (電撃文庫)

【楽聖少女 4】 杉井光/岸田メル 電撃文庫

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束の間の平和が訪れる中、ルゥがいよいよ取りかかったのは、歴史的な二大交響曲“運命”と“田園”。しかしその初演にまたしても教会が言いがかりをつけてくる。ただの難癖に終わるかと思われていた教会の妨害工作は、ナポレオンとその敵対勢力の陰謀の絡み合いからやがて大事件に発展し、予測不能の悲劇は悪魔メフィをも巻き込む。死地に追い込まれた僕がついに直面するのは、この奇妙な世界を支配する残酷な“運命”そのもの―。急転する絢爛ゴシック・ファンタジー、第4弾!
あれ? ルゥの外見年齢ってそんなに幼かったの? それだと少女というよりも幼女に近いじゃん! いや、魔法少女が小学生からなのを考えると、12,3歳は少女の範囲か。いや、それでもアウトだよ。なに少女と同棲してるんだよ、このファウストは! ロリコン! 超ロリコン!! あ、でも神様のメモ帳のアリスも外見はだいたいおんなじくらいなのか。だとしたらOK? ……いや、アウトだろ。両方アウトだろ! いやだがしかし、外見はあくまで外見であって実年齢とか生きている年数とか精神年齢を考えると、合法なのか。合法だよな。それ以前に、法なんてこの世界には存在しない!!
無意識に、ルゥの年齢はもうちょっと上だと思っていたので、ちと取り乱してしまいました。でも、今回メフィが怒涛の勢いでヒロイン紛いの扱いになってきたお陰で、見た目的にはユキとメフィ夫婦に娘のルゥ、みたいな家族感になってきてしまったような……。いやだって、12歳だぜ。アウトだろう。
それにしても、メフィはユキよりだとはいえあくまで悪魔であって真意を悟らせない妖艶で惑いを誘う言動で敵味方の境界を浮遊してきたと思うんだけれど、今回の行動を見ていると彼女、もう自分の欲望よりもユキたちを優先してしまってるんですよね。これって、もう悪魔として逸脱してしまっているように見える。これじゃあ、愛と献身に身を捧げる天使みたいじゃないか。おのれ、こんなにエロい天使があってたまるか。
ユキが執行した大魔術もまた、メフィの在りようをそちらに固定してしまったんじゃないだろうか。実際はどうあれ、現実を彼の思う形に照らしあわせて実現してしまったわけですから。その定義された世界では、メフィは自らを犠牲にして愛するものたちを救おうとした者として観測されてしまった事になりますし。
しかし、ここまでデタラメが融通をきかせるとなると、この世界自体が相当に柔らかく芯を持たないことになる。ここまで自在に変容がかなってしまうということは、異世界というよりも箱庭みたいな限定世界なのか。それも、容易に改変……いや、上書き可能な書き換えが可能となると、これは誰かの執筆によって造られた、或いは現在進行形で造られつつある創作世界みたいにも思える。ナポレオンは、その中で一番割りを食ってしまっているキャストにあたるのかもしれない。
相変わらず、音楽と神学的見地から当時の欧州をおもちゃ箱みたいにして遊びまくってる作品だけれど、その軽佻浮薄さに安心してしまうのは、何とも面映い。慣れ親しんでしまった、とも言える。
ルゥが、自分もまた本物のベートーベンではないと自覚した事が、ルゥ自身にもユキ自身にもちょっとした安定感をもたらしていて、二人の親密さにブレがなくなったのも良い方に回ってるんじゃなかろうか。そこに、メフィもまたユキとルウの二人に密接に寄り添ってきた感がこの巻で強まってきたので、クライマックスに向かう上での身内の地固めとしては十分に進展があったんじゃないだろうか。もっとも、メフィは近づきすぎた事で逆にバランスを崩しかねない危うさを抱え始めた気もするけれど、そんな狭間に入り込みつつあるヒロインというのはまた愛しいものじゃないですか。大いにアリで。

杉井作品感想