瑠璃色にボケた日常4 (MF文庫J)

【瑠璃色にボケた日常 4】 伊達康/えれっと MF文庫J

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瑠璃がボケなくなった!?
突然の事態に衝撃を受ける孝巳。だが、翠や柘榴に聞けば、これは霊能者特有の病気、霊虐と言うらしい。しばらくすれば治るというが、霊力が低下しまるで普通の女子高生のような言動をする瑠璃に、孝巳はどうも調子が出ない。
翠「まさか高校生にもなって霊瘧になるなんて…そういえばこの子、まだ下の毛も生えてないし…」
瑠璃「翠ちゃん!それ内緒だって言ったのに!」
孝巳「…」
そんなとき、孝巳の前に、怨霊を人につける“与霊師”、美濃部春喜が現れる。瑠璃を探しているという美濃部に危険を感じた孝巳は、彼女を守るべく動き出すが―。瑠璃色にボケた日常は戻ってくるのか!?美少女ツッコミ系バトコメ、第4弾!
なんか、翠まで普通にしもネタ使うようになっちゃってるんですけどっ。あかん、柘榴の影響、地味に受けてる!? だけれどこの作品、実はしもネタ絡みが一番漫才、掛け合いネタとして面白かったりするので洒落にならない。孝巳のツッコミが必死系になってしまうから、という理由もあるのかもしれないけれど、甚振り系の柘榴のしもネタに、翠のテンパリ系しもネタが相乗的に掛け合わされることで、笑いの効果を増しましていたのは間違いない。
それ以前に、普通の漫才ネタからして、柘榴と翠が加わったことで面白くなってるんですよね。最初の頃はネタとしてみると巧いけれど、巧いだけで別に笑いどころは何処にもない、という代物だったんだけれど、今回なんか冒頭の漫才の練習風景見てると、普通に面白かったもんなあ。ちゃんと上達の様子が伺えるのが、なんともかんとも。これは瑠璃たちの漫才レベルがあがったというよりも、単純に作者が熟れてきただけなのでしょうが。
その証拠、というわけでもないんですけれど、四巻にまで至ったこのシリーズ、本当に面白くなりました。この手のご町内限定の地元の街を舞台にした異能モノという類の中では、MF文庫Jの中でも一番好きだったかも。うん、話の見せ方、キャラの立たせ方の上手さと同時に、ホントに登場人物や作品の雰囲気が大好きな作品でした。それだけに、4巻で終わってしまったのが惜しくて惜しくて。いや、すでに2巻あたりからシリーズ継続については綱渡りな感じがしてましたし、正直三巻で締められるんじゃないかと覚悟はしていたので、四巻まで出たのは御の字だったのかもしれませんけれど、それでもやっぱり自分、この作品好きだったんだなあと終わる段になって改めて実感した次第。
笑い、というポイントに根ざしたコミカルさと、それに相反するような霊を相手にする世界のおどろおどろしさと重さが見事に掛け合わさった、特筆すべき作品でした。少女たちが背負った重責や業、彼女たちと関わる孝巳の覚悟が逆に「笑い」という要素を引き立たせ、「笑い」という要素が物語の闇や登場人物の必死さをより際立たせる、そんな相反するはずの双方の要素がうまく絡み合って作品そのものに味わい深さをもたらしていた気がします。
三人娘の仲の良さも、素敵でしたね。ベタベタした友情ではなく、そっけないけど実は、というものでもなく、一人ひとりが立派に自立していながら、苦境に陥れば躊躇いなく全霊を掛けて支えあう。尊重しあっている友情が、見ていても眩しかったです。孝巳も、眩しかったんじゃないかな、これ。三人共、この業界では禍々しいくらいの二つ名を負わされ、一廉の霊能者として扱われている身であり、三人共それに相応しい立派な振る舞い、或いは凄味や強かさを備え持つ大した少女たちなのですけれど、三人寄ると何だかんだと普通に仲良いのも見ていてニマニマしてしまう要素でした。特に翠と瑠璃は幼馴染というのもあるのでしょうけれど、自然な距離感が凄く好きでしたね。
でも、そんな関係も一度は破綻していて、孝巳が介在することで再び繋がることが出来たというのですから、感慨深い。柘榴がここに加わることが出来たのも、孝巳が頑張った結果ですしね。彼は、もともと単なる一般人であり、三巻までもちょっとずつ霊術は覚えていたものの、素人に近くて単純な戦闘能力という意味では三人娘に遥かに及ばず、殆ど役立たずに近い立場だったはずなのですけれど……なんちゅうか、此処ぞという時の抑えるポイントの見極め方といい、男前な心意気といい、無力なはずなのに頼りがいのある主人公でした。力の強弱を抜きにして、肝心なときに心や魂を預けられるような気合の入った男の子だったんですよね。だからこそ、誰に頼ることもせずに一人で立てる三人娘があれだけ慕い、見る目厳しそうな翠の家人がぞっこん見込んでしまったのでしょう。
特に秀でた力を持たない段階でこれだけ頼もしかった主人公です、これが覚醒した日にはどれほどのものになるか。その可能性を垣間見ることになったのが、今回の孝巳の目覚めっぷりでした。覚醒と言っても、これまでコツコツと修練を重ね構築してきたものが、ちょっとしたコツを掴んだことで使い方をモノにした、という感じのものだったのですけれど、柘榴や翠が瞠目するほどの可能性で、思わずこっちまでワクワクしてしまうほど。いやあ、こいつホントにコチラの業界でも大人物になれるんじゃないだろうか。
翠がテンパリながら、婿に婿に、と口走ってしまうのもわかるわかる(笑

今回はあの傍若な瑠璃が、霊能者特有の疾病でメンタル普通の可愛い女の子になってしまう、というアクシデントが中心に展開するのですけれど、瑠璃はやっぱりあの自由にマイペースの方が好きだなあ。ああいうキャラだからこそ、孝巳や翠にデレるのが強力なインパクトになるわけで。孝巳たちが、迷惑極まるけれど普段の瑠璃の方がいい、と言うのに何度もウンウンと頷きながら読んでいました。三人娘のトリオで居る時も、ルリがいつもの彼女でないとなんか調子でないですもんね。

やっぱり、この四人のボケツッコミとしもネタ三昧と微笑ましいラブコメはいつまでも見ていたかったなあ、とエンドロールに寂しい気持ちになってしまいました。凄く好きなシリーズでしたけれど、これはもう気持ちを切り替え、作者さんの新作に期待したいです。次はもっと大長編で、おねがいしますよ。

シリーズ感想