クロックワーク・プラネット2 (講談社ラノベ文庫)

【クロックワーク・プラネット 2】 榎宮祐・暇奈椿/茨乃 講談社ラノベ文庫

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死んだ地球のすべてが、時計仕掛けで再現・再構築された世界――“時計仕掛けの惑星”。京都パージ未遂事件から三週間後、マリーのもとに謎の通信が入る。ナオトたちは発信源である区画・三重に向かうが、そこは全てが停止したゴーストタウンと化していた! 都市最深部に潜入した彼らが見たのは、条約違反の“巨大兵器”と幼い少女の自動人形――『永遠』を体現する最強のInitial-Y――。
「おねえちゃん――わたしを、壊して――」
……世界は修正を許さない。破綻した歯車は軋みを上げて螺子狂い、少女の悲嘆をすり潰してなお加速する――――!!
榎宮祐×暇奈椿×茨乃が紡ぐオーバーホール・ファンタジー第二弾!
ああ、あの老軍人の憤りはちょっと理解できるかもしれない。理不尽な怒りかもしれないけれど、どれだけ手を尽くしながらも何も変えられず何も守れず、それでも耐えながら抗ってきた生涯を送ってきた人にとっては、ナオトの在り方の方が理不尽だと思ってしまうものなんじゃなかろうか。何も考えず好き勝手しながら、何も堪えず我慢せず目の前の興味のある事だけに傾倒しながら、その正しさを疑いもしない。
もちろん、ナオトの立場からすると、彼にとって儘ならないものは沢山あったわけで、最近になってようやく自分の好きなものにかまけるようになれたばかり、なんだろうけれど……。
ずっと堪え続けてきた人にとって、世界に絶望していた人にとって、周りも世界も、世界を覆い尽くす絶望すら一顧だにせずにいる存在は、かつて抱いた希望も今抱いている絶望も、自分を取り巻く世界すべてを全否定、全無視されているような、許せなさを抱いたのか。
ナオトやマリーといった天才だけの視点だけではなく、彼らについていくハルダーの視点だけで、常人の観点は補填していると思っていたのだけれど、まさかこういう限界を迎えた俗人の立場から天才の立つ境地に牙を剥いていくアプローチを仕掛けてくるとは思わなかった。
うん、実際マリーのような天才には共感を抱けても、ナオトってどうしても見ている世界が極々小さく狭くって、果たしてマリーやハルダーたちについてすらどれだけ視界に入れているか怪しく思える時すらあるのに、その彼が揺るがぬ中核となって壊れかけた世界の深淵にガリガリと食い込んで行くというのは、1巻の時にはあまり感じなかった事だけれど、理不尽な不快感が痛快さの中に微細に混じり込んで来てたんですよね。
あの老人の憤怒は、そうしたナオトへの理不尽な違和感への払拭に繋がる展開になってくれるのでは、とちと期待してしまう。
何にせよ、ナオトの精神構造が微妙なところで得体が知れなく不気味なお陰で、同じ天才でも、同じ無軌道暴走娘であっても大義と正義感を持ち、涙を流し、艱難辛苦汝を玉にすを地で行っているマリーの方がやっぱり一端の主人公をやってるんですよね。今回だって、七転八倒しながら、自分の行った行為を顧みて、後悔し苦しんでのたうち回った末に、涙を拭って歯を食いしばって立ち上がり、ボロボロになっても不屈の闘志で前に進み続けようという姿は、心が揺さぶられるほど気高く眩しく格好の良い在り方でしたし、惚れ惚れとするほどヒーローしていましたから。やっぱり、共感を得るという意味では圧倒的にマリーなんですよね。
個人的には、彼女にはヒーローであると同時にもう少しヒロインでもあって欲しいのですけれど、ナオトのそっけなさというか道のハズレっぷりがそれを許してくれないのがもどかしいやら、果たして仲間として心通じあえているのかすら不安になる次第。マリーの片思い、ではないのでしょうけれど、一緒に行動しながらもどこかズレている感覚がつきまとってるんですよね。果たして、ナオトはマリーに対して「価値」を感じているのか。彼女がやろうとしていることに「意味」を感じているのか。これだと、むしろリューズやアンクルの方がわかりやすいくらい、とすら思えてくる。さて、彼に付き従うリューズにはコチラには見えないナオトの進む道が見えているのか。
いずれにしても、次回にはその答えを、不安を払拭して欲しいものであります。

1巻感想