猫耳天使と恋するリンゴ (MF文庫J)

【猫耳天使と恋するリンゴ】 花間燈/榎本ひな MF文庫J

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高校2年生の一樹が食べた林檎は、どんな願いも叶える『天界の林檎』だった。
林檎を食べたことで悪魔に命を狙われることになった一樹は、天界から舞い降りた天使・ミントと協力して『林檎の片割れ』を捜索することになる。悪魔の襲撃、天界の林檎に隠された秘密、次々に迫りくる苦難を乗り越えながら、片割れを手に入れるために奔走する一樹。そんな中、幼馴染の雪姫が急に積極的になってしまって……!?
第9回MF文庫Jライトノベル新人賞<佳作>受賞作品。恋するリンゴ達と猫耳天使が織り成すラブコメディ。ふんわりまどろむ極上の果実を召しあがれ。

ヒロインの体の一部に浮き出た印を見つけるために、あれやこれやと四苦八苦しながらヒロインの素肌を見ようとするドタバタラブコメはこれまでもいくつもあったと思うけれど、最終的に真正面から小細工抜きにヒロインに全部脱げ! そして全部見せて! と宣う主人公は多分ハジメてみたよ!! いや、一応それまでも薄着を促したりお一緒にプール行って水着姿を鑑賞したりと、いきなりラストステージに突入はしてないんだけれど、もうあとは全部脱がすしか無いという局面に至って、こっそりお風呂を覗き見るとか本人が気づかないように剥いて調べる、という卑怯な方法をとらずに、真っ向から脱いで、と迫った一樹少年は主人公として尊敬に値する。よくやった! ぼんやりしているくらい温厚な人柄なくせに、ヘタレとは程遠い果敢さである。しかも、家に帰ってから然るべきタイミングで、とモジモヂと恥ずかしがりながらも実質OKですよ、サインを出しまくってる彼女に対して、いやダメここで、と逃げることを許さない一樹少年。鬼畜か! 世間のヘタレ主人公に爪の垢を煎じて飲めと言いたくなるような迫りっぷりである。すげえ。
まあここで邪魔が入っちゃうのがぬるいラブコメの典型なんですが……ふわふわだけれど、そういうお為ごかしとは程遠いのがこの作品。
そして本当に脱いじゃう雪姫。舐めるように隅々まで鑑賞し倒す一樹。……この野郎w

林檎を食べたせいで恋心を喪ってしまった一樹だけど、傍から見ていての雪姫を大事に、大切に、宝物のように扱う様子は、とても感情の一部を欠損したようには見えない。もう半分の林檎のせいで、積極的に自分の気持ちをあらわすようになった雪姫との関係は、見ていて気恥ずかしくなるような甘やかでふわふわとした空気に満ち溢れていて、ラブ真っ盛りである。
恋心を失っても、愛情は失われないということだったのか。恋と愛の定義の線引は難しいけれど、雪姫に触れる一樹の指や言葉には、彼女への愛や慈しみが行き渡っていたように思う。恋のような激しい物がない分、安心感すらあったかもしれない。
それでも、これだけ彼女のことを大切に思っているのに、ポッカリと穴のあいたように恋という心が失われてしまっていることは、もどかしさと苦しさに一樹を苛んで行く。ならば、恋とは相手を求める力なのか。でも、求めたいと求める時点で既に求めてはいるんですよね。彼女をほしいと思っている。不可思議な堂々巡りだけれど、あるはずなのに無いモノを求めるというのは、その渇望はどこか理解できる。
どれだけ、失われたモノは彼にとって大きく埋めがたいものだったのだろう。失って初めてその存在に気づく、という事でもあるのだろう。
いずれにしても、これだけお互いにべた惚れだと誰にも割って入る余地はないですよねえ、と言いたいところなんだけれど、猫耳天使のミントの健気さが圧倒的な存在感をもって食い込んでくる。彼女に関しては、恋愛ではなく親愛に近い感情なんだと思うんだけれど、放っておけない感は雪姫に負けず劣らずだからなあ。カップルとしてはこの幼馴染カップルは譲れないんだけれど、ミントについても一人の女の子としてキチンと成り立たせた上で送り出して上げてほしい、というふうに思うということは妹ポジション、という事なのかしら。
あまりにも一樹と雪姫がお似合いだっただけに、この先変に他のヒロインを介在させるのはやめて欲しいなあ。一樹の請け負った負債からして、他の女の子と接触を持たないといけないのは決定的みたいだけれど……雪姫が泣くような事はしないでほしい。ってか、この一樹が雪姫が泣くようなことはとてもするような奴に見えないので、むしろ他のヒロインが泣くんじゃないのか、これw