ケモノガリ 7 (ガガガ文庫)

【ケモノガリ 7】 東出祐一郎/品川宏樹 ガガガ文庫

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――旅は終わり、終わりが始まる。

――終わりにしよう、と誰かが言った。
――まだまだ終わらぬ、と誰かが言った。
――終わらせる、と誰かが言った。
――続けさせる、と誰かが言った。
――殺してやる、と誰かが言った。
――殺されない、と誰かが応じた。
――戦おう、と誰かが言った。
――戦う訳がない、と誰かが言った。
――何故戦わぬ、と誰かが問うた。
――僕は答えた。
――お前などと戦うものか。お前は殺される側なのだ。

かくして、終わりが始まった。


天才ハッカー・シャテアの解析によりクラブの本拠地である島を発見する。その島は対空ミサイルを備えるなど厳重な武装警備状態で準備を要した。
上陸の前夜、楼樹たちは思い思いに過ごす。
一匹は姉との因縁を、一人は計画を円滑にするための作戦を、一人は思い出を忘れ人間らしさを消していく――そうしなくては勝つことはできない
から。それぞれが決意を固め、潜水艦に乗り込み決戦の地へと向かう……。

残る“聖父”はあと四人! 楼樹の果てなき戦いはついに最終局面へ!!
これが【ケモノガリ】ではなく、ケモナーガリだったなら、もっとファンシーなお話になったのかしら、などと頭の脳裏によぎったり。どうせ、エロゲになるんじゃないのかって? それもまた然り。まあイヌガミの取り扱いが非常に気になるところだけれど。

さて、本編はというとついに最終決戦ということで、楼樹の独壇場になるのかと思ったらば、敵の本拠地に攻め入るのは楼樹とイヌガミ、そしてシャーリーのいつもの三人だけではなく、なんとCIAから十人の最強の工作員が参加することに。いつものように殲滅戦を繰り広げる楼樹たちの一方で、シャーリーと凄腕エージェントたちの決死の潜入工作戦が行われるというまさかの展開。このエージェントたちがまたみんな個性的でカッコいいのなんの、というこっちサイドもコッチサイドで熱いやら燃えるやら、もう片方の主人公になってます。なんという冒険小説。アパッチ最強!!
CIAの工作員でありながら、クラブの非道を前にして、国のためではなくただ人としてやらねばならない、と決意した男女たちの決死行。それ以前に、このクラブとの決戦に挑むべきかがCIA内部で多数決によって決められるんだけれど、これがまた熱かったんだなあ。会議上では冷静に、クラブと敵対することへの損得を分析し話し合いながらも、結論として導き出されたものは……。
この作品、人間という存在の下衆っぷり、救われなさを「クラブ」という組織の存在だけでほぼオーラスに浮き彫りにしているにも関わらず、常に「人間って捨てたもんじゃない」というのを示し続けているお話でもあるんですよね。ケモノガリとして人の身から逸脱し、ついには人間の枠組みからこぼれ落ちようとしている楼樹だけれど、彼は常に憤怒し続けながらもついに絶望に陥ることはなかった。それは、常に戦う先々で人の道、人の心、人の誇りを守り戦おうとする人々と出会い続けてきたからなのでしょう。殺して殺して殺し続けながら、彼の血塗られた道には何も残らぬわけではなく、希望が残り、未来が残り、彼に続いて武器を手に取り戦おうとする「人間」たちが続いていこうとしています。立ちふさがる獣の群れに、抗う人の集いが動こうとしている。
その先兵として、切先として、敵の本拠地に乗り込む楼樹たち。うむむ、長い戦いも、まさかこうも世界を動かす熱い物語になるとはなあ。
CIAも去ることながら、この法王猊下の熱さはちょっとした見ものです。これほどの人物が、世界最大の宗教の長に就いて、味方になってくれることほど頼もしい事はないよなあ。そんな法王さまの方にも妙な情報が行っていたようだけれど、あれはなんだったんだろう。今回は明らかにならなかったけれど、最終回に繋がる大きな伏線のようだ。

さて、楼樹の戦いは量産型のエンターテイナーたちとの殺し合いによって幕を開ける。おなじみというべきか、復活怪人はヒーロー物の定番だったような気がするんだけれど、いやはやそこまで自分を改造してまで殺しを楽しみたいものですかねえ。もう、自分の名残が全然ないじゃないですか。劣化型の量産怪人と成り果てて、万能感なんて得られるものかしら。まあさくさくっとやられていく劣化怪人はモブとして、今回のメインはやはり最強最悪の兵士ジャック。問答無用の人間を明らかに越えてしまったスペックを持ち、何より心が残虐に歪みきった最凶の悪魔。あまりに品性も下劣すぎて、かつて戦ったロビンフッドや、ククリナイフを譲ってくれた戦士と比べるとどうしても怖さを感じないのだけれど、しかし強さに関してはどうしようもなく一級品。そんな相手を、どう殺すのか……って、こいつって明らかに最高の殺され役を与えられたキャラだよなあ、うん。カタルシス
そして、楼樹の同士であり戦友であった男の最後の戦い。自らの最後の戦いを果たし終え、自分そのものを失ってもなお友のもとに駆け続けた、その姿と最期にはただただ涙するばかり。演出も最高でした。
シャーリーについてはかなりビックリしましたけれど。いや、彼女がそういうつもりだったとは。気持ちとしてはわからんでもないんですが、これまで全く素振りも見せてなかったもんなあ。流石はエージェント、或いは流石は大人の女性というべきでしょうか。翻って、少女でありながらもうひとつの怪物的な存在感を見せ始めているのがあやな嬢。この娘も、いい加減一般人とは言いがたいメンタルですよねえ。覚悟を決めているとか、そういう範疇とは思えない。幼い頃からその片鱗を見せていた楼樹と育ち、あの事件を経ることで彼女もまた決定的に変質したのか。でも、これくらいでなければ、多少覚悟を決めた程度では楼樹を引き戻せるとは思えないので、彼女には徹底的に人という怪物になって貰わないと仕方ないのかもしれない。
いずれにしても、決着はすぐそこ。思いの外長い旅になりましたが、こうやって決着がつこうとしているのは何とも感慨深いです。

シリーズ感想