翼の帰る処 4 ―時の階梯― 下

【翼の帰る処 4.時の階梯(下)】 妹尾ゆふ子/ことき 幻冬舎

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“黒狼公”をキーナンに譲り、待望の隠居生活に突入した過去視の力を持つヤエト。しかし、残念ながら隠居とはほど遠い仕事量に忙殺される日々を送っていた。そんな中、ターンの預言者・ウィナエに導かれ、ヤエトはジェイサルドらと共に世界の罅を塞ぐ手がかりを得るため、砂漠の深部・シンリールへと赴く。数ヵ月後、ようやく都へと戻ったヤエトだったが、都では第七皇子が反旗を翻し、まさに戦いの火蓋が切られようとしていて―。
確か、ジェイサルドの方が御老体のはずだったんだけれど、ヤエトよりもどんどん若返ってる気がするなあ、この人。実際、順調に人の枠からハズレていってしまっているようで。以前、まじない的な意味で彼にヤエトが新しい名前をあげていたんだけれど、やっぱりこの剣士はどうやったってジェイサルド以外の何者でもなくって、違和感ばかりだなあと思っていたのですが、どうやら世界の認識の方もどう意見だったようで、あっさり無効判定をくだされたのには納得すると同時に焦りました。いやじゃあどうすんねん!! ある意味解決法は力押し、と言ってもいいものだったのですけれど、確かにさすがに最初からこの方法を取るのは憚られますよね。もう何も考えてないのと変わりませんし。だから、対処法として新しい名前を与えるというのは間違ってはいなかったんでしょうけれど、ここまで効果がないとはなあ。本当に力押しで何とかしてしまうあたり、ヤエトとジェイサルドの主従は良いコンビですw
未来を知っているという事はすなわち未来に抱くべき希望を最初から失っているのと同じ、というのはよくある話で、未来視の能力者は運命の操り人形と化してしまうもの。ヤエトも当初はそんな風に預言者ウィエナのことを見て嫌悪、とまでは言わないまでも忌避感を抱いていたものですが、この旅先で垣間見せるウィエナの人間らしい顔に段々とほだされていくことに。ヤエトって何だかんだと愚痴や皮肉の対象にしてしまう相手ほど、執心してしまう傾向がある気がするなあ。
すべてが明かされてみると、ウィエナは未来を知っていたからこそその未来が自分の前に訪れることを楽しみに待っていたわけで、その先に自分の身に何が訪れるのかも理解していながら、あんなに少女のように心浮き立たせて、未来の光景を待ちわびていた姿は、何とも切なく、でも心が温かくなるものでした。彼女は、自分が見た未来の光景に縛られ、人生のすべてを捧げ、しかしその光景をこそ生涯の心の支えとして過ごし、運命の操り人形ではなく自分の意志で目にした未来を掴みとるために「生きて」きた、と考えれば、満足した人生だったのでしょうか。ヤエトからすれば、言葉にもならないやるせなさでしょうけれど。

それにしても、よく倒れる御仁である。前回馬車馬のように働け、と感想で口走ったことに反省。まさか本当に死にかけるとは。ご隠居、働いてるか死んでるかのどっちかで、全然余生を過ごすって感じじゃありませんよ? まあ、これだけ遠出して砂漠の真ん中にまで足を運んだ以上、まずぶっ倒れるだろうなあとは自他ともに認める展開でしたけれど、それにしても今回は本気で死にかけてたんじゃありません? 期間が半端なかったんですが。姫様も、どれだけ心配したか想像するだに胃が痛くなりそうです。もうそろそろ姫様の方も悟りの境地に入りそうな気がする。一方で回を重ねるごとにはっちゃけて行くのが皇妹殿下。今回最初から最後まで大はしゃぎじゃないですか、これ? なんかどえらいもん、手の内に入れてらっしゃいますし。
ヤエトが倒れている間に状況はガンガン進展していき、あまりの目まぐるしさに目を白黒。姫様はヤエトは何もやってないことなんてないぞ、と言ってくれてますけれど、でもやっぱり考えてみると倒れてばっかりであんまり何にもしてませんよ、ご隠居さま。
なんかラスト、開き直ったのかヤエトってばなんとでも解釈できそうな事を内心で口走っているのですけれど、この人って偶にそれまで居た立ち位置から唐突に三段飛ばしぐらいで飛躍した所に着地するところがあるので、特に姫様関係の場合。なにかしら、これ遠回しに物凄いこと考えてないか? 心配である、うははは。

シリーズ感想