穢れ聖者のエク・セ・レスタ (MF文庫J)

【穢れ聖者のエク・セ・レスタ】 新見聖/minoa(ニトロプラス) MF文庫J

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天より与えられし無双の兵器「輅機」の力で世界征服を目論むフィガロ魔皇国。その圧倒的な武力を前に祖国を滅ぼされた亡国の皇子シリュウ・スィグアは、魔皇国の侵略戦争の最前線に立たされながらも、一切の戦功を認められない不遇の日々を送っていた。復讐に燃えるシリュウ。そんな彼の野望を見抜いたのは“聖女”と称えられる義妹エトラだった。「さあ、お義兄様、共に末短き未来を歩んでいきましょう」―その復讐に幸いと災いのあらんことを願う兄妹が“神代の詩を”詠う刻、絶望へとつながる叛逆の扉が開かれた。新時代の幕開けを告げるリベリオン・サーガ、降臨!
ド・ストライク キターーーッ!!
あかんこれ、こういう破滅系のお話、もろツボなんですよ。国を、人を、世界を救う物語ではなく、復讐の為に自らもろとも滅ぼすお話。ここで自分がツボにハマるのは、一人孤独に戦って滅ぶのではなく、傍らに運命を共にしてくれる相手が居てくれるお話。お互いを何よりも慈しみ愛しあいながら、手に手を取り合って一緒に破滅しようとするお話。こう定義すると誤解を招くかもしれないけれど、広義の心中物捉えてもいいかもしれない。ただ、この二人の場合は自分たちが破滅するのが目的ではなく、あくまで結果であり罰として捉えているところが彼らの破滅志向に嫌悪を感じない要素なのでしょう。また、彼らの復讐心が真っ当な、そう正しき怒りに則っている事も、彼らが自ら破滅しようとも復讐を果たそうとしている決意と覚悟に、甘美なものを抱かせるのです。
それだけ、フィガロ魔皇国の皇帝の所業といい、上層部の振るまいといい、体制下の臣民の思想といい、外道が極まっている、つまりは悪役が非常に悪役らしくゲスに描かれている、ということでもあります。ちゃんと悪役が小物に陥らず、憎たらしさを掻き立てる仇として描くのは案外と難しいので、臥薪嘗胆で我慢に我慢を重ねながらも、じわじわと内側から壊していく、というこの物語からするとこの悪役の描きっぷりはお見事です。特に、ラスボスはあれだけ酷いことを平然としでかしておきながら、得体のしれなさ底知れなさが溢れてて、まさにラスボスという感じですし。
一方で、ヒロインのエトラの可愛らしさもまた絶妙。表の顔は純真無垢な聖女でありながら、その本性はおのが境遇に虎視眈々と復讐を企み、自らもろとも国を滅ぼそうという苛烈な性を持ち、運命共同体となることを持ちかけたシリュウに対しても悪女らしい残酷で粘性の素顔で迫る、ように見せかけつつ、実際は女の子らしいウブさと、義兄への抑えきれない憧憬と愛情を持て余してアップアップしている、という三様の顔をなれないお手玉をしているかのように危なっかしくコロコロと変えて見せてくれるので、何とも可愛らしくて仕方ないんですよね。
シリュウもシリュウで辛辣で現実的な事を口では言っているつもりで、その実お前もエトラにぞっこんだろう、という甘々っぷりで。お互いにどう見ても、どっぷりとハマってしまっているのが容易に見て取れるのです。そうして結びつきながらも、二人の目的はこの国への復讐、という点では一切ブレず、一緒に破滅することも厭わず憤怒と憎悪を共有しながら、苛烈極まる謀略を仕掛けていく姿は、どこか背徳的な魅力と熱量をまとっていて、思わず目を奪われるのでした。
こういうほの暗い情念が甘やかに描かれている作品は、やっぱり好きだなあ。バッチリ好みのストライクな作品でした。なんかもう、義妹以外では主人公の唯一の理解者で味方である人に思いっきりフラグが立ちまくってるので、いい具合にのたうちまわりそうな展開になりそうで、今からドキドキだわぁw