白き煌王姫と異能魔導小隊<チート・フォース> 1 (オーバーラップ文庫)

【白き煌王姫と異能魔導小隊<チート・フォース> 1】 桐生恭丞/松之鐘流 オーバーラップ文庫

Amazon

無能な魔導士による"呪われし幸運譚"――開幕!

「"魔導"が使えなくったって俺には俺の戦い方がある! ! 」
煌王教会が絶対的権力を握る世界。そこでは災害獣と呼ばれるモンスターたちが人々の生活を脅かしていた。
主人公のエイルは災害獣の駆除を生業にする平凡なハンター。"魔導が使えないこと"と"異常なまでの幸運の持ち主"であることを除けば――。
そしてエイルのハンターライフは、魔導小隊所属のアリーシアの裸を目撃してしまった瞬間から一変。
魔導が使えないのに魔導小隊の隊長に任命されてしまう! ?
しかも、そこは一癖も二癖もある連中ばかり。
美少女隊員たちと無能な主人公との絆が生み出すタクティカルファンタジー、開幕!
「ハ、ハーレムちゃうわ…こいつらは最高の仲間たちだ! 」
いやあ、このチームメイトはハズレもいいところなんじゃないかなあ。これは干されてて仕方ないレベル。いくら能力が高くても、ここまで自分勝手にやられたら連携もチームも何もあったもんじゃない。特にアリーシアが酷い。人の話はきかないわ、理解しないわ、耳を貸さないわ。現状分析も何も出来てないし、感情任せに突っ走るばかり。反省はしないし、自分の主張を声高に繰り返すだけ。よくまあ、エイル怒らんわ。人間出来過ぎでしょう、この主人公。
幸運しかない無能な主人公、と聞くからにはてっきり勢い任せで運の良さだけで苦難を乗り越えて、周りにちやほやされてしまう安い主人公を思い浮かべてたんだけれど、このエイルくんの場合は単に魔導が使えないというだけで、謙虚だし努力家だし気配り上手だし、注意深く慎重で常に分析と反省を怠らない人物で、無能とは程遠い非常に優秀な人物なんですよ。人柄も健気だし頑張り屋さんだし、前向きで健全な正義感の持ち主で程よい熱血漢で、話を聞かない幼稚園児か、というような仲間たちに根気よく接し続けるさまは涙ぐましいほどで、なんか主人公に対する好感度だけ突出して高くなっちゃいましたよ、あははは……アリーシアぉ。
アリーシアのこのヒロイン力の低さは瞠目に値しますよ。メインヒロインだというのに、この頭の悪さは酷いです、ほんと酷い。さすがにこのヒロインを好きだといえる人は希少なんじゃないだろうか。主人公のエイルくんが本当にいい子なんで、ついつい応援したくなってしまうのですが、ヒロインがこの娘というのがまったくもって可哀想で可愛そうで。いい子なので、彼は気にしてないんでしょうけれど、うむむむ。

無能、有害と爪弾きにされたハグレ者たちが一つのチームにまとめられ、一致協力して敵を打ち破っていく、という王道らしい王道ストーリーなんだけれど、ちと面白いのが本筋の鍵となりそうな煌王姫がいったい誰なのか、というのがなかなか巧妙に迷彩されているところ。今のところ候補に上がるのが小隊のアリーシアと騎士団のフラン。お互いに、彼女こそは煌王姫なのでは、という状況証拠が出揃っていて本当にどちらがそうなのかわからないんですよね。アリーシアの隠し持っていた能力はかなり決定的な証拠なのだけれど、一方でフランの容姿や教会が彼女を確保しつつ理由がわからない厳しく理不尽な待遇を強いているところなんぞ、かなり彼女の自身も知らない素性に怪しい点が見受けられるのです。そもそも、本物の煌王姫が出てきてもらっては困る教会が、その本身を確保しつつ飼い殺しにしている、というのは実にありそう。むしろ安全保障の観点からして、煌王姫の血筋を手の内に入れていない、というのは間抜けで怠惰極まることなので、フランがそうなのはむしろ納得行く展開なわけです。
わからないといえば、エイルくんが魔導を使えず幸運に呪われている、という境遇も不可解なもので、これも多分きっちりとした理由と因果があるんだろうなあ。以外と因縁が深く絡んでそうで興味深い要素は満載だったりします。

……しかし、タイトルの「チート・フォース」ってルビは無いよなあ。全然ズルしているわけじゃないし、今どきチートってあんまり良い印象ない言葉ですし。弱くても能力がなくても不貞腐れず挫けずひたむきに頑張ってるエイルという主人公に対して、配慮がないよなあ、と思ったり。タイトル見ただけでそっち系の話かと思っちゃうし。