ダイス・マカブル ~definitional random field~ 01. 否運の少年 (MF文庫J)

【ダイス・マカブル ~definitional random field~ 01. 否運の少年】 草木野鎖/ふしみ彩香 MF文庫J

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「──鬼灯君、呪われてたりしない?」
生まれつき「確率を裏切る呪い」を持った高校生・鬼灯灰斗は、ある日転校生の美少女・莉子と出会う。莉子の姉・率によってそれが神の呪い≪神呪≫の一つ「否運」であり、呪いを打ち消すためには千人の人間の呪いを集めなければいけないことを教えられた灰斗は、呪具の一つである≪愚者のダイス≫を使い、確率を支配し、呪いを集めることを決意するのだが――。
第9回新人賞受賞! 確率を統べる新感覚ダイス・アクション、堂々開幕! もし俺がロシアンルーレットをやるなら? それなら銃弾を五発入れることにするね。――だってこれは、そういう呪いなんだから。
【鬼灯の冷徹】というマンガが頭をよぎったw 地獄の補佐官の鬼灯さまほど冷徹に徹しきれていませんけれど、こちらの鬼灯くんは。
最近読んだ本、気のせいか呪われ系男子が異様に多い気がするんだけれど、流行りなんだろうか。で、このダイス・マカブルも「確率を裏切る呪い」に見舞われた少年が主人公。これが興味深い呪いで、つまり確率的に低い方の選択肢が現実に引き寄せられる、というものなのです。あらすじで、ロシアンルーレットをやるなら銃弾を五発入れる、というのは実弾が発射される確率が六分の五、空砲が発射される確率が六分の一なら、必ず空砲を引くことになる、という事。作中でもちょうど昼時で混雑している時にフードコートに行ったら、人数分の席が空いていた、なんて話がある。今頃なら混雑しているだろうからフードコートの方に行ってみようか、なんていう会話に一瞬???が脳裏を乱舞してしまったのだけれど、この鬼灯くんの場合だとむしろ空いている時間帯の方が席が埋まっていたりしてしまう、という事なのだろう。普段意識していない事柄から発動している呪いなので、相当にヤバい代物だというのが知れる。実際、かなりの頻度で事故に合っているようだし、彼自身かなり気を使って周りの人を巻き込まないように遠ざけている。その孤立を望む言動が固着した結果、現在の彼は冷徹と言っていいほど辛辣に孤高を望む人間になってしまっている。実際、近寄ってくる人に対して彼が発する拒絶の言葉は、何らオブラートに包まれる事のない淡々とした冷たさに覆われている。これはかなり聞いていても鼻白むような言い草で、ここまで言われてなおもめげずに近づいてくる輩は腹に一物持っているような者か、
或いは一種の変態性を有する特殊な趣味の人くらいだろう。
そして、メインヒロインたる犬蓼莉子はその希少な変態であったのだ。人呼んでリアクション芸人。いやあ、最初は付きまとってくる様子がいかにもウザったいのだけれど、灰斗がどれだけ突き放してもめげない姿が段々可愛くなってきてねえ。それも、灰斗の冷たい言動に対していちいち大きなリアクションで反応してくれるわけですよ。お陰で、普通なら感じが悪いだけの灰斗の発言が絶妙の掛け合いに変貌して、段々と仲が良いがゆえの遠慮のない屈託ない掛け合いに見えてきて、楽しくなってきたんですよね。これは当事者である灰斗も同様だったらしく、徐々に本当に突き放す為ではなくて、莉子のリアクションを楽しむために弄る目的でキレキレの言葉を投げかけはじめるのである。その証拠に、言葉の辛辣さとは裏腹に言葉の調子からは段々と刺が取れてきましたし、莉子があんまりにも落ち込んだりした時にはすかさずフォローを入れて慰めたりし始めるんですね。
……でも、絶対こいつSだよな。鬼畜な笑みが似合いすぎるw
うん、莉子の快活さはホント心洗われるものでした。もっと、暗い話になってもしょうがない物語だったと思うんだけれど、彼女の明るさが根底から雰囲気を底上げし、主人公の灰斗のキャラクターすら当初の姿から補正して、一見クールで排他的だけれど、中身に熱いものと優しさを持った人間味のある主人公として自律させたように思います。莉子が中盤までで灰斗のキャラを解きほぐさなければ、後半彼をあれだけ動かせたかどうか。
強引で鬱陶しいくらいの娘ですけれど、この明朗闊達な少女は一緒に過ごしていてホント楽しい娘なんだろうなあ、と羨ましくなります。ぶっちゃけ、いい友達で終わってしまいそうなキャラなんですけれど、本作ではちゃんとメインヒロイン扱いで、ホッとするやら何とやら。いやまあ、苗字の違う妹ちゃんが恐ろしくガチで踏み込んできているので、油断すると食われかねないですけれど。こういう莉子みたいないい子は、強引に見せかけていざとなると遠慮しちゃう傾向が多いからなあ。
志穂は、さすがに灰斗とは相性が悪すぎる。素直になりきれずに憎まれ口や思っていることと違うことを口走ってしまう性格は、ある意味額面通りにしか受け取らず、さらにバッサリ切っちゃう傾向にある灰斗みたいな子相手だと、即座に二進も三進もいかなくなっちゃうんですよね。よほど素直にならないと。その点、莉子の性格は確かに灰斗とフィットしてるんだよなあ。現時点で、凄く息合っちゃってるし。
読み始めた当初は、全体的にぎこちなくて読むのがしんどかったのですけれど、徐々に灰斗と莉子の息が合い始めた頃から彼ら二人のみならずキャラ全体的に艶が出てきて、あとは最後まで楽しく読み通すことが出来ました。まだちょっと確率の呪いについて活かしきれてるとは言えない気もするのですが、その辺りの妙については今後に期待、というところで。